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仕事が手につかない!
209 既視感……
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自分の席の椅子に鞄を置いてからいつものように給湯室へ。まず最初にポットに水をいれてお湯を沸かしておくことに。
それから布巾を絞って総務課の机を順々に拭いていく。
まず最初に拭くのは夏川上司の机です。
主のいない机を拭きながらつい思っちゃいます。
いつもならもう夏川上司は来ている頃なのに……なんて思いつつ、気を逸らしちゃ駄目だって自分に叱咤しながら机をすべて拭いていく。
渡辺さんの机を拭き終わったところにラップで包んだおにぎり三個を並べた。
「渡辺さんの朝ごはんに作ってみました。先に食べておいてくれませんか?今からカップにお味噌汁入れてきますね」
「おー!食べ応えあるじゃん。このおにぎり。うまそー」
渡辺さんがラップをめくっておにぎりをひとかじりするのを見届け最後に自分の机を拭いてから鞄の中から小さめのタッパーを持
って味噌汁を作りに行った。
いつもはコーヒーを入れるカップに出汁粉とネギと乾燥ワカメを混ぜ混んだ味噌玉を投入してポットのお湯をジュッと注いでスプーンで混ぜたら出来上がり。
時間がない時用に作り置きしてある私の味噌スープです。
出来上がった味噌汁を渡辺さんの机にそっと置こうとしたら渡辺さんが左手を伸ばしたので私は直接味噌汁の入ったカップを手渡した。
「サンキューな。おにぎりも」
右手におにぎり。左手に味噌汁の入ったカップ。そして笑顔の渡辺さん……
フーフーとちょっと冷ましてから味噌汁を啜ってそしてまたおにぎりを齧り出した。
それを見た途端、既視感を覚えた。
右手にご飯、左手に鮭の切り身。私に向けてくれたあの笑顔……
思わず目頭が熱くなって、視界がボヤけてくる。
私はそっとその場から離れてお手洗いへ向かった。
個室に入ってドアを閉めると鍵をかけてそのドアにもたれ掛かった。
どうしようもない想いが溢れる。
雨月に会いたい、雨月に会いたい、雨月、雨月、雨月……!
今日、会える筈だよね?
雨月に会える筈だよね?
とっくに来ている筈の時間に夏川上司は出社していなかった。
そんなことなんか……一度もなかったのに?どうして今日に限ってまだ出社してないの?
嫌な予感が胸の中に蠢いて……
始業ベルが鳴る頃、何度も深呼吸をして個室から出た。
鏡でメイクのチェックをして目元をハンカチの角で軽く水分を吸わせてから顔を軽く両手でパンと叩いて気合いを入れる。
まだ来てなくっても、会えると信じてお仕事頑張らなきゃ!
だって私は社会人。仕事をして給与を貰って生活してるんだから。
気持ちを切り替えて……お仕事頑張って、お昼ごはん雨月と一緒に食べるんだからね!
私はもう一度鏡に映る自分に相づちをして自分の席へ戻った。
それから布巾を絞って総務課の机を順々に拭いていく。
まず最初に拭くのは夏川上司の机です。
主のいない机を拭きながらつい思っちゃいます。
いつもならもう夏川上司は来ている頃なのに……なんて思いつつ、気を逸らしちゃ駄目だって自分に叱咤しながら机をすべて拭いていく。
渡辺さんの机を拭き終わったところにラップで包んだおにぎり三個を並べた。
「渡辺さんの朝ごはんに作ってみました。先に食べておいてくれませんか?今からカップにお味噌汁入れてきますね」
「おー!食べ応えあるじゃん。このおにぎり。うまそー」
渡辺さんがラップをめくっておにぎりをひとかじりするのを見届け最後に自分の机を拭いてから鞄の中から小さめのタッパーを持
って味噌汁を作りに行った。
いつもはコーヒーを入れるカップに出汁粉とネギと乾燥ワカメを混ぜ混んだ味噌玉を投入してポットのお湯をジュッと注いでスプーンで混ぜたら出来上がり。
時間がない時用に作り置きしてある私の味噌スープです。
出来上がった味噌汁を渡辺さんの机にそっと置こうとしたら渡辺さんが左手を伸ばしたので私は直接味噌汁の入ったカップを手渡した。
「サンキューな。おにぎりも」
右手におにぎり。左手に味噌汁の入ったカップ。そして笑顔の渡辺さん……
フーフーとちょっと冷ましてから味噌汁を啜ってそしてまたおにぎりを齧り出した。
それを見た途端、既視感を覚えた。
右手にご飯、左手に鮭の切り身。私に向けてくれたあの笑顔……
思わず目頭が熱くなって、視界がボヤけてくる。
私はそっとその場から離れてお手洗いへ向かった。
個室に入ってドアを閉めると鍵をかけてそのドアにもたれ掛かった。
どうしようもない想いが溢れる。
雨月に会いたい、雨月に会いたい、雨月、雨月、雨月……!
今日、会える筈だよね?
雨月に会える筈だよね?
とっくに来ている筈の時間に夏川上司は出社していなかった。
そんなことなんか……一度もなかったのに?どうして今日に限ってまだ出社してないの?
嫌な予感が胸の中に蠢いて……
始業ベルが鳴る頃、何度も深呼吸をして個室から出た。
鏡でメイクのチェックをして目元をハンカチの角で軽く水分を吸わせてから顔を軽く両手でパンと叩いて気合いを入れる。
まだ来てなくっても、会えると信じてお仕事頑張らなきゃ!
だって私は社会人。仕事をして給与を貰って生活してるんだから。
気持ちを切り替えて……お仕事頑張って、お昼ごはん雨月と一緒に食べるんだからね!
私はもう一度鏡に映る自分に相づちをして自分の席へ戻った。
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