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秘密の村
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とある商人曰く、
その村は「入村札」が無いと入れない。
とある旅人曰く、
その村は「世界のあらゆる食材や薬草」があり、「重傷者」のみ入れる。
とある兵士曰く、
その村は30年前に「滅ぼされた村」である。
とある代官曰く、
その村の税は「きちんと」納められている。
とある騎士曰く、
その村の姿を確認することはできない。
とある隻腕の村人曰く、
この村は「誠実」なモノしか視覚できず、門は開かれない。
とある村娘曰く……
この村は「英雄の村」であると。
***
伝令兵のジールはがむしゃらに走っていた。スタンピートの兆候があり、斥候隊とともに森に入った。そして、ありえない魔物がいた。
そう、ありえないのだ。
それは魔物でありながら、人の形をした、ナニカだった。
隊長はジールを走らせた、瞬間、ナニカが咆哮を上げた。
ジールの背後からは悲鳴しか聞こえない。
ジールは懸命に足を前へ前へと動かし、森の出口に置いた馬へとかけよった。
馬はジールが駆け寄った瞬間、爆ぜた。
肉片を被りながら、ジールは悲鳴を上げた。
なにが、なにが、一体何が起こったのか。
ジールは腰を抜かしてしまった。
全力で森を走り抜けたジールの両足は力尽きたように一切動かなかった。
しゃり、しゃり、と音がする。
刃を研ぐ音だ。
その音の方へ、ジールは恐る恐る首をゆっくりと、動かした。
黒衣に赤いつるりとした仮面を被ったヒトが立っていた。両手には、血の滴る短剣が握られていた。
ひぃ、と喉が鳴る。
ジールの前にいた黒衣が動く。
かき消えた、と思った瞬間死を悟った。
硬く目を瞑る。
鼓膜を震わす、激しい剣戟音にはっと目を開く。
薄汚れた、マントが閃く。
左手で大剣を構える、大男がいた。
そして大剣が黒衣を難なく切り裂いた。
「お父さーん!」
若い女の声に、ジールは身構えた。
父と呼ばれたは、剣を地に突き立て声がした方に手を振った。
「大丈夫?いきなり走り出したから…って兵士さん?」
ジールに気づいた若い女は、屈んで手に持っていたカゴから人差し指ほどの長細い瓶を差し出した。
「回復ポーションです。効き目は切り傷とかが治るくらいですけど」
はにかむ女に、ジールはぽぅ、と見惚れた。藍色の美しい髪に、翠の瞳。
健康的に焼けた肌は、彼女の快活さを表すかのようで、
「あ、ありがとうございます…」
ジールは差し出されたポーションを、
何の疑いもなく、飲んだ。
***
サラード王国、シストゥウム領。
その領兵の紋を刻んだ兵服。
軽装からして、
「伝令兵だな」
「伝令兵? なんで、伝令?」
ポーションを飲んだ瞬間、昏倒した男をつま先でつつく男を不思議そうに女が見上げる。
「あれだ。ありゃ、最近出てきた秘密結社とやらだな」
「ひみつけっしゃ?」
「ひと昔、というか今も暗躍してるだろうがメルフィート教団の後釜として台頭してきてる、たしか…」
顎に左手を当てる。
たしか、そう…
「レッドフェイス…っつたかな?」
「赤い顔?」
「仮面をつけてるんだそうだ。赤い、真紅の仮面をな。斬ったやつもつけてたからそうなんじゃないか?」
「違かったらどうするの?斬っちゃったんでしょ?」
「まあ、いいんじゃないか?俺らには関係ないしな」
その村は「入村札」が無いと入れない。
とある旅人曰く、
その村は「世界のあらゆる食材や薬草」があり、「重傷者」のみ入れる。
とある兵士曰く、
その村は30年前に「滅ぼされた村」である。
とある代官曰く、
その村の税は「きちんと」納められている。
とある騎士曰く、
その村の姿を確認することはできない。
とある隻腕の村人曰く、
この村は「誠実」なモノしか視覚できず、門は開かれない。
とある村娘曰く……
この村は「英雄の村」であると。
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伝令兵のジールはがむしゃらに走っていた。スタンピートの兆候があり、斥候隊とともに森に入った。そして、ありえない魔物がいた。
そう、ありえないのだ。
それは魔物でありながら、人の形をした、ナニカだった。
隊長はジールを走らせた、瞬間、ナニカが咆哮を上げた。
ジールの背後からは悲鳴しか聞こえない。
ジールは懸命に足を前へ前へと動かし、森の出口に置いた馬へとかけよった。
馬はジールが駆け寄った瞬間、爆ぜた。
肉片を被りながら、ジールは悲鳴を上げた。
なにが、なにが、一体何が起こったのか。
ジールは腰を抜かしてしまった。
全力で森を走り抜けたジールの両足は力尽きたように一切動かなかった。
しゃり、しゃり、と音がする。
刃を研ぐ音だ。
その音の方へ、ジールは恐る恐る首をゆっくりと、動かした。
黒衣に赤いつるりとした仮面を被ったヒトが立っていた。両手には、血の滴る短剣が握られていた。
ひぃ、と喉が鳴る。
ジールの前にいた黒衣が動く。
かき消えた、と思った瞬間死を悟った。
硬く目を瞑る。
鼓膜を震わす、激しい剣戟音にはっと目を開く。
薄汚れた、マントが閃く。
左手で大剣を構える、大男がいた。
そして大剣が黒衣を難なく切り裂いた。
「お父さーん!」
若い女の声に、ジールは身構えた。
父と呼ばれたは、剣を地に突き立て声がした方に手を振った。
「大丈夫?いきなり走り出したから…って兵士さん?」
ジールに気づいた若い女は、屈んで手に持っていたカゴから人差し指ほどの長細い瓶を差し出した。
「回復ポーションです。効き目は切り傷とかが治るくらいですけど」
はにかむ女に、ジールはぽぅ、と見惚れた。藍色の美しい髪に、翠の瞳。
健康的に焼けた肌は、彼女の快活さを表すかのようで、
「あ、ありがとうございます…」
ジールは差し出されたポーションを、
何の疑いもなく、飲んだ。
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「あれだ。ありゃ、最近出てきた秘密結社とやらだな」
「ひみつけっしゃ?」
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顎に左手を当てる。
たしか、そう…
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「赤い顔?」
「仮面をつけてるんだそうだ。赤い、真紅の仮面をな。斬ったやつもつけてたからそうなんじゃないか?」
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