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第二王女シュゼットのサンドバッグ
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「それなら私が鍛えてやろう!」
「えぇ?! シュゼット姉様が……? えっと、ご遠慮します」
「遠慮することはない! 強くなりたいのだろう? 私に任せておけば大丈夫だ!」
「……」
確かに筋肉をつけて体を鍛えようとは思ったよ? でも、こんな展開は望んでなかった――
俺にはレベッカ姉様だけでなく、もう一人姉がいる。そう、幼い頃から剣術や体を動かすことに興味を持っているシュゼット姉様だ。
帝王学はレベッカ姉様と俺だけに課せられていた。シュゼット姉様には王族としてのマナーや作法、基礎知識など一般的な勉強だけだった。だから俺達より自由な時間は多かった。
その時間で、シュゼット姉様は毎日のように騎士団に見学に行き、騎士達と仲良くなっていた。騎士団員達はレベッカ姉様や俺のことは『レベッカ殿下』『ミシェル殿下』と呼ぶのに、シュゼット姉様に対しては『姫』と呼んでいる。
シュゼット姉様は性格的に堅苦しいのは好きではない。さらに幾つかの事情により他国に嫁ぐことはないため、国内の貴族に降嫁する可能性が高い。王族でいるよりも嫁ぎ先での人生の方が長いのだからと、騎士団員達に公式の場以外では殿下呼びをしないようにお願いしている。『シュゼット様』も長くて壁を感じると言い、不敬にならない呼称に困った騎士団側がなんとか絞り出した提案の中から、最終的に選ばれたのが『姫』らしい。
……王族じゃなくなるから殿下呼びはダメなのに『姫』は良いのか? それに『姫』って……。見た目だけならともかく性格は程遠いのになんでそれに決めたんだ? まぁ、本人達が合意したものだし、シュゼット姉様に話を聞くのも面倒だから、口を噤んでおこう。
シュゼット姉様は公式の場でない限り、髪は常にポニーテールにして特注した騎士服を好んで着用している。男勝りな性格で父上に似て脳筋であった。俺にとっては間違いなく姉様ではなく兄様だ!
シュゼット姉様が『かわいさ』からかけ離れたことで、俺がレベッカ姉様の着せ替え人形になってしまったわけだから、多少思うところはある。
だが、それよりも! シュゼット姉様には別のことで文句を言いたい!
お披露目会で知りあった子息の中に、騎士団長子息がいた。彼は物心ついた頃より剣のおもちゃを渡されて、体を鍛えるための訓練メニューも日常に取り入れられていると言っていた。彼を王城に呼んで話を聞きたかったが、手続きなどに時間がかかりそうだった。それなら毎日登城しているのだから、訓練メニューを作った騎士団長本人に直接聞いた方が早いだろうと思って騎士団の訓練場を訪れたのが間違いだった。
騎士団の訓練場では、シュゼット姉様が騎士団員と一緒に素振りをしていた。団員達の素振りを静かに見ている騎士団長を発見して、隣まで行って声を掛けた。
「こんにちは、騎士団長」
「ミシェル殿下! 殿下におかれましては、ご機嫌麗しゅうございます。このような場所にどのようなご用がおありでしょうか?」
「ここは公式の場じゃないんだから、そんなにかしこまらなくていいよ!」
「しかし、殿下に対してーー」
「僕が良いと言ってるんだから大丈夫だよ!」
「……わかりました。で、どうされたんですか?」
「この間のお披露目会で騎士団長のご子息から、騎士団長が体を鍛えるための訓練メニューを作っていると聞いたんだ。どんなメニューなのか僕にも教えて欲しいんだけどお願いできる?」
「ミシェル殿下も体を鍛えたいのですか?」
「うん」
「教えるのは問題ないですが、陛下に許可を取ってからでも良いですか?」
「大丈夫だよ、ありがとう」
騎士団長との話がついたと思ったら、すぐ近くまで来ていたシュゼット姉様にも話が聞こえていたらしい。
「へぇ、ミシェルも体を鍛えたいのか。それなら私が鍛えてやろう!」
「えぇ?! シュゼット姉様が……? えっと、ご遠慮します」
「遠慮することはない! 強くなりたいのだろう? 私に任せておけば大丈夫だ!」
「いや……えぇっと……」
騎士団長に助けを求める視線を送ったら、首を横に振られた。シュゼット姉様がこうなってしまったら誰にも止められないことを騎士団長もよく理解しているようだ。
俺としてはシュゼット姉様の実力がわからなかったのもあるけど、あくまでも着せ替え人形から脱却するために鍛えて筋肉をつけたいだけなんだ。強くなりたいとは思ってないのに「早速お父様に許可をもらおう」と、シュゼット姉様が強引に話を進めてしまった。思い立ったらすぐ行動するシュゼット姉様はその足で許可を取りに行った。
残された俺は、騎士団長からシュゼット姉様の話を色々と聞いた。シュゼット姉様は最初の頃はただ騎士団の訓練の見学をしていただけだったのに、ある時子供用の木剣をどこからか持ってきて、見よう見まねで構えたり、振り回すようになったらしい。
その太刀筋を見た騎士団長が『姫には剣の才がある』と感じて、すぐに国王陛下と王妃殿下に報告した。すぐにでも剣の師をつけた方が良いという意見には皆合意したけれど、王女に剣を教えられる剣士の適任者がいなかった。
先先代の騎士団長で有名なおじいちゃん剣士が、今は国を出ていて、しばらく戻ってくる予定もないんだって。適任者が居なくても誰かをつける必要はあるからって、現騎士団長にその役割が与えられた。
騎士団長曰く、シュゼット姉様の剣技には磨きがかかって、まだ8歳の少女なのに騎士団員の数人よりも優れているらしい。
8歳の少女より弱いと思われている騎士団員は自信をなくすんじゃないか? 大丈夫なのか?
……というか、俺も教わりたくないな。シュゼット姉様は脳筋だから、自分に出来るんだから俺も出来るとか思ってそうだ。
自分でちょっとずつ体を鍛えていくつもりだったのに、シュゼット姉様が父上達に話をつけてしまったせいで、俺の毎日のスケジュールに訓練の時間が加えられてしまった。
さらに俺の不安は的中した。シュゼット姉様は思った以上にスパルタだった。
まずは体を鍛えるために、ひたすら走り込みをさせられた。最初は頑張らないとキツイくらいの距離と時間で設定されたが、疲れても息が切れていても最後まで止まることは許されなかった。今まで運動をしていなかったんだから、最初から疲れても仕方がないと思う。
「はぁ、はぁっ……っ……も、もう……むりっ……足、つかれ…た……はぁっ……っ……」
「どうした? まだ少ししか走ってないぞ?」
「はっ……いや、……初めて…こんなにっ……はしったんだよ……はぁー…疲れるでしょ……っ…」
「ふむ……では、一旦休憩にしよう」
そこでしばらく休憩が許された。ベンチに座って用意された水分を取って十分に休憩をとった。
「さて、もう休憩は十分だろう。再開しようか」
「わかった。次は何を?」
「決まっているだろう。最初からやり直しだ」
「は? やり直しって?」
「途中で走るのを諦めただろう? それでは強くなれない! だから――」
「いや、あの、強くなりたいとか思ってないんだけど……」
「今日の目標を達成するまで、間に休憩を何度挟んでも良いが、休憩後には最初からやり直して最後まで達成するんだ! 大丈夫、終わらせるまでは私も付き合おう」
「えぇ?! 終わるまで帰れないってこと? 全然大丈夫じゃないよ! ここまで本格的なのも求めてないから!」
「さぁ、時間も有限なんだ。話をしていないで始めよう」
「ちょっとシュゼット姉様! 話を聞いてよ!」
結局、シュゼット姉様は俺の話を聞いてくれることはなく、スタート位置まで背中を押され、走らされた。最後まで達成しない限り、何度でも休憩を挟んでやり直しをさせると言われた時の絶望感は絶対に忘れない……。やり直しの方が何倍も辛いからと自分に言い聞かせて、キツくても辛くてもなんとか最後までやり遂げた。
走り込みが慣れてくると、今度は木剣でひたすら素振りをさせられた。1日500回だ。もちろん構え方やフォームもしっかりと見られた。少しでもズレると一回分やり直しになるから、実際は500回どころではなかったと思う。腕も痛いし、途中でやめたくなったけど、走り込みの時と同じように途中でやめるのは危険だと感じて、根性でなんとか乗り切った。
走り込みも素振りも慣れてくると、距離や回数、そして、より負荷がかかる方法が追加されていった。毎日夜はクタクタになって、早い時間から眠ってしまった。
体の基礎が少しずつ出来てくると、剣の構えや技、避け方など、剣術の基礎を体でも覚えさせられた。最初は姉様の攻撃を避けたり躱したりも出来ずにたくさん打ち込まれた。木剣だから切れることはなくても、痛いものは痛いし、痣や傷も出来た。いつもシュゼット姉様にボロボロにされていた。
正解かどうかは別として、体の鍛え方はなんとなく理解したし、これ以上は耐えられないというか、耐えたくないと思って、姉様へ今後の訓練をお断りする伝言を侍従に頼んだ。もちろん俺は騎士団の訓練場に行かなかった。
そうしたら、シュゼット姉様が部屋にまで来て、連れて行かれた。毎回逆らってはいるけれど、全く敵わない。それが何度も繰り返されて、諦めることを諦めた。シュゼット姉様には成人しても力では勝てない気がする……。
そして、正妃のアルレット様に男の子が産まれたことで、王位継承順位第一位がフェルナンになり、俺は順位が下がりスペアとなった。将来は臣籍降下する可能性が高まったことで、少し考えを改めた。
日々のシュゼット姉様との模擬戦で、相変わらずシュゼット姉様に打ち込まれて傷が絶えないが、こんなにも耐えてきたのだ。そしてこれからも相手をさせられるだろう。これはもう騎士団に入るということも視野に入れるべきだろう。入りたいかは別として、騎士になれば、これまでの地獄のような日々や苦労が報われるのではないかと思った。
シュゼット姉様に鍛えられて、確かに体力や筋力はついた。剣の腕も上がっていることには感謝する。だけど、シュゼット姉様には本当に文句を言いたい!!
可愛い弟に一切の手加減もなしで、一方的に攻撃を打ち込んで「体で覚えろ! 頑張って避けろ!」は、ホントあり得ないから! 俺は姉様のサンドバッグじゃないんだよ!!
「えぇ?! シュゼット姉様が……? えっと、ご遠慮します」
「遠慮することはない! 強くなりたいのだろう? 私に任せておけば大丈夫だ!」
「……」
確かに筋肉をつけて体を鍛えようとは思ったよ? でも、こんな展開は望んでなかった――
俺にはレベッカ姉様だけでなく、もう一人姉がいる。そう、幼い頃から剣術や体を動かすことに興味を持っているシュゼット姉様だ。
帝王学はレベッカ姉様と俺だけに課せられていた。シュゼット姉様には王族としてのマナーや作法、基礎知識など一般的な勉強だけだった。だから俺達より自由な時間は多かった。
その時間で、シュゼット姉様は毎日のように騎士団に見学に行き、騎士達と仲良くなっていた。騎士団員達はレベッカ姉様や俺のことは『レベッカ殿下』『ミシェル殿下』と呼ぶのに、シュゼット姉様に対しては『姫』と呼んでいる。
シュゼット姉様は性格的に堅苦しいのは好きではない。さらに幾つかの事情により他国に嫁ぐことはないため、国内の貴族に降嫁する可能性が高い。王族でいるよりも嫁ぎ先での人生の方が長いのだからと、騎士団員達に公式の場以外では殿下呼びをしないようにお願いしている。『シュゼット様』も長くて壁を感じると言い、不敬にならない呼称に困った騎士団側がなんとか絞り出した提案の中から、最終的に選ばれたのが『姫』らしい。
……王族じゃなくなるから殿下呼びはダメなのに『姫』は良いのか? それに『姫』って……。見た目だけならともかく性格は程遠いのになんでそれに決めたんだ? まぁ、本人達が合意したものだし、シュゼット姉様に話を聞くのも面倒だから、口を噤んでおこう。
シュゼット姉様は公式の場でない限り、髪は常にポニーテールにして特注した騎士服を好んで着用している。男勝りな性格で父上に似て脳筋であった。俺にとっては間違いなく姉様ではなく兄様だ!
シュゼット姉様が『かわいさ』からかけ離れたことで、俺がレベッカ姉様の着せ替え人形になってしまったわけだから、多少思うところはある。
だが、それよりも! シュゼット姉様には別のことで文句を言いたい!
お披露目会で知りあった子息の中に、騎士団長子息がいた。彼は物心ついた頃より剣のおもちゃを渡されて、体を鍛えるための訓練メニューも日常に取り入れられていると言っていた。彼を王城に呼んで話を聞きたかったが、手続きなどに時間がかかりそうだった。それなら毎日登城しているのだから、訓練メニューを作った騎士団長本人に直接聞いた方が早いだろうと思って騎士団の訓練場を訪れたのが間違いだった。
騎士団の訓練場では、シュゼット姉様が騎士団員と一緒に素振りをしていた。団員達の素振りを静かに見ている騎士団長を発見して、隣まで行って声を掛けた。
「こんにちは、騎士団長」
「ミシェル殿下! 殿下におかれましては、ご機嫌麗しゅうございます。このような場所にどのようなご用がおありでしょうか?」
「ここは公式の場じゃないんだから、そんなにかしこまらなくていいよ!」
「しかし、殿下に対してーー」
「僕が良いと言ってるんだから大丈夫だよ!」
「……わかりました。で、どうされたんですか?」
「この間のお披露目会で騎士団長のご子息から、騎士団長が体を鍛えるための訓練メニューを作っていると聞いたんだ。どんなメニューなのか僕にも教えて欲しいんだけどお願いできる?」
「ミシェル殿下も体を鍛えたいのですか?」
「うん」
「教えるのは問題ないですが、陛下に許可を取ってからでも良いですか?」
「大丈夫だよ、ありがとう」
騎士団長との話がついたと思ったら、すぐ近くまで来ていたシュゼット姉様にも話が聞こえていたらしい。
「へぇ、ミシェルも体を鍛えたいのか。それなら私が鍛えてやろう!」
「えぇ?! シュゼット姉様が……? えっと、ご遠慮します」
「遠慮することはない! 強くなりたいのだろう? 私に任せておけば大丈夫だ!」
「いや……えぇっと……」
騎士団長に助けを求める視線を送ったら、首を横に振られた。シュゼット姉様がこうなってしまったら誰にも止められないことを騎士団長もよく理解しているようだ。
俺としてはシュゼット姉様の実力がわからなかったのもあるけど、あくまでも着せ替え人形から脱却するために鍛えて筋肉をつけたいだけなんだ。強くなりたいとは思ってないのに「早速お父様に許可をもらおう」と、シュゼット姉様が強引に話を進めてしまった。思い立ったらすぐ行動するシュゼット姉様はその足で許可を取りに行った。
残された俺は、騎士団長からシュゼット姉様の話を色々と聞いた。シュゼット姉様は最初の頃はただ騎士団の訓練の見学をしていただけだったのに、ある時子供用の木剣をどこからか持ってきて、見よう見まねで構えたり、振り回すようになったらしい。
その太刀筋を見た騎士団長が『姫には剣の才がある』と感じて、すぐに国王陛下と王妃殿下に報告した。すぐにでも剣の師をつけた方が良いという意見には皆合意したけれど、王女に剣を教えられる剣士の適任者がいなかった。
先先代の騎士団長で有名なおじいちゃん剣士が、今は国を出ていて、しばらく戻ってくる予定もないんだって。適任者が居なくても誰かをつける必要はあるからって、現騎士団長にその役割が与えられた。
騎士団長曰く、シュゼット姉様の剣技には磨きがかかって、まだ8歳の少女なのに騎士団員の数人よりも優れているらしい。
8歳の少女より弱いと思われている騎士団員は自信をなくすんじゃないか? 大丈夫なのか?
……というか、俺も教わりたくないな。シュゼット姉様は脳筋だから、自分に出来るんだから俺も出来るとか思ってそうだ。
自分でちょっとずつ体を鍛えていくつもりだったのに、シュゼット姉様が父上達に話をつけてしまったせいで、俺の毎日のスケジュールに訓練の時間が加えられてしまった。
さらに俺の不安は的中した。シュゼット姉様は思った以上にスパルタだった。
まずは体を鍛えるために、ひたすら走り込みをさせられた。最初は頑張らないとキツイくらいの距離と時間で設定されたが、疲れても息が切れていても最後まで止まることは許されなかった。今まで運動をしていなかったんだから、最初から疲れても仕方がないと思う。
「はぁ、はぁっ……っ……も、もう……むりっ……足、つかれ…た……はぁっ……っ……」
「どうした? まだ少ししか走ってないぞ?」
「はっ……いや、……初めて…こんなにっ……はしったんだよ……はぁー…疲れるでしょ……っ…」
「ふむ……では、一旦休憩にしよう」
そこでしばらく休憩が許された。ベンチに座って用意された水分を取って十分に休憩をとった。
「さて、もう休憩は十分だろう。再開しようか」
「わかった。次は何を?」
「決まっているだろう。最初からやり直しだ」
「は? やり直しって?」
「途中で走るのを諦めただろう? それでは強くなれない! だから――」
「いや、あの、強くなりたいとか思ってないんだけど……」
「今日の目標を達成するまで、間に休憩を何度挟んでも良いが、休憩後には最初からやり直して最後まで達成するんだ! 大丈夫、終わらせるまでは私も付き合おう」
「えぇ?! 終わるまで帰れないってこと? 全然大丈夫じゃないよ! ここまで本格的なのも求めてないから!」
「さぁ、時間も有限なんだ。話をしていないで始めよう」
「ちょっとシュゼット姉様! 話を聞いてよ!」
結局、シュゼット姉様は俺の話を聞いてくれることはなく、スタート位置まで背中を押され、走らされた。最後まで達成しない限り、何度でも休憩を挟んでやり直しをさせると言われた時の絶望感は絶対に忘れない……。やり直しの方が何倍も辛いからと自分に言い聞かせて、キツくても辛くてもなんとか最後までやり遂げた。
走り込みが慣れてくると、今度は木剣でひたすら素振りをさせられた。1日500回だ。もちろん構え方やフォームもしっかりと見られた。少しでもズレると一回分やり直しになるから、実際は500回どころではなかったと思う。腕も痛いし、途中でやめたくなったけど、走り込みの時と同じように途中でやめるのは危険だと感じて、根性でなんとか乗り切った。
走り込みも素振りも慣れてくると、距離や回数、そして、より負荷がかかる方法が追加されていった。毎日夜はクタクタになって、早い時間から眠ってしまった。
体の基礎が少しずつ出来てくると、剣の構えや技、避け方など、剣術の基礎を体でも覚えさせられた。最初は姉様の攻撃を避けたり躱したりも出来ずにたくさん打ち込まれた。木剣だから切れることはなくても、痛いものは痛いし、痣や傷も出来た。いつもシュゼット姉様にボロボロにされていた。
正解かどうかは別として、体の鍛え方はなんとなく理解したし、これ以上は耐えられないというか、耐えたくないと思って、姉様へ今後の訓練をお断りする伝言を侍従に頼んだ。もちろん俺は騎士団の訓練場に行かなかった。
そうしたら、シュゼット姉様が部屋にまで来て、連れて行かれた。毎回逆らってはいるけれど、全く敵わない。それが何度も繰り返されて、諦めることを諦めた。シュゼット姉様には成人しても力では勝てない気がする……。
そして、正妃のアルレット様に男の子が産まれたことで、王位継承順位第一位がフェルナンになり、俺は順位が下がりスペアとなった。将来は臣籍降下する可能性が高まったことで、少し考えを改めた。
日々のシュゼット姉様との模擬戦で、相変わらずシュゼット姉様に打ち込まれて傷が絶えないが、こんなにも耐えてきたのだ。そしてこれからも相手をさせられるだろう。これはもう騎士団に入るということも視野に入れるべきだろう。入りたいかは別として、騎士になれば、これまでの地獄のような日々や苦労が報われるのではないかと思った。
シュゼット姉様に鍛えられて、確かに体力や筋力はついた。剣の腕も上がっていることには感謝する。だけど、シュゼット姉様には本当に文句を言いたい!!
可愛い弟に一切の手加減もなしで、一方的に攻撃を打ち込んで「体で覚えろ! 頑張って避けろ!」は、ホントあり得ないから! 俺は姉様のサンドバッグじゃないんだよ!!
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