上 下
122 / 280
子猫の雨月と男の子の雨月2

103

しおりを挟む
 エレベーターにこの四人で乗り込んで自分の部署へ戻ることになったんだけど……。
 この面子で一緒のエレベーターって、さすがに気まずい。
 柴田君は私の隣でくっつこうとしてくるのをこの狭さだと阻止は叶わず。
 反対側……ケージを持っている方は渡辺さんが今にもケージを私から奪いそうな……怪しさ満点で、困ります!
 こんな二人を見てものすごーく楽しんでいるみたいな美樹ちゃん。

「葉月さん、今日はいつもより近くにいられて……僕、幸せです!好きです!葉月さんを補給させてもらいまーす!」

 逃げられないからって……抱きつかないでー!

「柴田君、離れてくれないかな?君一人じゃないんだから空気読んでくれる?」

「こういう時こそ密着チャンスじゃないですかぁ!こんな機会逃したら男じゃないです!諦めてくださいよ」

「いや、そういうの、無理だから……私、柴田君のこと、なんとも思ってないし」

 抱きつかれるのなら、男の子の雨月の方が嬉しいんだけど。
 ……なんて思いながら、ケージの中にいる子猫の雨月が気になった。

 夏川上司が「聞こえてるかもしれないね」……なんて言うから。

 美樹ちゃんはそれを間近で見てきゃあきゃあ言っちゃうし。
 たった数十秒でもあり得ないんだけど。

「柴犬、いい加減にしないと俺が殴るからね。星野から・は・な・れ・ろ!」

 渡辺さんが珍しく助け船を出してくれた。

「いいじゃないですか!僕は葉月さん、渡辺さんは『うーちゃん』、お互いいい関係だと思いますけど」

 ぺたっとくっついたまま柴田君が渡辺さんの方を向いて言う。

「『うーちゃん』のご主人様に馴れ馴れしくするなって…言ってんだよ。わかれや……」

 渡辺さん……完全にキャラ変わってますけど。
 何故か二人、火花散らしてます!

 ……エレベーターの中のちょっとした出来事でした。

しおりを挟む

処理中です...