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二十、優先順位
一
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「山神様、なしてあの時、美弥子さんさ『死んだふり』どこしろって言ったんだスか?」
立山を歩く道中、大和が山神へ尋ねた。
今、彼らは立山の神に会うため、立山付近にある浄土山の頂上へ向かっているところだった。
清兵衛が昔、不思議な男に出会ったという場所は立山の頂上付近であったが、立山に身を潜めていた民子と合流し、彼女の様子をみた山神は、立山に神も白い熊も居ないだろうと察した。民子はミナグロであるため、常に山神と繋がっているのだ。そこで大和は民子と同じく合流した飛吹を立山付近の山々へ飛ばし情報を得ようと試みた。飛吹が戻ってくる間、神が居ると登山客の間で噂になっている浄土山へ向かってみようという次第であった。
大和に尋ねられた山神は、彼を一瞥して逆に訊いた。
「どうして平松旅館で美枝だけが白い熊に襲われなかったか、お前は分かるか?」
大和が「美枝さんが関係してらんだか?」と考え込むと、隣で聞いていた佐介と清兵衛も首を傾げた。彼らの反応に山神はフッと口角を上げた。
「ならば言い方を変えよう。もし、お前らの目の前に突然熊が現れたら、お前らはどう思う?」
「突然現れたら、そりゃ驚きますよ」
考えるまでもなく清兵衛が答えた。
「そして次にどう思う?」
「目の前さ現れたんだば逃げられねしな。殺らねば、殺られるべ? へば、殺るしかねえべ」
一般人であれば恐怖を感じるところだが、さすがマタギと言ってよいのか、佐介が勇ましく答えると、大和は「あ!」と声を上げた。
「眠っでらった美枝さんは、白い熊さ気づかねがったから何も思わねがったんだ!」
「そういうことじゃ。だから『死んだふり』、つまり無感情。自分は無害であることを示せと美弥子に言ったのじゃ」
「でも、美弥子さん、きっと山神様の意図が分かっていませんでしたから、無防備に死んだふりなんて出来ないでしょうね」
「そうじゃな。だが、これは憶測じゃ。だから儂の言うことを信じなくても良いと言った。じゃが……」
「山神?」
山神が曇った表情になると、大和は不安そうに彼女の顔をのぞき込んだ。山神は真っ直ぐに大和を見つめた後、佐介を見て目を細めた。
「お前らマタギは儂の話を信じようが信じまいが、死んだふりなんて出来んのじゃろうなと思っただけじゃ」
そうかもな、と大和と佐介は微苦笑した。少々場が和んだところで空から甲高い音が聞こえた。
ピィィィィピィィィィ――。
山々を飛んでいた飛吹が大和のもとに帰ってきたのだ。彼女は少し興奮した様子で翼を鳴らすと、彼らが向かっている浄土山とは反対方向に誘導するように旋回しながら飛んでいった。山を登っていた彼らであったが、山を下りなければいけないみたいだ。
「飛吹? あっちさ何かあったんだか!?」
大和が山神を見ると、彼女は頷いた。
「飛吹について行くぞ!」
立山を歩く道中、大和が山神へ尋ねた。
今、彼らは立山の神に会うため、立山付近にある浄土山の頂上へ向かっているところだった。
清兵衛が昔、不思議な男に出会ったという場所は立山の頂上付近であったが、立山に身を潜めていた民子と合流し、彼女の様子をみた山神は、立山に神も白い熊も居ないだろうと察した。民子はミナグロであるため、常に山神と繋がっているのだ。そこで大和は民子と同じく合流した飛吹を立山付近の山々へ飛ばし情報を得ようと試みた。飛吹が戻ってくる間、神が居ると登山客の間で噂になっている浄土山へ向かってみようという次第であった。
大和に尋ねられた山神は、彼を一瞥して逆に訊いた。
「どうして平松旅館で美枝だけが白い熊に襲われなかったか、お前は分かるか?」
大和が「美枝さんが関係してらんだか?」と考え込むと、隣で聞いていた佐介と清兵衛も首を傾げた。彼らの反応に山神はフッと口角を上げた。
「ならば言い方を変えよう。もし、お前らの目の前に突然熊が現れたら、お前らはどう思う?」
「突然現れたら、そりゃ驚きますよ」
考えるまでもなく清兵衛が答えた。
「そして次にどう思う?」
「目の前さ現れたんだば逃げられねしな。殺らねば、殺られるべ? へば、殺るしかねえべ」
一般人であれば恐怖を感じるところだが、さすがマタギと言ってよいのか、佐介が勇ましく答えると、大和は「あ!」と声を上げた。
「眠っでらった美枝さんは、白い熊さ気づかねがったから何も思わねがったんだ!」
「そういうことじゃ。だから『死んだふり』、つまり無感情。自分は無害であることを示せと美弥子に言ったのじゃ」
「でも、美弥子さん、きっと山神様の意図が分かっていませんでしたから、無防備に死んだふりなんて出来ないでしょうね」
「そうじゃな。だが、これは憶測じゃ。だから儂の言うことを信じなくても良いと言った。じゃが……」
「山神?」
山神が曇った表情になると、大和は不安そうに彼女の顔をのぞき込んだ。山神は真っ直ぐに大和を見つめた後、佐介を見て目を細めた。
「お前らマタギは儂の話を信じようが信じまいが、死んだふりなんて出来んのじゃろうなと思っただけじゃ」
そうかもな、と大和と佐介は微苦笑した。少々場が和んだところで空から甲高い音が聞こえた。
ピィィィィピィィィィ――。
山々を飛んでいた飛吹が大和のもとに帰ってきたのだ。彼女は少し興奮した様子で翼を鳴らすと、彼らが向かっている浄土山とは反対方向に誘導するように旋回しながら飛んでいった。山を登っていた彼らであったが、山を下りなければいけないみたいだ。
「飛吹? あっちさ何かあったんだか!?」
大和が山神を見ると、彼女は頷いた。
「飛吹について行くぞ!」
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