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なーちゃって何者?
185 二人の出会いと儀式
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龍一ははじめて出会った日の事を思い出す。
目を覚ました朝方の事だった。
いつものように外のテーブルでモーニングコーヒーを飲んで湖畔を眺めるという日課をすることにした。湖畔と草原。その美しい景色を見ながら啜る淹れたての香り立つコーヒーを飲むのが好きだった。
避暑に来ていた龍一がモーニングコーヒーを飲み終えて早朝の散歩に出掛けた。
湖畔の別荘のすぐ傍の草原を歩いていた時、その草むらの上に仰向けに横たわっていたのが彼だった。
その姿は彼本来のそのままの姿で眠っているように見えた。
後にわかったことは彼は気を失っていたという事だった。
うっすら蒼い銀色の髪はまるで絹糸のように細く煌めいていてどこまでも透き通ったような白い肌に端整な彫りの深い顔立ち……
何処かのお伽話から出現したような王子さまと云ってもいいほどの吐息が漏れるほど美しい青年。
心が揺らめき胸の鼓動が激しく鳴りやまなかった。
甘美に酔いしれる熱に溺れそうな感覚……。
惹かれずにはいられなかった。
たとえそれが同じ性だとしても……本能が彼に魅せられたのだ。
恐る恐る彼に話しかけてもピクリと動かない。
揺さぶってもそれは変わらなかった。
そのままにしておけない……龍一は彼を抱き抱え別荘まで歩くことにした。そして中へ入りリビングのソファーまで連れていった。
抱き抱えた彼は龍一より僅かに身長が高かったが、体重は両腕で抱えても痛みを感じるほどの重さではなかった。
彼をソファーに寝かせ、傍に置いてあった赤い大柄のチェックのブランケットを彼の肩から爪先までそっと被せた。
眠っているような彼の姿を眺めるだけでも龍一は幸せ感に満たされていた。
早く目覚めて欲しい。
彼の口から発せられる声が聞きたい。
どんな声がするのだろう?
その声さえ、龍一は恋に落ちる自信があった。
かなりの時間が経過したのか……
陽が暮れる頃に漸く彼は目を開いた。
龍一は目が覚めたのを見て彼の手を両手で包み込み、震えそうな声をなんとか堪えて言葉をかけた。
「気分はどう?君は草むらで眠っているかのように動かないままだったので此処へ連れてきたんだが、勝手なことをしてよかったのだろうか?」
「………………」
龍一の言葉に何一つ反応をしないが、彼の目には龍一が映っていて目と目が見つめ合っていたのは確かであった。
声は聞こえていても言葉がわからないのかも……
そんな突飛なことを想像した。白い高貴に見える布一枚を纏った姿を思いだし、それはあり得るような気がした。
「名前は?」
「………………」
反応はない。それでも彼は龍一の目を見つめている。
その眼差しは優しく、会話が出来ないことがもどかしくて……
「名前がなくては君を呼びようがない。仮の名前をつけてもいいか?」
「………………」
彼はもちろんといっていいのか、思った通り反応が返って来ない。首を縦にも横にも振ることはなく、目は見つめ合っているかのようでそれがまるで言葉を交わさなくても通じているような錯覚に陥った気持ちになる。
愛しい人……
仮の名前なのだから……
本当の名前がわかったらその名前で呼べばいい……
心に秘めた想いを込めて……
自分の欲望のまま、名をつけた。
「愛人(マナト)……君をそう呼んでもいいかい?」
龍一ははにかみながら彼にその名を、仮の名を告げた。
彼はそう呼ばれた途端、目を見開いて一瞬からだが強張ったように見えた。
それは一瞬の事で全身の力を緩めて、彼は破顔し龍一に歩み寄って目と目を合わせた。
その見つめ合ったひとときは甘美な空気を纏い、それに酔いしれそうになった瞬間、彼は抱きついて龍一にキスをしたのだった。
そのキスは初めから深くて濃密で……龍一は歓喜に全身を魂までも震わせた。
そう……
あの時と同じ……
彼は……愛人は自ら私に口付けたのだ!
これは……儀式
今だけでもいい……
龍一は彼のからだに回した手を愛おしく包むようにして、ひとときのキスに溺れた。
目を覚ました朝方の事だった。
いつものように外のテーブルでモーニングコーヒーを飲んで湖畔を眺めるという日課をすることにした。湖畔と草原。その美しい景色を見ながら啜る淹れたての香り立つコーヒーを飲むのが好きだった。
避暑に来ていた龍一がモーニングコーヒーを飲み終えて早朝の散歩に出掛けた。
湖畔の別荘のすぐ傍の草原を歩いていた時、その草むらの上に仰向けに横たわっていたのが彼だった。
その姿は彼本来のそのままの姿で眠っているように見えた。
後にわかったことは彼は気を失っていたという事だった。
うっすら蒼い銀色の髪はまるで絹糸のように細く煌めいていてどこまでも透き通ったような白い肌に端整な彫りの深い顔立ち……
何処かのお伽話から出現したような王子さまと云ってもいいほどの吐息が漏れるほど美しい青年。
心が揺らめき胸の鼓動が激しく鳴りやまなかった。
甘美に酔いしれる熱に溺れそうな感覚……。
惹かれずにはいられなかった。
たとえそれが同じ性だとしても……本能が彼に魅せられたのだ。
恐る恐る彼に話しかけてもピクリと動かない。
揺さぶってもそれは変わらなかった。
そのままにしておけない……龍一は彼を抱き抱え別荘まで歩くことにした。そして中へ入りリビングのソファーまで連れていった。
抱き抱えた彼は龍一より僅かに身長が高かったが、体重は両腕で抱えても痛みを感じるほどの重さではなかった。
彼をソファーに寝かせ、傍に置いてあった赤い大柄のチェックのブランケットを彼の肩から爪先までそっと被せた。
眠っているような彼の姿を眺めるだけでも龍一は幸せ感に満たされていた。
早く目覚めて欲しい。
彼の口から発せられる声が聞きたい。
どんな声がするのだろう?
その声さえ、龍一は恋に落ちる自信があった。
かなりの時間が経過したのか……
陽が暮れる頃に漸く彼は目を開いた。
龍一は目が覚めたのを見て彼の手を両手で包み込み、震えそうな声をなんとか堪えて言葉をかけた。
「気分はどう?君は草むらで眠っているかのように動かないままだったので此処へ連れてきたんだが、勝手なことをしてよかったのだろうか?」
「………………」
龍一の言葉に何一つ反応をしないが、彼の目には龍一が映っていて目と目が見つめ合っていたのは確かであった。
声は聞こえていても言葉がわからないのかも……
そんな突飛なことを想像した。白い高貴に見える布一枚を纏った姿を思いだし、それはあり得るような気がした。
「名前は?」
「………………」
反応はない。それでも彼は龍一の目を見つめている。
その眼差しは優しく、会話が出来ないことがもどかしくて……
「名前がなくては君を呼びようがない。仮の名前をつけてもいいか?」
「………………」
彼はもちろんといっていいのか、思った通り反応が返って来ない。首を縦にも横にも振ることはなく、目は見つめ合っているかのようでそれがまるで言葉を交わさなくても通じているような錯覚に陥った気持ちになる。
愛しい人……
仮の名前なのだから……
本当の名前がわかったらその名前で呼べばいい……
心に秘めた想いを込めて……
自分の欲望のまま、名をつけた。
「愛人(マナト)……君をそう呼んでもいいかい?」
龍一ははにかみながら彼にその名を、仮の名を告げた。
彼はそう呼ばれた途端、目を見開いて一瞬からだが強張ったように見えた。
それは一瞬の事で全身の力を緩めて、彼は破顔し龍一に歩み寄って目と目を合わせた。
その見つめ合ったひとときは甘美な空気を纏い、それに酔いしれそうになった瞬間、彼は抱きついて龍一にキスをしたのだった。
そのキスは初めから深くて濃密で……龍一は歓喜に全身を魂までも震わせた。
そう……
あの時と同じ……
彼は……愛人は自ら私に口付けたのだ!
これは……儀式
今だけでもいい……
龍一は彼のからだに回した手を愛おしく包むようにして、ひとときのキスに溺れた。
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