敷布団の一生

幸司

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敷布団

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俺のは敷布団だ。今回は俺の人生について話をする。
 俺は80歳くらいのじいさんに買われた。彼は俺を大事に扱ってくれた。毎日外に干してくれて、2週間に1回はシーツを洗ってくれた。だから俺も彼を暖めることができて嬉しかった。でも彼は死んだ。そして俺は売られた。
次に俺を買ったのは、アパート暮らしの大学生だった。彼との生活は最悪だった。ジュースやお菓子を俺にこぼすし、全然干してくれない。それに彼は大学生にもなってまだお漏らしをしていた。だいたい月に1回くらいだ。お漏らしがバレるのが恥ずかしいから、とコインランドリーに連れていってくれない。干すだけだった。なので俺は臭かった。彼は大学卒業を機に、俺を捨てた。
 そして俺を拾ってくれたのが、ホームレスのおっさんだった。彼は路上で生活しているので、俺は雨に濡れたりした。でも彼は出来るだけ汚れないように努めてくれた。それに彼はホームレス仲間を助けていた。自分の生活すらギリギリなのに、食べ物がない人にあげていた。そんな優しい彼が好きだった。じいさんと同じくらいに。そして彼の行いの良さが報われることが起こった。なんと宝くじに当選したのだ!それも3億円!彼は俺の上で当選を知り、大喜びして俺に抱きついた。この時が俺の人生で1番幸せな瞬間だった。
 その後、彼は俺に「ありがとう。お前のおかげでよく寝れたよ」といって捨てた。仕方ないことだと分かっていても辛い。

 そして俺はゴミになった。でも悪い人生だったとは思わない。物というのは最後は捨てられてしまうのだから。一生押入れ暮らしのやつもいる中、俺は3人の人に寝てもらえた。幸せだ。
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