略奪貴公子 ~公爵令嬢は 怪盗に身も心も奪われる~ 【R18】

弓月

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第八章

怪盗の宝

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 ───


 エマの言ったとおり、割られた窓ガラスの修復は夕刻までには終わっていた。

 ディナーが終わって湯浴みをすませたレベッカ。

 寝着姿の彼女は椅子に座って、ベッドのしたくを整えるメイドの様子を見ている。

「ねぇ、あなた」

「はいっ、何でしょうか奥様?」

「いつもありがとう」

「い、いえ……//」

 声をかけられたその若いメイドは、レベッカからの労いを受けて、照れを隠すように頭を下げた。

「ごゆっくりお休みくださいませ」

「おやすみなさい」

 ベッドを整え、部屋の明るさを調整したあと、いつもの挨拶を残してメイドは出ていった。

 レベッカは椅子に座ったままだ。

 暗くなった自分の部屋の様子を眺める。

 左手の壁際に、ドレープの垂れ下がった、シルクのシーツをあしらったベッド。その奥にはクローゼット。

 自分が座っている右手側には、本棚とタンス。

 初めてこの部屋に入ったときとそれはあまり変わっていないが、唯一そこには、もともとなかったものが飾られていた。

 ──それはレベッカの肖像画。

 結婚式のドレス姿で、背中を見せて顔だけをこちらに向けた額(ガク)のなかの彼女は、優しい微笑みを…椅子に座るレベッカに向けていた。

 その肖像画は御抱え画家の傑作だった。

 みなが口を揃えて、描かれたレベッカの美しさを讃えたものだ。

「クスッ…、変な顔」

 だけどこうして見ていると……

 絵の中の微笑みに違和感しかない。

「そんなに複雑な顔しないでよ…」

 絵の中で微笑む公爵夫人に、そんな言葉をかけてしまう。

「人はあなたを幸せ者だと言うのよ?」

 祝福された結婚

 周囲が望んだ契約

 ──だが彼女は幸せより喜びに憧れた。

 女としての悦びを教えられたあの日から…。だから、幸せを捨てる覚悟はできている。

 …彼女は立ち上がり、クローゼットから外出用のドレスを出した。

 プチン、プチン

 レベッカが服のボタンをひとつづつはずすと、ゆるんだ白のドレスは当たり前のようにストンと滑り落ちていった。

 透き通った肌──

 下着姿の彼女は、その肌に熱い舌を滑らせていった彼との情事を思い出す…。

 そしてレベッカは、クローゼットから取り出した外出着を身に付けた。

 この城に来たときも、持ち込んだのは身につけたドレスのひとつだけ。

 “ 出ていくときだって同じでなくちゃ ”

 ダイヤもお金も、何も持たずに…。レベッカはこの城を去ろうとしていた。

「……よし、準備はできた」

 あとはここから逃げるだけ。

 上手く逃げ切れるかしら…。

 絶対に見つかってはいけない。

 わたしには、ここに戻る資格はないから。



 ギイッ...パタン


 レベッカは寝室を静かに後にした。

 夜も遅く、廊下には誰もいない。

 レベッカの部屋は2階なので、外に出るにはまず1階に降りなければいけないのだが。ナゼか彼女は、階段を上ることにした。

 《 確かめたいことがある 》

 もしかしたらそこに、何か大事なことが忘れられているかもしれないから。

 コツン、コツン、コツン....

 息を潜めて、足音を気にして…レベッカがたどり着いたのは最上階。

 ──そして、さらに上にある、屋上に出るための扉だった。



 フワッ



「───…!」

 屋上の扉を開けたとたん

 彼女を包んだのは花の香りで、その目に飛び込んできたのは美しい花びらだった。

「屋上庭園…」

 本当に、ここは建物の上なのかしら?

 アーチ状のツタ
 綺麗に刈り込まれた観葉植物
 涼しげな音を奏でる水路

 こんな場所があるなんて彼女は知らなかった。

「なんて綺麗な場所…」

 空の星の近くに咲く花たちは

 何にも邪魔されることなくその光を浴びて、闇の中で幻想的に浮かび上がっている。

 レベッカはその光景に見蕩れながらあたりをぐるぐると見渡していた。


「……」


 ……ない


「どこにも、ない……?」


 ただレベッカは見蕩れているばかりではなかった。彼女は " あるもの " を探して、城を出る前に最後にここまで来たのだ。


 広い屋上庭園を歩きながら、彼女は必死に探している。


 ……けれど見つからない


 右を見ても、左を見ても


「…!」


 見つからないという事は……つまり


「…………。クロー…、ド……?」


 すべてを見尽くしてから、レベッカの足は静かに止まった。







 ....





「レベッカ」


「──…」


 その時、植木の影に見えたのは──


「……っ」


「今夜は美しい夜ですね、花も……あなたも」


「……!」


 クロード……!


 植木の後ろから姿を現したクロードが、手前の花壇に腰を下ろし、長い脚をもて余すように組んだのだった。




「屋根のない場所で夜をすごすのは久しぶりだ」

「あなた…、昨晩からずっとここに…?」

「──見てのとおり」

「…屋上階段の扉は中から鍵がかかったままでした」

 少し離れた距離で交わした会話──

 この声を聞いたのはいつぶりだろう?

「私はひとつ下の窓を割り、こちらへ跳び移ったのです」

 花壇に座る彼の装束は、伯爵ではなく怪盗だった。

「あなたもそれに気付いたから、こうして来て下さったのではないのですか?」

「わたしはっ…ただ、屋上から " これ " が降ってきたから…!」

 動揺を隠しきれないレベッカが差し出したのは、小さな小さな花びら。

 …それは菫(スミレ)の花。クロードが愛した花のひとつ。

 けれど野草である菫の花は城の庭園に咲いていない。屋上庭園もくまなく探したけれど、どこにも咲いていなかった。つまり……

「……あなたが飛ばしたの?」

「ええ、可憐なあなたへの贈り物です」

 クロードはマスケラを外し、目元を緩めた。

 レベッカはゴクリと…唾を呑む。

 外したマスケラを彼がそっと花壇に置く所作を、真っ白になりそうな頭で見つめていた。

「──…」

「……っ」

 暫く二人は止まったままで

 言葉を発することもなくて──

 近いとはいえないその距離をたもったまま動くことはなかった。

 “ ……クロード  ”

 胸の内で何度呼び続けたかわからないこの名前を、彼女は簡単に声に出せなかった。

「黙ったままですか…レベッカ…」

「……ッ…ぁ‥‥」

「──何故、此処にいるのか」

 何故、私がこうして貴女の前に現れたのか

「……聞かないのですか?」

「……っ」

「そう…、それは残念だ」

 レベッカがピクリとも動かないので、クロードはやれやれと立ち上がった。

 それを見たレベッカは怯えるように身体をこわばらせ…そしてこちらへ歩み寄ってくる彼に、一歩あとずさる。

「ここは花の香りで溢れていますし、灯りもなく薄暗い」

 クロードは歩みより
 レベッカはあとずさる。

「おまけに貴女はその声を聞かせてくれない」

「──…」

「……なら私はどのようにして貴女を感じればよいのか?」

「…っ」

「──触れるしかないのですね」

「…‥ぁ」

 クロードの手がレベッカへと伸ばされた。

 けれど──

 咄嗟にレベッカは身体の向きを変え、その手を拒むように、彼から逃げるように、階段へと走り出した。



「……!」



 ガシッ....!



「──何故、逃げる…」


「ぁ、ぁ……!クロー、ド……!」



 だが彼女の行く手は阻まれた。

 背後からレベッカを抱き締めたクロードは、逃げることを許さなかった。

「…私から逃げるつもりですか」

 私から逃げて…
 公爵から逃げて…

 ここを出ていくつもりですか。

「…‥離し、て」

 抱き締められたレベッカは顔を俯かせて声を微かに絞り出す。

 無駄とわかりつつもがきながら、彼の腕に抵抗する。

 そんな彼女のすぐ真上にはクロードの唇があり、言葉を囁き続けていた。

「…本当に離していいのですか?」

「……そう、です……いったん、離して…っ」

「こういう時、貴女は必ず反対のことを言いますからね」

 せっぱ詰まったレベッカに対して、余裕の微笑みでクロードが顔を覗きこむ。

「──可愛いことをしてくれる」

 その囁きと同時に彼と目が合う。

 一瞬で吸い込まれそうになるレベッカは、雷が落ちたように硬直して、息を呑んだ。




 ………もういやだ



 こんなふうに、この人に振り回されるのは




「──もう!いい加減にしてよ!」


「……!」


 次の瞬間、レベッカが声を張り上げた。

 それはクロードを驚かすには十分で、彼はレベッカに抱き付いたまま動きを止める。

 離してというのは本心だった。

 誰もいない屋上で、その必死な声はクロードだけに突き刺さった。

「怒っているのか…レベッカ」

「…違う…っ、そうではなくて」

「では私を避けるのは何故です?」

「──…」

「私は貴女に嫌われたのですか?
 貴女は──私の言葉を疑うのだろうか…」

「…っ!」



 ──パァン ッ!!!




「‥‥!?‥‥‥つ」


「ふざけ…ないで」



 クロードの腕の中で暴れた彼女から、続けて与えられたのは強烈な張り手──。

 強すぎる反撃に驚いたクロードはさすがに彼女を解放していた。



「わたしは…あなたを疑っていません…っ」

 興奮した様子のレベッカの目は仄かに赤く、涙が滲んでいるようにも見える。

「…あなたを信じました! わたしは、あなたを信じて待つ…って…、そう決めたの…!」

 だから──

 彼女は公爵家を裏切った。

 尊敬する公爵から大事な家宝を奪い

 優しいエマに心配をかけ続け…


 そして、アドルフを傷付けた。


「それでも…信じたの…」


 クロードの正体を知っていても

 彼の狙いに気付いてしまっても

 その想いが掴めなくても

 それでも信じたかったから…。



 張り手をくらわしたまま、彼に向き合って立っていたレベッカ。

 強気な瞳に涙をため込んだ彼女は、睨み付けるような目のまま、……その表情をくしゃりと崩した。

 ……そっと彼に近づき、彼の服の胸元をつかんで顔を埋めた。

「レ……レベッカ?」

「少しだけっ…このままでいさせてください…!」

 すすり泣く彼女の肩が震える。

「触らないで!」

「…っ」

 クロードがその震える肩に手を回しかけると、レベッカが怒鳴った。

 ビクリと止まったクロードの手──

 けれど彼はそのまま彼女の肩を包んだ。

「‥‥ッ‥グスッ‥‥あなたって本当に‥」

 レベッカの涙は止まらない。

「‥‥本当に‥自分勝手‥‥!わたしより」

「──…」

「──さんざん、わたしに付きまとった癖に…急に音信不通で…姿を見せなくなった癖に…!

 なのに、今度は、こんなに唐突に…っ」

 まるで何もなかったかのようなすました顔で

 今までどおりの余裕な態度で

 現れたあなたは変わらず魅力的で…。

「…どれだけ振り回せば気がすむのですか」

「──…」

「どうしてこんなに…っ…嬉しくなってしまうのですか……!?」

 わたしばかり翻弄されて…

 少しは、怒りの気持ちが沸いてきてもいいはずでしょう?

 なのにこの鼓動はおかしいくらいに高鳴るばかり。

「いきなり抱きつくとか…勘弁してください」

「……何故?」

「自覚してよ!こっちは心臓がいくつあっても足りないんですから……!」

「そ、それは…」

「本…当…に、顔を見ただけで…………」

 こんなに──

「──…っ」

 レベッカは顔を上げる。




 ああ…クロードだ


 きっと会える、会いに来てくれるって


 そうやって信じて、待ち続けて──


 夢じゃない…彼がわたしの目の前にいる…!




「──…好き…なの」


「‥‥‥!」


「もう情けないくらい…っ

 わたし、あなたのことが好きです……」



 でなければこんな再会、もっと怒りが込み上げていい筈なのに…。嬉しさだけで胸がつまりそうなのは、そういうことだ。



「たとえあなたに、忘れられない想い人がいたとしても…それでも好きなのっ…あなたみたいな悪党が…」



 わたしの周りには優しい人が沢山いた。


 それでも心を奪われたのは彼だった──。




「…レベッカ」

 クロードは圧倒されたまま、自身の胸で涙を流す彼女を見下ろしていた。

 顔を上げたかと思えば

 高揚した声で《 好きだ 》と伝える彼女──

 真っ直ぐ見上げてくる潤んだ瞳。

 クロードはたまらず彼女の顎に指を添え、その唇を奪っていた。

「……っ」

 それは触れるだけの優しいキスに留まり、二人は互いを見つめ合う──。

 そして力強く彼はレベッカを抱き締めた。

「──…困りました」

「…?……グス……ふ……ッ…」

「…私は貴女を奪いにきたのです。これではまるで想定外だ」

 計画も心も、狂わされた

 この愛しい令嬢に──。

 …クロードは不思議に思った。

 どんな高価で美しい宝でも、一度盗んでしまえばそこに何の魅力も見いだせない。

 だから彼は、奪った宝をいつもすぐに手離していた。

 けれど今は違う

 奪って尚、さらに、この姫を誰にも譲りたくない…!



 そして彼は気付く

 …本当の宝とはそういうものなのだと。



「私はずっと…貴女の心を奪うのを恐れていたのかもしれない…」

 奪えばまた、興味が薄れてしまうのではと。退屈で空っぽだった元の自分に戻ってしまうのではないかと。そんな不安を知らず知らずにかかえていた。

 なるほど確かに、クロードは我がままで臆病な子供だったのだ。

「…しかしそれは杞憂(キユウ)でした」

 それを証明するのは、自分自身の…この内から沸き立つ愛情という熱の塊。



 ──冷めるわけがない。



「怪盗として貴女を拐うつもりで来ましたが……やめました」


「クロード……?」


「伯爵として、…私は貴女に求婚いたします」



 パサッ



 クロードは彼女を離して、マントの留め金をした。

 そして脱いだマントを広げると、彼女を包むようにして優しく被せた。

 クロードが片膝をついて彼女の前にひざまづく。

「──いま…なんて…?」

「……黙って」

「……ぁ」

 彼に柔らかく説き伏せられて、レベッカは驚いた口を閉じた。

 胸の前で両手を組み、被せられたマントをぎゅっと握った。

 するとクロードが懐から煌めく何かを取り出す。

「……!」

 アフロディーテの首飾り…!

 レベッカは初めてその首飾りを目にした。

 それは特別豪華な見た目をしているわけてはないが、美しいという称賛が何より似合う代物だった。

 一目見ただけで、この首飾りが公爵家の家宝だと思い知る。

 そんな首飾りを、クロードは差し出すように両手で持っていた。

「アフロディーテの首飾りは代々の公爵が、花嫁に求婚するときに贈っていたと言われている」

「……」

「しかし首飾りを狙う者が花嫁を襲った事件をきっかけに、城の奥へと隠されることになった。……以来、誰の目にも触れず…暗い部屋で輝き続けていたのです」

 ひざまづくクロードは一度腰をあげて、固まったままのレベッカに首飾りをつけたのだ。

 彼女の白い肌の上で

 銀色の首飾りは喜ぶように輝きを増す。

「……やはり美しい首飾りは、美しい女が身に付けてこその価値ですね」

「…そう…ですか?」

「ええ、とても綺麗だ……」

 彼の言葉を聞いて、レベッカは頬を赤らめる。

 自分の首にかけられた首飾りの重みと、マントの温かさを感じながら…。

 そんな彼女を見て目を細めて微笑んだクロードは、再びその場にひざまづく。




「 …私は、私を、まともな人間とは思わない。

 故に私は臆病だ。

 真意を隠してばかりの言葉も、笑みも…

 飾り付けられた傀儡のソレに、何の価値も無い。

 この愛し方も…とうに歪んでいるのだろう。

 しかし、レベッカ──私は

 貴女のことを愛しく思う。

 真に、貴女こそを宝と思う。

 その想いは冷めない…

 心を奪うだけでは満足できない。

 私は貴女の全てを望む。

 貴女の全てを欲してしまう。

 この想いを叶えたまえ………… 」




「──…っ」




「──…私だけの姫よ」




「結局…っ」




 貴女がわたしにくれる言葉はいつもどおりの美しさ──。

 謝罪の言葉も何もないあなたは、プライドはやっぱり人一倍。

 世間知らずなわたしの心を掻き回し、ひたすらにわたしを酔わせようとする。

 それが本心なのかうわべだけの言葉なのか…誰に聞いたらわかるというの?



「御手をこちらへ」


「……ぅ…ん…」



 でもわたしは疑わない。

 あなたを信じると決めたのだから。

 こんな美しく着飾った言葉を信じられるなんて

 わたしって馬鹿がつくほど幸福者(シアワセモノ)よ──。




 …レベッカが右手を差し出すと、ひざまづいたクロードは、その可憐な手をとり甲にそっと唇を落とした。

 二人の視線が空中で絡まりあえば

 エメラルドとアメジストの色違いの瞳が、互いの想いを汲み取り優しい光をはなつ。




...



 どこからか夜鳴きウグイスの声がした…。

 彼女は野外歌劇場のプリマドンナだ。

 それは花と水に囲まれた楽園。

 きらめく星のふりそそぐ屋上庭園にて──。

















 ───









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