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儚き運命
儚き運命_6
しおりを挟む「──…ッ」
薄く開いたまま、止まってしまった彼の瞳を…
見つめるセレナの目が堪えきれずに崩れた。
とめどなく湧き出る涙を流し続け、震える肩で動かぬ彼を抱き締める。
・・・ポタッ
セレナの涙がローの目に落ち
彼の目尻には一筋の線ができる。
それはまるで──
彼も一緒に泣いているかのように見えた──。
「…っ…、ロー…」
いくら呼び掛けても
返事がある筈もない。
それでも
「──…っ…愛して る」
あなたに伝えなければ
「愛してる…!! 」
まだ熱の残るその唇に
そっと自分のものを重ねた。
愛しています、誰よりも…
「死なないで…──ッ」
わたしはこんなに……
こんなにあなたを愛しています……!!
聖地に風が吹き込む。
崖上のセリュスの木々が一斉に花を散らし
深紅の花びらが空中を渦巻いた。
彼等もまた泣いていたのだ。
狼の死を悼み、王の死を嘆き───。
───…
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