女性のための犯され短編集【R18】

弓月

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家庭教師先の生徒に犯される

 
 今日はクーラーが壊れているらしかった。

 今日にかぎって…と思わずにはいられない灼熱の真っ昼間。

 今にも空気が爆発しそうなくらい暑いのに、爆発する素振りを見せずにじっとりと床を這う重たい空気。

 せめてと思い窓を開けているけれど、外からなだれ込むセミの声は容赦なく、かえって暑さが増した気もする。

 そんな部屋で彼女は家庭教師のアルバイトをしていた。

「……ねぇ?」

「……なに?センセ」

「君の視線が痒(カユ)い……」
 
 採点中の彼女は手を止めず、隣の彼にそう告げた。

 彼のほうを見ているわけじゃない。けれど向けられるこの視線だけは、不思議と感じ取れてしまうのだ。

 それはどれだけ逃げたくても逃げられない夏の暑さのように、無視しようにも無視できない視線だった。

「かゆい?何それ?」

「なんだか首の後ろがムズムズするからっ……そんなにじっと見ないでほしいの。今日も最後に小テストするんだし、それの勉強してて?」

「メンドクサイ」

「……」

 彼女を困らせて楽しんでいるに違いない。

 思えば……今日クーラーが壊れたという話だって、本当のところはどうなんだろうか。

 もし本当ならリビングを使うなりの対処ができた筈だった。どうせ彼の唯一の肉親である父親はいま仕事で不在なのだし。

 けれど教え子の彼は当然のようにこの自室へ彼女を迎え入れた後、「ちなみにクーラー壊れてるから」とケロリと言い放ったのだ。

 使うことを許されたのは小さめの扇風機だけ。

 それが今、二人の背中に頼りない風を届けている。

「ねぇ、あのさ、センセの首」

「ん、なに……?」

「蚊が止まってる」

「え…!どこ?」

「なーんちゃって、嘘」

「な……!」

「ごめんごめん。だって痒いとか言い出すから、つい。センセって普段はトロいのにたまには俊敏な動きもできるんだね」

「あまり、ふざけないでね……っ」

 控えめに注意するだけで精一杯の彼女は、結局強く言い返せられないから、大人しく採点を続ける。

「ほら、採点終わった…よ」

「ありがと、何点だった?」

「ほとんど正解──…その、最後以外、ね。……あの、どうしていつも最後の1問だけ間違えるの?」

「知らないよそんなの」

「知らないなんておかしいよ…っ」

 採点の終わったノートを返すと、こちらを見ている彼は、返されたノートにチラリとも目を通さない。

 そんな彼は悪い顔で笑っている。

 これだって、いつものお決まり…。

 彼は頭は悪くないのに、解ける筈の問題をわざと間違えてくる。それも最後の1問だけ。わざとなのは明らかで。

「じゃあ間違えたところの解説するね……」

「言い返せないセンセ、不器用すぎて可愛い」

「変なこと言わないでってば」

「……いや、本気なんだけど」

「…っ…?」

 目を大きくして驚く。

 今度は何を企んでいるのか、検討も付かず盗み見た彼の顔は──微笑んでいた。

 いつもの意地悪な笑顔に似ているけれど、少しだけ違う。

 何故だが……今だけは純粋な優しさを感じる淡い笑顔をしていて、なのに、目だけはいつも以上に生き生きとしている。

 夏休みだからと明るく染めている髪の隙間から、ひどく熱っぽい瞳が彼女を見据えている気がした。

「ほら、間違えたとこの解説してくれるんでしょ?……センセ」

「う、うん」

 彼は両肘をテーブルに投げ出すと、腕に頭をもたれさせ、上目遣いでこちらを見上げてきた。

 首をひねって脱力した彼の姿勢は、真面目とはほど遠い色気の塊──。

 女の子みたいに色白で綺麗な顔立ちのくせに、ノースリーブの袖口から隆起した肩の筋肉が男らしい。

 加えて、この目だ。

 ギラついた目……。すごく、すごく危険な目。

 彼が何故こんな視線を自分に向けてくるのか、まるでわからない。

 わからないけれど…胸の奥が熱くなる。

 とても怖いのに惹きつけられる。

 どうしてそんなふうに……!?

「じ……じゃあ、…さっきの問題を…説明すると」

 逃げるように参考書を開いて目をそらした彼女の声は、みっともないくらい上ずっていた。


 問題の復習を始める。

 それでも彼の視線から逃げられない。


「この問題でPの軌跡を求めるには……」


 ああ……すごい
 真っ直ぐ見られてる


「…与えられた式を…!…放物線か円の式に変形しなきゃいけないから…」


 唇の動きから、まばたきのタイミングまで、全部

 全部

 あの目がずっと見てる

 何も見逃してくれない


「まずは変数を右辺に……っ」


 声が途切れそうになる
 息が止まりそうになる

 まるであの視線に…絡み取られているみたい

 ねっとり、じっくりと、太い蛇が身体を這い回るような錯覚──

 彼女は必死に耐えて、説明を続けた。


 ヂリヂリヂリヂリ

 ジージージージー、ジージージージー


 さらに追い打ちをかけるがごとく、セミの声が頭に響く。

 夏の怠さを凝縮した音の洪水…。

 声を出そうと息を吸うごとに、乾いた喉が焼かれる。


 暑い

 暑い

 熱い


「……ッ─のように変形して……公式……を……」


 ヂリヂリヂリヂリ....


「…は‥‥…はぁ……はぁ……」


 熱い……

 肌に当たる空気も、吸い込む空気も

 いや、それだけじゃない……

 身体の内側──みぞおちの下のほうから、どんどん身体が火照ってくる。

 彼の視線に晒されるだけで、苦しいくらいに熱くなる……。

「……汗」

「…ハァ、ハァ……ッ……ぅ」

「汗が凄いね……センセ」

「………使う…‥公式…は、…‥‥これ、で」

「………」

 彼女は必死だった。

 彼の言葉も聞き取れないくらい上の空だったけれど

 説明を止められなかった──たぶん、止めた途端に彼が取るであろう次の行動を想像して、怯えていたからなんじゃないか。

 彼女に絡み付く毒蛇が、チロチロと舌を出して食べる隙をうかがっている。

 その瞬間に怯えている。

 だから少しでも長引かせようと……!

「…これ で、先にbの値が求まって…‥‥」

「……」

「値を式に代入するの‥‥っ…そしたら」

「a=5/12π、だね」

「…っ」

「Pの軌跡が求まったよ。
 ……解説ありがと、センセ」

 …なのに彼は、こんなささやかな抵抗さえ、彼女に許してくれなくて。

「センセの説明はわかりやすいね」

 でまかせだとバレバレな褒め言葉で、抵抗の時間をさっさと終わらせてしまった。

「…‥ハァッ…‥ハァッ……!」

「……」

 解説を終えた参考書を置く。それこそ、音も立たないくらいにゆっくりと──。

 すると隣でテーブルにもたれていた彼も、重怠そうに身体を起こした。

 彼の右手がこちらへ伸びる。

 額に貼り付いた彼女の前髪を耳にかけ、そのまま顔を持って引き寄せる。

 彼女は青年の両手に顔を挟まれ、少し強引に彼のほうへ向かされた。

 さっきまで上目遣いだった目が、今度は至近距離で彼女を見下ろしている。


「汗を拭いてあげたいけど、手元にタオルが無い」


「ハァ……ハァ……ッ」


「だから舐めていい?」


「……」


「先生の汗……舐めたい」


 首が直角に曲がって…ますます呼吸がやり辛い。

 暑さにやられて朦朧(モウロウ)とした頭は

 彼のぶっ飛んだ言葉を、容易には理解できないらしい。


「って言うか、逃げるなら今しかないと思うんだけど……」


「ハァ、…ぁ」


「聞こえてる?」


「……動け ない」


 ただ…彼の言葉が何であれ彼女はもう動けなかった。

 逃げられない。

 暑いから?怖いから?


「…‥君のせいで‥‥動けない」


「……フ」


 涙が出そうになるのをこらえて、非難がましく彼を睨んだ。

 なのに彼はナゼか頬を赤らめて、これ以上ないほど優しい微笑みを浮かべた後、そっと唇を重ねてきた。

「……あのさぁ……センセ」

 汗ばんだ首筋を指でなぞって、彼女の髪の毛をパサリとはらう。

「さっき……首に蚊が止まってるーって、言ったのはさ」

「…?」

「あれ、実は嘘じゃなくて……。センセの首に本当に蚊がいたんだ。……けっこう長い間、止まっ…てた」

 そんな事を喋りながら彼がうなじにキスをする。

 それをされた彼女は…何かを諦めて目を閉じた。

 降参。降伏。自分でもわかるくらいに性的な溜息が、喉より奥の深いところから大きく零れる。

 溜息と一緒に中の熱を逃したつもりだけど火照りは少しも無くならない。

「…蚊がいた なら、見てるんじゃなくてっ……早めに教えてほしかったよ……?」

「……フフ、そう、だよネ 」

 うなじに触れた彼の唇から、舌が出てくる。

 二度、三度とくすぐるように舐められる…。

「はぁっ…‥ぁ……」

「見とれてたんだ」

「…ぁ‥‥!」

「…あんな虫ケラに好き放題、血ぃ吸わせてやってる先生が…っ……無防備で……で、すごく……エロかった……」

 ブラウスのボタン、上の二つを外されて、続けて剥き出しになった片方の肩に、彼の息がかかる。

 その時感じた彼の息もすごく熱かったから、身体が火照ってしかたないのは自分だけではなかったと、それがわかった彼女は…ホンの少しだけ安堵する。

 でもその安堵もつかの間。

 尋常でないくらい汗をかいてしまっているのに、彼が躊躇なく舌を這わせてくるから…!

 それこそ蚊が血を飲むみたいに強く吸い付いてくるから、恥ずかしくて身体が縮こまる。

「…ハァ‥…ハァ…!」

 レロ...

「ぁぁ‥‥//」

 肩の丸いラインから……首の線をツーーっと辿って……耳の下まで、わざとゆっくり舐め上げてくる。

「……ハッ…………うま」

「……ぁ‥ぁ…‥!?」

「やっぱ美味いね……センセ……好き。俺も痕──いっぱい付けたい。蚊に負けるとか……マジ勘弁」

「痛っ…」

 ....チュッ♡

 噛まれた

 首筋に鈍い疼痛(トウツウ)が走って、彼女は噛み付かれたのだと思った。

 けれど本当は違った。噛んだのではなく吸い付いたのだ。これが世にゆうキスマークだと、この時の彼女は気付かなかった。

 なぜなら「キスマーク」なんて可愛らしい響きの言葉でかたづけられるモノじゃなかったからだ。荒々しくて…欲深い。何度も、何度も繰り返されるうちに、本当に彼に食べられてしまうのではと恐ろしくなる。

「ハハッ……泣いてる……!痛い?苦しい?…恥ずかしい?かぁわぃそだね……先生……!」

 自分が年上だという自覚も余裕も忘れ、身の置き場がない恥ずかしさから思わず顔を手で隠した彼女を、青年が咎める。

「だめだよ隠したら…!」

「…っ‥で も」

「俺に泣かされてる時のセンセの無防備な顔……死ぬほどカワイイから」

「‥‥ひっ…や、ゃあ‥!」

 耳朶をしゃぶりながら低い声で囁かれて思わず声が跳ねた。

 その反応に気をよくしたのか、耳の孔にまで舌を突っ込んで舐めてくる。

 ....ピチャッ、ヌプッ♡
 ヌルッ、ヌプッ...♡

「‥やあああっ‥‥//」

 そんなふうに責め立てられた彼女の頭はトロトロに溶けて、性的な涙が一気に込み上げてきた。

 もっと泣いてみせろよって…

 頭の中に直接命令されてるみたいに感じる。

「……手、どけてよ」

「ぁ‥…ぁ、ああっ、…‥やだぁ‥…//」

「……」

 それでも顔を隠したままなんとか耐えていると、言う事を聞かない彼女の服に手がかかる。

 彼はブラウスをたくし上げて頭だけ抜かせると、脱ぎかけの服で彼女の両腕を拘束してしまった。

 中途半端に脱がされた服が引っかかって、バンザイの状態から手を下ろせなくなる。

「これで隠せないね」

「ひど いよ……//」

「……、エロぃ」

「‥‥ッ」

 ブラジャーを晒した胸の谷間も舐められた。

 もちろん、ふくらみの柔らかいところにも赤い痕をたくさん付けられる。

「…イイよ…すごく……っ」

「んっ‥‥んん…んふぅ…!」

 そして今度は唇を奪われた。

 だらしなく開いた口は彼の侵略を止める術(スベ)を知らなくて、されるがままに舌を絡め取られる。

 下着を晒しているという羞恥に犯され…貪るキスに翻弄され

「ぁ……は、ぁッ‥‥…んんっ……!」

 彼女の力が弱まって何の抵抗もできなくなるまでキスは続いて、本当にただ泣くぐらいしか打つ手が無くなった頃合いで…彼の手が彼女の身体を弄(マサグ)り出した。

 もちろん両手は頭の上でバンザイしたまま、服に引っかかって動かせられない。

 怖い……!

「……怯えてる?」

 でもそれ以上に……

「……ハハ、いいよねぇその顔……ゾクゾクする」

「‥ッ…‥ぅ‥あああ」

 発情している身体──。

 彼の視線に晒されたトコロから、獣みたいに発情している。

 太腿を撫で回されるたびに腰がビクビク跳ねてしまう。

 なのにそれを無視して、皮一枚の繊細な触れ方で汗ばんだ太腿を何度も往復する彼の手はいつもどおりの意地悪さだ。

 際どい所まで触れてくるのに、ショーツの手前で引き返す。

「…‥あ‥‥いやぁ‥…‥//‥‥私、もう…!」

「……」

「お願い…‥‥熱くて、熱くて苦しい…‥‥」

 指に焦らされて…瞳に煽られた挙げ句、気付いたらおねだりまでしているんだから救いようが無い。

「何?センセ……、泣いておねだりするんだ?先生なのに……生徒の俺に?」

「‥もう‥…‥許してぇ‥‥!」

「──…イイよ」

 震える声ですがりつく女を見た彼は、口許を歪めて満足そうに頷く。

「ココも舐めてあげる。センセがいちばん気持ちよくなれるトコロ……」

 言うが早いか彼女の両脚を掴んで持ち上げると、まんぐり返しにしてショーツのクロッチを横にずらした。

 ショーツの内側で、ねばっとした糸が伸びる…。

 それが彼女からもしっかり見えてしまった。アソコはもうぐちゃぐちゃだ。

 厭らしい汁で溢れたソコに、舌を突き出した彼がスローモーションで顔を近付ける。

「‥‥ッ」

 がっちり固定された下半身は、せがむ事も逃げる事もできない。

 そして……

「‥‥‥ああああ‥♡」

 彼の舌先が一番敏感な突起を掠めたのと、エロティックな上目遣いの目が彼女を撃ち抜いたのはほぼ同時だった。

「ひゃあ──‥っああ//」

「……っ」

「…‥ああっ//‥ああっ、ああっ……//
 あああ、あ、あっあっあっあっあっ//」

 ピンとわかりやすく勃ち上がる突起を掠めた直後、ヌルヌルの汁を塗りたくりながら激しく転がされる。

 いきなり与えられた強すぎる刺激のせいで頭の回路がショートした。

「…‥ゃ、あっ!あっ!…あっ//‥‥ひゃあ‥─ぁぁ、ぁぁぁん‥…ああああっ」

「……ッ……声……!……も っと……出して」

「─…!‥ん、んん…‥//……ああっ、ああんっ//」

 ピチャ....ピチャ...
 クリッ..クリッ..クリクリッ!

「‥ッ…ひぃっ‥あ!‥ああああ…‥//」

 あんなに小さなモノを転がされているだけなのに馬鹿みたいにキモチイイ。

「あっあっあっあっ‥はぁん…!‥──ぁぁん‥//」

 ピチャ....ピチャ...♡
 ピチャッ、ピチャッ、ピチャッ、ピチャッ♡

 全身の肌が栗立ち、悦ぶ。

 腰から下が溶けてしまいそうな甘い責め苦──。それだけじゃない。あまりに厭らしい光景を前にしているせいでクラクラと目眩(メマイ)に襲われた。

 腰を高々と持ち上げられているから、自分の生々しいアソコも、そこを舐めている彼の顔も全部見えてしまう。

 レロォ...♡

「…ん──‥‥ひっ‥//」

 目をそらしたいのに彼ががっちり視線を合わせてくるからそれすらできなくて。

 ひたすら戸惑っていた。気持ちいいのと恥ずかしいのと……それと申し訳ないのとで混乱している。

 綺麗な彼の顔がアソコの卑猥さを強調していて、そんな場所を舐めさせているなんてやっぱり申し訳ない。ごめんなさい……と心の中で何度も叫んだ。

「あっ!‥ひっ!…‥ひっ!‥‥ああん//」

「…ほら……もっと……!」

「ああ、ああっ、ああっ♡‥だめ‥‥だめぇっ……!‥‥吸っ……‥ちゃ、やだ‥‥//」

「あー……、コレ…こーするのが、イイんだ…!?」

「あっ!ひゃあ…//‥‥ダ──ッ…‥吸って……グリグリ…‥しちゃぁ‥‥…やぁぁ……!ああああ……//」

「嫌なの?……敏感なコレ吸われて…っ…舌で強めに…転がされるの」

「やぁ…!いっ、や、…だめっ!‥だめ…!だめええ♡」

「へぇ…」

「‥あああ…‥っ‥//」

「じゃあもっと虐めようか。指もいれてあげる…ほら…このへんっ…どう?」

「…!?…なん…でっ──ああああっ//」

「奥は届かないけど手前のココ……どう?ザラザラ撫でられんの……好き……!?」

「‥やっ//‥ああっ…ああっ…‥いやぁぁぁ」

「嫌なんだ……クク、ハァ…………あー…そぉ」

「あああんっ…//」

 ごめんなさい、ごめんなさいと

 胸の内で謝ると、どういうわけか気持ちいいのが加速した。

 クチュッ♡クチュッ♡
 ヌプッ..ピチャッ..ピチャッ♡

「…イッ‥‥ク、‥イク‥‥♡」

 彼に弱点の突起を吸われて…こねられて…舐め弾かれて、ナカの感じるところまで指で責められて、慣れる術(スベ)のない快楽の渦に囚われる。

「イクッ‥‥あ、ああああ‥‥‥///」

 そもそも、何がきっかけで彼とこんな状況になっているのか。それすら理解できないままイカされる。

 ...ビクンッ!

 ビクビクッッ♡

 彼女を絶頂に追い立てる彼の──素早くなまめかしく蠢くその舌は、まるで本物の蛇のようだった。

「はぁっ‥‥はぁっ‥‥!!」

「……っ」

「はぁっ…ぁ‥//……い‥や‥ああああっ…‥♡」

「駄目だね……これ……っ。このまま最後までヤりたくなる……!先生をナカまでぐっちゃぐちゃにして……俺とのセックスしか考えられないようにしたくなる……!」

「……はぁ‥‥はぁ‥‥ぁぁ‥‥!?」

「…っ…くそ」

 それから何度も舌だけでイカされて、経験した事のない疼きと、甘ったるい疲労感に包まれる。

 呼吸もままならず弱りきった彼女の視界には、彼の顔がかろうじて映るだけになった。



「……てか、センセ?
 今さらだけどっ……先週俺がした、告白の返事」


「‥‥?」


「返事、まだもらってないンだけどさ…!」


 彼女の足から手を離した彼は

 腕で唇を拭いながら…再び彼女に覆いかぶさる。


「‥こく…は く‥‥?」

「…うん」

「でも……あれって……私を馬鹿にしてついただけの……噓、でしょう…‥?」

「ハァ……、マジか……」

「……?」

 夢見心地の彼女は……ああ、これって本当に夢なのかもと思うと同時に

 悲しいくらい現実的で悲観的な性格だから……この会話も含めていつもの彼の意地悪なのかと、今さらながら疑ってしまう。

 彼女を見つめて眉根を寄せるその顔は、とても演技には思えないけれど……。彼は彼女を虐めるのも騙すのも、とても上手いのだから信じられない。

「まぁそれもそうか……」

「ハァ‥‥ハァ…‥、なに、言って……?」

「…いや、なら、いいよ。先週のは忘れて」

「ぅん‥‥」

 正直、なかなか引かない絶頂の余韻に浸る彼女の頭は会話どころじゃなかった。

 呆けた声で返事をする。

 そんな彼女に対して、彼は苦く笑う。


「──…じゃー、仕切り直しってことで……。
 俺の彼女になってよ、先生」


「……ぇ、ぇ…!?」


「断るとか許さないけどね」


「よ‥?‥よくわからな…い、けど…‥っ……なんだ か、強引すぎる気が……するよ……?」


「……そう?そんなの、今さらだよね」


 彼の声が低くなった。
 男の子じゃなくて、男の人の声。


「だったらこうしよ?……今日の最後にやる小テストで満点とったら、俺の彼女になるって」

「え‥‥!?」

「それでOK?」

「…そんな コト……//
 ……ど、どうせ……っ、また最後の1問……間違えるつもりでしょう………!?」

「……は?」


 いつもの意地悪。またそうやってからかうんでしょう?って

 疑心暗鬼になる──いまだ涙が枯れない目を彼女がオドオドと動かしていると

「もう間違えるかよ」

 彼に顎を掴まれて、グッと顔を寄せられた。



 ポタ.....


 彼のこめかみから零れた汗が彼女の頬に滴る。



「…んん‥//」



「──今日から本気だすから……さ……!」



 それから激しく唇を奪われた。

 心臓が跳ねたせいで、最後に彼が囁いた言葉は聞き取れなかった。

 聞き返そうにも呼吸すらまともに許されない。

 舌を絡め吸い出され…自分の不細工な鼻息ばかりが耳に響いた。



(あれ……可笑しいね)



 セミの声がいつの間にか聞こえなくなる。

 聞こえるのはやはり、二人のキスのあわいで零れる余裕のない吐息の連鎖──。

 そして彼女はもうひとつ気が付いた。

 切羽詰まった荒々しい…欲情したこの息遣いは、自分を組み敷くこの青年のものだったのだと──

 それを知った彼女は無性に彼の頭を撫でたくなったのに、両手を自由に動かせられない。

 それがすごく、もどかしかった。









(終)






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