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十一、滅びた集落
七
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「おかっぱ様、さっきのさっきで悪いんだけど、俺ちょっと用事できちゃったから、貴方たちとは一旦別れることにするよ」
右京は、背後にいる姉弟を親指でさして言った。
「おかっぱ様……むむ……悪くない」
(((え!? おかっぱに「様」が付いただけだで!?)))
おかっぱ様、という呼び名が意外にも気に入ったらしく、山神が頷くと、大和らは目を丸くし一驚した。
「そして、右京、おぬしは童子らを連れて何処へ行くんじゃ?」
「うん。ちょっと青森の西目屋村にツテがあってね。そこに預けようと思うよ」
すると甚太が不満気に叫んだ。
「兄ちゃん! 俺どこ強くしてけるんでねがったのか!? 俺はこさ残る! こっから離れね!!」
「甚太! いい加減にせ! あんたにでっけぇ熊どこ倒せるわけねえべ!? そこさいる賊さも敵わねのに、馬鹿なごと言うなで!」
姉にどやされた甚太は涙目になると、悔しそうな表情で下を向いた。
「甚太。俺は、嘘は言っていないよ。別に強くなるのは此処じゃなくても良いんじゃない? 強くなったら此処に来れば良いんだよ」
青森にも強いマタギがいるんだよ。彼に教われば良い。と、右京が付け加えると甚太の顔色が見見うちに明るくなった。
「右京、お前……本気でこの子らどこ……」
子供達の行く末を心配した大和が話に割って入ろうとしたが、右京は「大丈夫」と彼に目配せをした。
――大丈夫。俺と同じ道は歩かせないよ。
甚太を宥めた右京は「あ、そうそう」と、突然思い出したかのように、背中に背負っていた風呂敷を広げた。
「これは――!?」
辰巳が驚くと、右京は頷いて答えた。
「これは花火玉です。鬼熊は花火師の建屋に近づいた形跡がありませんでした。きっと、火薬の匂いを感じて避けたのではないかと……」
「ふむ。火薬か……」
山神は阿仁鉱山で右京が火薬庫を爆発させた事を思い出した。
(確かに鬼熊はあの後、忽然と姿を消したな。火薬の衝撃に驚異したのかもしれぬ……)
「――ということだから、はい」
右京は様々な大きさがある花火玉のうち、一尺の花火玉を唐突に大和へ手渡した。
「へ!?」
「ちょっと大きいけど、お守りだよ」
「おいおい、でっけぐて物騒なお守りだな。大和、お前、火気厳禁だで」
唖然としたまま花火玉を受け取る大和の隣で、佐介が物騒なお守りを横目で見た。
「お守り、役に立つといいね。んじゃ、俺たちは行くよ。またね」
右京は残りの花火玉を風呂敷に包むと子供達を引き連れ、爽やかに笑って集落をあとにした。
「へば、俺らも阿仁さ帰るか」
そう言って辰巳は縄で縛られている賊達を睨んだ。
「……その前に、交番さ行かねばな。なあ? お前ら」
彼に睨まれた賊達はヒュっと息が止まり、捕らわれた獣のように身を縮めた。
右京は、背後にいる姉弟を親指でさして言った。
「おかっぱ様……むむ……悪くない」
(((え!? おかっぱに「様」が付いただけだで!?)))
おかっぱ様、という呼び名が意外にも気に入ったらしく、山神が頷くと、大和らは目を丸くし一驚した。
「そして、右京、おぬしは童子らを連れて何処へ行くんじゃ?」
「うん。ちょっと青森の西目屋村にツテがあってね。そこに預けようと思うよ」
すると甚太が不満気に叫んだ。
「兄ちゃん! 俺どこ強くしてけるんでねがったのか!? 俺はこさ残る! こっから離れね!!」
「甚太! いい加減にせ! あんたにでっけぇ熊どこ倒せるわけねえべ!? そこさいる賊さも敵わねのに、馬鹿なごと言うなで!」
姉にどやされた甚太は涙目になると、悔しそうな表情で下を向いた。
「甚太。俺は、嘘は言っていないよ。別に強くなるのは此処じゃなくても良いんじゃない? 強くなったら此処に来れば良いんだよ」
青森にも強いマタギがいるんだよ。彼に教われば良い。と、右京が付け加えると甚太の顔色が見見うちに明るくなった。
「右京、お前……本気でこの子らどこ……」
子供達の行く末を心配した大和が話に割って入ろうとしたが、右京は「大丈夫」と彼に目配せをした。
――大丈夫。俺と同じ道は歩かせないよ。
甚太を宥めた右京は「あ、そうそう」と、突然思い出したかのように、背中に背負っていた風呂敷を広げた。
「これは――!?」
辰巳が驚くと、右京は頷いて答えた。
「これは花火玉です。鬼熊は花火師の建屋に近づいた形跡がありませんでした。きっと、火薬の匂いを感じて避けたのではないかと……」
「ふむ。火薬か……」
山神は阿仁鉱山で右京が火薬庫を爆発させた事を思い出した。
(確かに鬼熊はあの後、忽然と姿を消したな。火薬の衝撃に驚異したのかもしれぬ……)
「――ということだから、はい」
右京は様々な大きさがある花火玉のうち、一尺の花火玉を唐突に大和へ手渡した。
「へ!?」
「ちょっと大きいけど、お守りだよ」
「おいおい、でっけぐて物騒なお守りだな。大和、お前、火気厳禁だで」
唖然としたまま花火玉を受け取る大和の隣で、佐介が物騒なお守りを横目で見た。
「お守り、役に立つといいね。んじゃ、俺たちは行くよ。またね」
右京は残りの花火玉を風呂敷に包むと子供達を引き連れ、爽やかに笑って集落をあとにした。
「へば、俺らも阿仁さ帰るか」
そう言って辰巳は縄で縛られている賊達を睨んだ。
「……その前に、交番さ行かねばな。なあ? お前ら」
彼に睨まれた賊達はヒュっと息が止まり、捕らわれた獣のように身を縮めた。
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