捨てられ令息のスローライフ

千宮寺みるく

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辺境の村、ローレン

辺境の村、ローレン

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 乾いた大地の上に革鞄がひとつ、馬車の上から投げ捨てられる。ついでに私も馬車の中から押し出された。

私の荷物を投げ捨てた従者は悪態をついて御者に、早く王都に戻るように言った。
御者は馬に鞭を振い、乱暴な操縦で来た道を駆けて行く。
クリーム色のような薄い金色の、旅路で痛んだ髪が風に撫でられる。深緑色の瞳が映す馬車の後ろ姿。

王都から一ヶ月の道中、ずっと従者である男は不機嫌を隠さなかった。
主の息子である私に、以前は微笑みかけてくれていたのに。腫れ物を、まるで塵(ゴミ)を扱うかのように態度の違う従者に、本当に「全ての人」に捨てられたたのだと私は愕然とした。

旅路ではろくに着替えも体を拭くこともできず、薄汚れていた。磨かれていた爪に輝きはなく、肌もガザガザだ。

ぽつんと残された私は、涙が溢れそうになり、硬く瞼を閉じた。
惨めだと感じる心は、この一ヶ月で腐り果てた。無駄な矜持さえなければ、道中自害していた。


私の背後には、寂れた村?…村がある。今日から私が暮らす村だ。

マーヘン王国の辺境中の辺境と言われる、ローレン村。
私、侯爵令息ジーク・ラディウスは王都から追放され、無理やり移住先を決められて此処に来た。


ため息をつき、革鞄を手に持ち村へと入った。もう、どうしようもないのだ。
何を言っても、変わらなかった。
いや、変わってしまったからこそ、私はここにいる。

変わらなかったのは、ラディウス家ー両親なのだ。

両親の自尊心を酷く傷つけてしまった。
私が嫡男でなかったことが幸いだった。
だから、すぐに切り捨てられた。


御者が鞭を振るった際の馬の嘶きに気づいた村人たちがちらほら姿を見せていた。
不審者を見る眼差しを向けられ、私は慌ててお辞儀をした。

「はじめまして。今日からお世話になるジークと申します」

私は、頭を下げながら下唇を強く噛んだ。
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