にゃすにゃすQ便〜おとどけするにゃ〜

襟井笠

文字の大きさ
9 / 12

9にゃす「わこの道案内」

しおりを挟む
 今日は土曜日。
 昨日、家に帰ってから母に連絡を入れ、実家に帰ると伝えた。

 休日限定のスニーカーを履いて、遠足にいくような気分で家を出た。

 バタン ガチャカチャ
 鍵をかけて、いつぞやのにゃすのように駆け出した。

 実家に帰るのは久々だが、まだ私がそのまま住んでいるような形で残っている。背負っているバックには大した物は入っていない。最近お気に入りの化粧品と基礎化粧、明日の着替えと下着、あとはちょっとしたものくらいだ。

 にゃすとは地元の駅裏から少し離れた公園で待ち合わせをすることにした。

 昨日の話を要約すると、どうやら前回運んでくれたにゃすが不在で実家がわからないとのことだった。
 にゃすは人海戦術、もといにゃす海戦術で地元にゃすと家を捜索したが、似たような家や似たような母がいて、お届け出来ていないとのことだった。

 もっと詳しく情報を知りたいと再び尋ねてくれたこと。私が遅くに帰ってきたので気を使ってくれたことなども話してくれた。にゃすに会えたら不眠で働けますけど?

 あのアーモンドの潤んだ瞳で見つめられて、こちらから提案をした。
 それで実家まで私が案内することになったのだ。

 電車を乗り継いでトータル一時間弱、地元の駅についた。
 日は高く登り、空と雲のコントラストが気分をさらに高揚させる。
 特に大きな駅でもなく、観光地でもないので、休日の昼間は人が少ない。

 駅の改札に電子マネーのカードを軽く当てて、改札を抜ける。この改札も昔は切符を挿入していたな、なんて思う。

 裏手にはちょっとした広場とバス乗り場、タクシーの待機場がある。
 いつもならここからバスに揺られて実家を目指すのだが、今日は徒歩で案内をしつつ帰るのだ。
 日々のウォーキングの成果がここで発揮されるとは思ってもなかった。

 公園の入り口のすぐ左手にベンチがあったので、腰掛ける。周りを見渡したが、お昼時ともあって公園に子どもさえいなかった。

 早速カバンから、にゃすに教えてもらった通り、お届け|案内と書いた付箋とソフトタイプの棒状のおやつを取り出した。ちょっと恥ずかしいけど、胸元に付箋を貼り、待った。

「おいしそうにゃす」

 またもや突然声がした。すこしびくっとなったが、流石に慣れてきた。
 声がしたほうを見ると、ベンチの隣ににゃすがちょこんと、四足でお座りしていた。顔はがっつりおやつを見ていたが。

「にゃーはだれにゃす?おとどけするひとにゃす?」

 のんびり話しすそのにゃすは、茶色とクリーム色の中間のカラーに濃い茶色の筋が入っている。お腹あたりは白っぽく、瞳は黄土色と黄色のビー玉みたいだ。
 顔は絶妙にブサイクで愛でたい。特に目の形が半円の丸を下にしたような形をしていて、漫画顔かよって突っ込みたくなった。

「こんにちは、わこです」
「わこ、おとどけするにゃ?」
「にゃすの案内に来たの、たみこの家のおとどけもの」
「にゃにゃ!うれしいにゃす、まいごにゃす」

 話しながらも目線が釘つけだったので、お近づきの印として納品させて頂いた。焦りながら奥歯で一生懸命かみかみしている姿を少しの間眺めた。緊張が解けたのか、普通に腰掛けるようにベンチに座り直していた。
 にゃすは両手をうまく使う。その両手からおやつが無くなり、ザリザリと手を舐めてお手入れしてる姿なんて、心の中の私が息をあげ、心臓が握り潰されそうだ。

「げふ、しゅっぱつにゃす」
「うん、行こうか」
「にゃす、にゃーたちはうしろから、ついてくにゃす」

 そう言うと、さっと姿をくらました。


 新しいにゃすとの出会いで悶え苦しんだわ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

黄泉津役所

浅井 ことは
キャラ文芸
高校入学を機にアルバイトを始めようと面接に行った井筒丈史。 だが行った先は普通の役所のようで普通ではない役所。 一度はアルバイトを断るものの、結局働くことに。 ただの役所でそうではなさそうなお役所バイト。 一体何をさせられるのか……

処理中です...