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五、阿仁鉱山の異人
八
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「太一、お前嘘つくのもいい加減にせぇ!! その過ぎた口がねぐなる前に、とっとと青森さ帰れ!!」
「嘘ついてない! 本当だ! ワァはこの目で見だんだ!!」
大和たちが鉱山場付近を歩いていると、何やら鉱山の男たちが揉めているようだった。一人の男が数人の男たちに囲まれ、一方的に殴られている。
「がちゃめいでるな。なしたんだべ」
「面倒事には関わらないほうがいいよ」
二人が知らぬふりをして通りすがろうとした時、
「あ! き、昨日の馬鹿力でねえが。お前どら、聞いて驚くなで。この男はワァの子分で熊どこ一撃で倒すくらい強いど。お前どらどこも一撃だ。ホレ、子分、あいつらどこやってけれ」
殴られながらも、男が大和に気づくと指をさした。大和は驚いて右京を見ると「俺は知らないよ」と、顔を横に振った。
顔が腫れていて、すぐに気付かなかったが、よく見ると殴られている男は太一だった。
「俺はお前の子分でねえし、ただのマタギだ」
大和が冷たく返して通り過ぎると、太一は慌てて言い直した。
「んだ、んだったな。ちいっと話どこ盛ってしまったな。んだども、昨日、ワァの歯どこ折ったごと忘れてねえど」
大和の足が止まり、太一に振り向くと
「俺さ何として欲しいんだ?」
太一はホイきたと目を光らせて叫んだ。
「こいつらどこ黙らせてけれ。あんた、マタギだば分かるべ? ワァは本当に赤い目の熊どこ見たんだ! それも一度でね。二度見たんだ!!」
大和だけでなく、右京も目の色を変えた。
「やかましねえ!! いつもそうやってお前は、俺たちどこ脅してんだべ。黙るのはお前だ!!」
勢いよく拳が飛んできた。太一は、また殴られる! と、思いっきり目を瞑る。
ゴッっと、鈍い音がしたが太一に痛みは感じなかった。太一はゆっくりと片目を開けると、殴られたのは太一を庇った大和だった。
「これで歯の借りどこ返した、でいいべか」
大和がぺっと唾を吐くと、赤い液体が地面を濡らした。
「お、おい……お前の目……うわあぁぁぁぁ!!」
炭鉱の男たちは、剥き出しになった大和の双眸に怯えて逃げ出した。
「君、本当に面白いね。一体何者なの?」
「ん、んだ。お、お前、馬鹿力だし、何者だ? そんた赤い目どこした異人はいねえど。この辺りさ住む異人は皆、緑色か青色の目だ。」
「んだのが!? 俺、異人だと思っでた……」
「あはは。なにそれ。んー、でも、ある意味、異人かもね」
「ワァのごと助けてけたもの。悪い奴ではねえのは確か……だべな。多分……」
「なんだ。俺、異人でねのか……」
大和の緋色の眼に気づいた周囲の人たちが怯えて離れていく中、右京は緋色の眼を瞠目し、太一は戸惑い、大和は落ち込んでしまった。
「……オキャクサン? ア……ア……」
聞き覚えのある透き通るような声に、大和が振り向くと、花柄の巾着袋が地面に落下し、透き通るような青い目をしたアンナがガタガタと小さく震えていた。
彼女は、父親のドミニクの仕事場へ遊びに来ていたところだった。
大和は自分を見て怯えている彼女に気づくと、慌てて前髪で両目を隠した。
「アクマダ!」
「パパ!」
彼女の隣にいたドミニクが、そう叫ぶと大和に襲いかかってきた。大和は一方的に彼に殴られ、耐えている。太一はどうして良いかわからず慌てふためき、それに反して、面白そうに眺めていた右京だったが、大和は一切男性に手を出す気がないと分かると、ため息をついてドミニクの背後を取り、彼の動きを止めた。
「落ち着いてください。彼はただのマタギですよ。多分だけど」
その時だった。
『ニクイ、ニクイ、ニクイ、ニクイ、ニクイ、ニクイ……』
突然、大和の全身が粟立ち、前髪で隠していた緋色の双眸が露わになる。
「がぁぁぁぁぁぁ!!」
――熱い。身体が、目が、熱い!!
大和の声は、獣の叫びのように鉱山一体に響き渡った。
「嘘ついてない! 本当だ! ワァはこの目で見だんだ!!」
大和たちが鉱山場付近を歩いていると、何やら鉱山の男たちが揉めているようだった。一人の男が数人の男たちに囲まれ、一方的に殴られている。
「がちゃめいでるな。なしたんだべ」
「面倒事には関わらないほうがいいよ」
二人が知らぬふりをして通りすがろうとした時、
「あ! き、昨日の馬鹿力でねえが。お前どら、聞いて驚くなで。この男はワァの子分で熊どこ一撃で倒すくらい強いど。お前どらどこも一撃だ。ホレ、子分、あいつらどこやってけれ」
殴られながらも、男が大和に気づくと指をさした。大和は驚いて右京を見ると「俺は知らないよ」と、顔を横に振った。
顔が腫れていて、すぐに気付かなかったが、よく見ると殴られている男は太一だった。
「俺はお前の子分でねえし、ただのマタギだ」
大和が冷たく返して通り過ぎると、太一は慌てて言い直した。
「んだ、んだったな。ちいっと話どこ盛ってしまったな。んだども、昨日、ワァの歯どこ折ったごと忘れてねえど」
大和の足が止まり、太一に振り向くと
「俺さ何として欲しいんだ?」
太一はホイきたと目を光らせて叫んだ。
「こいつらどこ黙らせてけれ。あんた、マタギだば分かるべ? ワァは本当に赤い目の熊どこ見たんだ! それも一度でね。二度見たんだ!!」
大和だけでなく、右京も目の色を変えた。
「やかましねえ!! いつもそうやってお前は、俺たちどこ脅してんだべ。黙るのはお前だ!!」
勢いよく拳が飛んできた。太一は、また殴られる! と、思いっきり目を瞑る。
ゴッっと、鈍い音がしたが太一に痛みは感じなかった。太一はゆっくりと片目を開けると、殴られたのは太一を庇った大和だった。
「これで歯の借りどこ返した、でいいべか」
大和がぺっと唾を吐くと、赤い液体が地面を濡らした。
「お、おい……お前の目……うわあぁぁぁぁ!!」
炭鉱の男たちは、剥き出しになった大和の双眸に怯えて逃げ出した。
「君、本当に面白いね。一体何者なの?」
「ん、んだ。お、お前、馬鹿力だし、何者だ? そんた赤い目どこした異人はいねえど。この辺りさ住む異人は皆、緑色か青色の目だ。」
「んだのが!? 俺、異人だと思っでた……」
「あはは。なにそれ。んー、でも、ある意味、異人かもね」
「ワァのごと助けてけたもの。悪い奴ではねえのは確か……だべな。多分……」
「なんだ。俺、異人でねのか……」
大和の緋色の眼に気づいた周囲の人たちが怯えて離れていく中、右京は緋色の眼を瞠目し、太一は戸惑い、大和は落ち込んでしまった。
「……オキャクサン? ア……ア……」
聞き覚えのある透き通るような声に、大和が振り向くと、花柄の巾着袋が地面に落下し、透き通るような青い目をしたアンナがガタガタと小さく震えていた。
彼女は、父親のドミニクの仕事場へ遊びに来ていたところだった。
大和は自分を見て怯えている彼女に気づくと、慌てて前髪で両目を隠した。
「アクマダ!」
「パパ!」
彼女の隣にいたドミニクが、そう叫ぶと大和に襲いかかってきた。大和は一方的に彼に殴られ、耐えている。太一はどうして良いかわからず慌てふためき、それに反して、面白そうに眺めていた右京だったが、大和は一切男性に手を出す気がないと分かると、ため息をついてドミニクの背後を取り、彼の動きを止めた。
「落ち着いてください。彼はただのマタギですよ。多分だけど」
その時だった。
『ニクイ、ニクイ、ニクイ、ニクイ、ニクイ、ニクイ……』
突然、大和の全身が粟立ち、前髪で隠していた緋色の双眸が露わになる。
「がぁぁぁぁぁぁ!!」
――熱い。身体が、目が、熱い!!
大和の声は、獣の叫びのように鉱山一体に響き渡った。
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