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第1章 到達確率0.00001%の未来
優先順位第2位を処理
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「アンタが、さっきみてぇなボロクソの身体になった最初の原因が、その年齢の後あたりにあったんだろうよ。先に言っとくけど、アンタの見てくれは、今日以降、くたばることが出来る日までその姿で固定だかんな? そのつもりで色々覚悟して生きろよ?」
「えっ⁈ どういうこと⁈」
「どう言うもこう言うもねぇわアホんだら‼︎ この〈英雄〉遺伝子発現しとらんイズ見りゃ当然の判断だろ⁈」
言っていること自体は分かるけれど、その内容と意味が何1つ理解できない言葉に藤峰が質を重ねると、祀刕は物凄く不機嫌そうにその質問へと答えながら幼馴染みの少年をズビシィッと勢いよく指差して続ける。
「身体の仕上がり具合だって半人前の16分の1以下だ。そんな状況で、この拠点唯一の〈英雄〉であるアンタに戦場の最前線から消えてもらっちゃ困るんだよ‼︎」
守護者高等学校の〈戦士〉科に入学したばかりな筈の祀刕が、まるで現場を幾度も体験している歴戦の勇士であるかのように、そう言い切った。
確かに各方面から体調を憂慮され、その実、余命宣告まで受けていた藤峰が現場の最前線から離脱することになれば、この拠点唯一の〈英雄〉が戦場から居なくなるのと意味は同じだ。
それは、この拠点に暮らす誰もが、何より避けたい現実ではあったけれど……こんな理解し難い方法でそれを回避出来るだなんて、誰が考えただろう?
「ねぇ、さーくん? 僕が〈英雄〉遺伝子を発現してないって、どう言うこと? 僕………〈無発現症〉なんだよ? 守護者だって、普通科にギリギリ受かっただけなの、さーくんも知ってる筈だよね?」
やや俯いて、認めたくない自分自身の現実を口にしなくてはならない苦痛に肩を震わせながら伍耶が、それを主張する。
〈無発現症〉とは、注入された「幻想遺伝子」が、持って生まれた元々の遺伝子に受け入れられることなく成長してしまうことで起きる “遺伝子不活性症状” を指している。
各拠点にとってそれは「幻想遺伝子」が齎した人類の “新たな闇の側面” とも言える現象を人々の間に生み出していた。
それは減少の一途を辿る人類にとって、一方的に守られることしか出来ない「旧型人類」の存在を許容しなければならないという現実によって起こる差別意識が出来上がってしまった大元の原因。
その上で “大した能力は発現出来なかったけど〈無発現症〉の「旧型人類」よりはマシ” といった後ろ向きな安心感を得る為の暗黙的な心の身分制度が大人と子供の別なく社会全体に浸透してしまっていることを表していた。
そうした肩身の狭い思いをする少数の人々を “役に立たないんだから見下していい存在なんだ” と考える者達が使う代名詞とも言える症状名が、この〈無発現症〉だったのだ。
「それよー? 3歳ン時に受けた〈戦士〉遺伝子検査で下された診断じゃねぇのか?」
「……うん」
伍耶の訴えにも近い確認の文節を耳にして光る本を捲っていた祀刕の手が止まり、視線だけを向けられながら返って来た逆質問に戸惑いながらも伍耶は是を紡いだ。
何でそんな意地悪なこと聞くんだろう。
父母を除けば、1番知られたくなかった相手である祀刕に、それでも検査の直後、それをちゃんと報告した筈なのに。
そんな思いが伍耶の心を支配する。
「俺の世界のイズもそうだったんだけどよ。お前〈英雄〉遺伝子検査、受けてねぇんじゃねぇのか?」
だが、当の祀刕からは、謝罪の言葉も納得した言葉も返って来ることなく、妙な枕詞がついた自分の愛称と共に、まるでそれを確信しているかのような質問が、再び投げかけられた。
「受けてないよ。だって、確率的に持ってる訳ないし、検査費高いからやめた方がいいってお医者さんに言われて」
「何だって⁈ 何処のヤブ医者ですか⁈ 〈英雄〉遺伝子検査と〈戦士〉遺伝子検査は、同時にかけるのが拠点政府の制定した検査規定なのにあり得ません! 後で検査科行って受けて来なさい! 話し通して手続きしときますから! いいですね⁈」
「えっ? あ、はい……」
祀刕と伍耶の話しにギョッとした風情で割り込んで来た医師の勢いと発言に気圧されて、思わず是を返した伍耶だったが、その瞳と表情はこれまで信じ込んでいた「自分」に対する急激な変化が起こりつつあるのを感じて、激しく揺れ動いていた。
(さーくん、何で今更こんなこと言うの? お父さん達の手前、君は僕を蔑んだりはしなかったけど、それでも〈無発現症〉の僕に〈戦士〉として強い部類の能力を得てしまった自分が、どう接していいかわらないって言ってたじゃないか。それで僕達、ずっとギクシャクしてたのに……)
「ま。これに関しちゃ、決まりを守らねぇヤブ医者に、かけられなくてもいい負担を長期に渡ってかけられてたって話しになるだけさ。訴えたら確実に勝てっから、どうすんのかはイズの好きにしろ」
そんな伍耶の思いを知ってか知らずか、自分にも彼にも責任の所在はないのだとばかり、祀刕はそのこと自体をキッパリと言い捨てた。
「ンなことより、今、お前の中で眠ったままになっちまってる〈英雄〉遺伝子が何かの拍子に暴走発現でもしたら、そっちの方が余っ程ヤバいっつの。お前の身体、確実にブッ壊れて植物状態待ったなしになっからな? 身体自体が得られる能力に耐えられるレベルになるまで、一旦、封印かけて閉じるぞ? どうせ、検査自体にゃ影響ねぇし」
「えっ⁈ ま、待って!」
「待てねぇ」
自分が〈英雄〉遺伝子持ちだという話しすら、すぐには受け入れ難かったのに、それを更に封印すると言われて焦った様子を見せる伍耶に頓着することなく、左手で彼の頭を鷲掴みした祀刕が指示名を唱える。
「〈栄光封印〉!」
「わっ!」
伍耶の額から鳩尾辺りにかけて、縦一直線に発された光が、胸の中心へと収束し、再び彼の中へと戻って行く。
その時、伍耶の頭の中へ「カチッ」と施錠されたような音が響いた。
(えっ? 何か、今、凝った首鳴らした時みたいに身体の中からカチッて音が聞こえたよ⁈ ……もしかして、今のが、さーくんの言ってた封印ってヤツ? じゃ、ホントに僕の中に〈英雄〉遺伝子があったってこと……?)
自分は、本当に〈無発現症〉じゃなかったのかもしれない。
体調不良を理由に近々の引退説まで実しやかに囁かれていたドラゴン・ヒーロー、藤峰を一瞬で若返って力漲る青年にしてしまったのだって、目の前で見た現実なのだから、自分が〈英雄〉遺伝子を持っていると言い切っていることだって、本当なんじゃないだろうか。
祀刕が得たらしい新たな力が何なのか、この光る本が見えることくらいしか分からないけれど、それでも。
〈無発現症〉であることを告げても自分のことを蔑みもしなければ、見下すことも虐めてくることもなく、静かに距離をとっていた祀刕が、こうして急激に動き始めて、自分の為に告げてくれた、その言葉を信じてみたかった。
「一先ず俊さんとイズはこれでよし、と。後は何だ?」
病室内の戸惑いと困惑を綺麗に無視した祀刕が、再び光る本のページを繰る。
「……あー……これ、氷美子さんと蓮兄か……」
独り言のように呟かれたその2つの名に藤峰は、再びギクリ、と背を強張らせた。
緊張から鋭敏になってしまった感覚の所為もあってか、近くに居た医師と看護士2人が、ゴックリと固唾を飲み込んだ音すら往年の力を取り戻しているらしい聴覚が拾い上げてしまう。
この2人は、病院勤務の関係者として拠点を代表する〈戦士〉の1人である円出 氷美子が置かれている状況を知っている筈だった。
「うわ! やべぇな、これ。ショウの家、氷美子さんが居っからギリ纏まってんのに冗談キツイぜ⁈」
あの光る本には、自分や彼女の家族、そして病院関係者や〈戦士〉協会の上層部しか知らない情報まで記されているのだろうか?
そんな疑問が藤峰の脳裏を過っている間に祀刕は、とっとと寝台の上から床へと降り立ち、自分の胸元に右手を当てて指示名を唱えた。
「〈初級回復〉!」
真っ白な光が祀刕の右手から胸元へと移って行って、彼の負っていた微細な傷を瞬く間に癒してしまったのが見える。
それを視線だけで確認した祀刕は、病院のスリッパを足先に引っ掛けて、病室の出口へ向かった。
その様子に慌てたのは藤峰だけではなく、室内の誰もが一緒だった。
「ちょ、ちょっと祀刕、待ちなさい! あなた一体……っ⁈」
藤峰や伍耶以上に何が起こっているのか、全く理解出来ない母親が、そう言って彼を引き止めようとしたけれど。
「説明は全部、後、後! 氷美子さん、このまんま放っといたら後、1時間保たねぇで死んじまうっつの」
「ええっ⁈」
確かに彼女は今、集中治療室で24時間体制の完全管理下に居るけれど、それは対外的に伏せられている事実だった。
「祀刕君、どうやってそれを? 何より、氷美ちゃんが、1時間保たないってどういうことなんだい⁈」
「ちッ、メンドクセーな、もう。どうしても知りたきゃ俺について来て、テメェの目で確かめりゃいいだろ? 時間ねぇんだよ」
藤峰の言葉にも歩みを止めることのなかった祀刕の傍に一定の高さと位置を保ってついて行く光る本。
もう彼は、それを手で持つことすらしていなかった。
「ま、待って、さーくん!」
1番最初に動き出した伍耶に触発されて、室内に居た者達は1人残らず祀刕の後を追っていた。
「えっ⁈ どういうこと⁈」
「どう言うもこう言うもねぇわアホんだら‼︎ この〈英雄〉遺伝子発現しとらんイズ見りゃ当然の判断だろ⁈」
言っていること自体は分かるけれど、その内容と意味が何1つ理解できない言葉に藤峰が質を重ねると、祀刕は物凄く不機嫌そうにその質問へと答えながら幼馴染みの少年をズビシィッと勢いよく指差して続ける。
「身体の仕上がり具合だって半人前の16分の1以下だ。そんな状況で、この拠点唯一の〈英雄〉であるアンタに戦場の最前線から消えてもらっちゃ困るんだよ‼︎」
守護者高等学校の〈戦士〉科に入学したばかりな筈の祀刕が、まるで現場を幾度も体験している歴戦の勇士であるかのように、そう言い切った。
確かに各方面から体調を憂慮され、その実、余命宣告まで受けていた藤峰が現場の最前線から離脱することになれば、この拠点唯一の〈英雄〉が戦場から居なくなるのと意味は同じだ。
それは、この拠点に暮らす誰もが、何より避けたい現実ではあったけれど……こんな理解し難い方法でそれを回避出来るだなんて、誰が考えただろう?
「ねぇ、さーくん? 僕が〈英雄〉遺伝子を発現してないって、どう言うこと? 僕………〈無発現症〉なんだよ? 守護者だって、普通科にギリギリ受かっただけなの、さーくんも知ってる筈だよね?」
やや俯いて、認めたくない自分自身の現実を口にしなくてはならない苦痛に肩を震わせながら伍耶が、それを主張する。
〈無発現症〉とは、注入された「幻想遺伝子」が、持って生まれた元々の遺伝子に受け入れられることなく成長してしまうことで起きる “遺伝子不活性症状” を指している。
各拠点にとってそれは「幻想遺伝子」が齎した人類の “新たな闇の側面” とも言える現象を人々の間に生み出していた。
それは減少の一途を辿る人類にとって、一方的に守られることしか出来ない「旧型人類」の存在を許容しなければならないという現実によって起こる差別意識が出来上がってしまった大元の原因。
その上で “大した能力は発現出来なかったけど〈無発現症〉の「旧型人類」よりはマシ” といった後ろ向きな安心感を得る為の暗黙的な心の身分制度が大人と子供の別なく社会全体に浸透してしまっていることを表していた。
そうした肩身の狭い思いをする少数の人々を “役に立たないんだから見下していい存在なんだ” と考える者達が使う代名詞とも言える症状名が、この〈無発現症〉だったのだ。
「それよー? 3歳ン時に受けた〈戦士〉遺伝子検査で下された診断じゃねぇのか?」
「……うん」
伍耶の訴えにも近い確認の文節を耳にして光る本を捲っていた祀刕の手が止まり、視線だけを向けられながら返って来た逆質問に戸惑いながらも伍耶は是を紡いだ。
何でそんな意地悪なこと聞くんだろう。
父母を除けば、1番知られたくなかった相手である祀刕に、それでも検査の直後、それをちゃんと報告した筈なのに。
そんな思いが伍耶の心を支配する。
「俺の世界のイズもそうだったんだけどよ。お前〈英雄〉遺伝子検査、受けてねぇんじゃねぇのか?」
だが、当の祀刕からは、謝罪の言葉も納得した言葉も返って来ることなく、妙な枕詞がついた自分の愛称と共に、まるでそれを確信しているかのような質問が、再び投げかけられた。
「受けてないよ。だって、確率的に持ってる訳ないし、検査費高いからやめた方がいいってお医者さんに言われて」
「何だって⁈ 何処のヤブ医者ですか⁈ 〈英雄〉遺伝子検査と〈戦士〉遺伝子検査は、同時にかけるのが拠点政府の制定した検査規定なのにあり得ません! 後で検査科行って受けて来なさい! 話し通して手続きしときますから! いいですね⁈」
「えっ? あ、はい……」
祀刕と伍耶の話しにギョッとした風情で割り込んで来た医師の勢いと発言に気圧されて、思わず是を返した伍耶だったが、その瞳と表情はこれまで信じ込んでいた「自分」に対する急激な変化が起こりつつあるのを感じて、激しく揺れ動いていた。
(さーくん、何で今更こんなこと言うの? お父さん達の手前、君は僕を蔑んだりはしなかったけど、それでも〈無発現症〉の僕に〈戦士〉として強い部類の能力を得てしまった自分が、どう接していいかわらないって言ってたじゃないか。それで僕達、ずっとギクシャクしてたのに……)
「ま。これに関しちゃ、決まりを守らねぇヤブ医者に、かけられなくてもいい負担を長期に渡ってかけられてたって話しになるだけさ。訴えたら確実に勝てっから、どうすんのかはイズの好きにしろ」
そんな伍耶の思いを知ってか知らずか、自分にも彼にも責任の所在はないのだとばかり、祀刕はそのこと自体をキッパリと言い捨てた。
「ンなことより、今、お前の中で眠ったままになっちまってる〈英雄〉遺伝子が何かの拍子に暴走発現でもしたら、そっちの方が余っ程ヤバいっつの。お前の身体、確実にブッ壊れて植物状態待ったなしになっからな? 身体自体が得られる能力に耐えられるレベルになるまで、一旦、封印かけて閉じるぞ? どうせ、検査自体にゃ影響ねぇし」
「えっ⁈ ま、待って!」
「待てねぇ」
自分が〈英雄〉遺伝子持ちだという話しすら、すぐには受け入れ難かったのに、それを更に封印すると言われて焦った様子を見せる伍耶に頓着することなく、左手で彼の頭を鷲掴みした祀刕が指示名を唱える。
「〈栄光封印〉!」
「わっ!」
伍耶の額から鳩尾辺りにかけて、縦一直線に発された光が、胸の中心へと収束し、再び彼の中へと戻って行く。
その時、伍耶の頭の中へ「カチッ」と施錠されたような音が響いた。
(えっ? 何か、今、凝った首鳴らした時みたいに身体の中からカチッて音が聞こえたよ⁈ ……もしかして、今のが、さーくんの言ってた封印ってヤツ? じゃ、ホントに僕の中に〈英雄〉遺伝子があったってこと……?)
自分は、本当に〈無発現症〉じゃなかったのかもしれない。
体調不良を理由に近々の引退説まで実しやかに囁かれていたドラゴン・ヒーロー、藤峰を一瞬で若返って力漲る青年にしてしまったのだって、目の前で見た現実なのだから、自分が〈英雄〉遺伝子を持っていると言い切っていることだって、本当なんじゃないだろうか。
祀刕が得たらしい新たな力が何なのか、この光る本が見えることくらいしか分からないけれど、それでも。
〈無発現症〉であることを告げても自分のことを蔑みもしなければ、見下すことも虐めてくることもなく、静かに距離をとっていた祀刕が、こうして急激に動き始めて、自分の為に告げてくれた、その言葉を信じてみたかった。
「一先ず俊さんとイズはこれでよし、と。後は何だ?」
病室内の戸惑いと困惑を綺麗に無視した祀刕が、再び光る本のページを繰る。
「……あー……これ、氷美子さんと蓮兄か……」
独り言のように呟かれたその2つの名に藤峰は、再びギクリ、と背を強張らせた。
緊張から鋭敏になってしまった感覚の所為もあってか、近くに居た医師と看護士2人が、ゴックリと固唾を飲み込んだ音すら往年の力を取り戻しているらしい聴覚が拾い上げてしまう。
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「うわ! やべぇな、これ。ショウの家、氷美子さんが居っからギリ纏まってんのに冗談キツイぜ⁈」
あの光る本には、自分や彼女の家族、そして病院関係者や〈戦士〉協会の上層部しか知らない情報まで記されているのだろうか?
そんな疑問が藤峰の脳裏を過っている間に祀刕は、とっとと寝台の上から床へと降り立ち、自分の胸元に右手を当てて指示名を唱えた。
「〈初級回復〉!」
真っ白な光が祀刕の右手から胸元へと移って行って、彼の負っていた微細な傷を瞬く間に癒してしまったのが見える。
それを視線だけで確認した祀刕は、病院のスリッパを足先に引っ掛けて、病室の出口へ向かった。
その様子に慌てたのは藤峰だけではなく、室内の誰もが一緒だった。
「ちょ、ちょっと祀刕、待ちなさい! あなた一体……っ⁈」
藤峰や伍耶以上に何が起こっているのか、全く理解出来ない母親が、そう言って彼を引き止めようとしたけれど。
「説明は全部、後、後! 氷美子さん、このまんま放っといたら後、1時間保たねぇで死んじまうっつの」
「ええっ⁈」
確かに彼女は今、集中治療室で24時間体制の完全管理下に居るけれど、それは対外的に伏せられている事実だった。
「祀刕君、どうやってそれを? 何より、氷美ちゃんが、1時間保たないってどういうことなんだい⁈」
「ちッ、メンドクセーな、もう。どうしても知りたきゃ俺について来て、テメェの目で確かめりゃいいだろ? 時間ねぇんだよ」
藤峰の言葉にも歩みを止めることのなかった祀刕の傍に一定の高さと位置を保ってついて行く光る本。
もう彼は、それを手で持つことすらしていなかった。
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