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第7章 ファイアースライムブロッカシア
完全に舐められてる
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地図の赤い丸は彼等が今居る場所と丁度、沼を挟んだ反対側だった。
リクアルドは、どう動くべきか素早く判断を下し、無言のまま自分を右手の人差し指で指差して胸元を2回トントン、と叩いてから左回りの円弧を描く。
次にトゥラガルドを指差して沼の右側から赤い丸がある方へ指先を動かす。
ここはそんなに大きな沼ではなく、オズワルドの家であろう建物があった場所の泉よりは大きいだろうと思われる程度だったので、2人で挟み撃ちを敢行出来るレベルだと踏んだのだ。
頷いて右手に回ったトゥラガルドとほぼ同時にリクアルドも左手側に走り出す。
地図魔法で大体の位置は把握していたが、相手も生き物だからここから更に移動することもあるだろう。
リクアルドは感覚として大分、位置が近づいただろうと思った所で足を止め、慎重に距離を詰めようとして……耳に届いた音に足を止めた。
派手にガッサガッサ枝葉の音を立てながら「このっ!」「おのれっ!」とか言ってる声が聞こえてくるのに目の上が平らになるのを止められない。
「……何してんだ? あのオッサン」
どうやら先に相手と遭遇して、こっち側に追い込みながら攻防を続けて居たらしいと言うことだけは察したけれど、いかんせん緊張感がどっかに消え去っている空気しか感じられなくて、リクアルドは訝しむのをやめることが出来ないまま声のする方へ向かって茂みを分け行った。
ファイアーブロッカシア。
通常では、赤の体皮にピンクとオレンジの縞模様が入った多様種のカメレオンに似た外見をしてる。
リクアルドの身長より頭2つ分くらい小さい個体が多いが、そんなナリでも立派な魔獣だ。
そして、この魔獣の何が1番厄介かと言うとファイアースライムという炎系のスライムと共生してる所だった。
しかもお互いがただ一方的に相手の生態が自分にとってメリットになるという形の共生ではなく、キッチリと連携してくる所が、この魔獣の特に面倒臭い所だった。
口からビョッと伸ばされた舌の勢いに乗って高い木の枝に引っ付いたファイアースライムが、縮む動きに合わせてブロッカシアの身体が宙を舞い、そこを捕まえようとするとファイアースライムが縮む動きを変えないまま、グッと身体を折り曲げる。
するとブロッカシアの身体は予想していた軌道を変えて木の枝に向かうことになり、捕まえようとしていたトゥラガルドが伸ばした手は空を切ることになる。
「ちょこまかと!」
などと宣いながら、その実、動く玩具で遊んでる猫の背中を彷彿とさせる動きでトゥラガルドとファイアースライムブロッカシアの攻防は続く。
それは例えるならば「捕らえる動き!」「回避した!」「肉球虎パンチ!」「華麗に躱した!」とでも表記出来そうな光景としてリクアルドの目の前で展開されていて。
(あの、緩急つけた “伸びっ!” “縮みっ!” “ちょっとずつ引っ込み……ピュッと隠れっ!” “静止っ! ……から~の、小刻み左右揺れ長距離一気逃げっ!” って動き……猫科の連中弱いんだよなぁ。狩猟本能刺激されんのか、大人になってからも絶対引っかかるもんな……つか、あの魔獣絶対、ワザとやってるよな)
スライム+カメレオンなので、姿が隠れる時はカメレオン部分だけではなく、スライムごと見えなくなる。
その逆もしかりで、カメレオン部分が捕まりそうになると今見ているみたいにスライム部分が伸び縮みして距離を取ったり、火の玉をブレスみたいにして敵へと吐き出すことでカメレオン部分を逃したりする。
けれど、魔獣はトゥラガルドと距離を取りこそすれ、逃亡する素振りを全く見せなかったので。
「なぁ、オッサン。どうでもいいけどよ。アンタ絶対ぇ遊ばれてね?」
「お前もどうだ? 楽しいぞー! わっはっはっはっは‼︎」
「いや、そんなキラキラした目で童心に返ることを全力推奨されてもさ? 俺、アンタほど歳食ってねぇから返れるほどの年月ねぇっつーの」
細かいことは気にしないでファイアースライムブロッカシアに遊んでもらうのもテなのかもしんないけどな、と考えかけたリクアルドだったが。
『けたけたけたけたけたけたけたけた』
スライム部分が出しているのか、カメレオン部分が出しているのか謎でしかない音が、どうしても馬鹿にしている笑い声に聞こえてしょうがないリクアルドは、ノリ遅れて気持ちが冷めたみたいな気分を味わいながら、完全にトゥラガルドを舐めきっている様子で空中遊泳を楽しむファイアースライムブロッカシアを座り込んで眺めることにしたのだった。
リクアルドは、どう動くべきか素早く判断を下し、無言のまま自分を右手の人差し指で指差して胸元を2回トントン、と叩いてから左回りの円弧を描く。
次にトゥラガルドを指差して沼の右側から赤い丸がある方へ指先を動かす。
ここはそんなに大きな沼ではなく、オズワルドの家であろう建物があった場所の泉よりは大きいだろうと思われる程度だったので、2人で挟み撃ちを敢行出来るレベルだと踏んだのだ。
頷いて右手に回ったトゥラガルドとほぼ同時にリクアルドも左手側に走り出す。
地図魔法で大体の位置は把握していたが、相手も生き物だからここから更に移動することもあるだろう。
リクアルドは感覚として大分、位置が近づいただろうと思った所で足を止め、慎重に距離を詰めようとして……耳に届いた音に足を止めた。
派手にガッサガッサ枝葉の音を立てながら「このっ!」「おのれっ!」とか言ってる声が聞こえてくるのに目の上が平らになるのを止められない。
「……何してんだ? あのオッサン」
どうやら先に相手と遭遇して、こっち側に追い込みながら攻防を続けて居たらしいと言うことだけは察したけれど、いかんせん緊張感がどっかに消え去っている空気しか感じられなくて、リクアルドは訝しむのをやめることが出来ないまま声のする方へ向かって茂みを分け行った。
ファイアーブロッカシア。
通常では、赤の体皮にピンクとオレンジの縞模様が入った多様種のカメレオンに似た外見をしてる。
リクアルドの身長より頭2つ分くらい小さい個体が多いが、そんなナリでも立派な魔獣だ。
そして、この魔獣の何が1番厄介かと言うとファイアースライムという炎系のスライムと共生してる所だった。
しかもお互いがただ一方的に相手の生態が自分にとってメリットになるという形の共生ではなく、キッチリと連携してくる所が、この魔獣の特に面倒臭い所だった。
口からビョッと伸ばされた舌の勢いに乗って高い木の枝に引っ付いたファイアースライムが、縮む動きに合わせてブロッカシアの身体が宙を舞い、そこを捕まえようとするとファイアースライムが縮む動きを変えないまま、グッと身体を折り曲げる。
するとブロッカシアの身体は予想していた軌道を変えて木の枝に向かうことになり、捕まえようとしていたトゥラガルドが伸ばした手は空を切ることになる。
「ちょこまかと!」
などと宣いながら、その実、動く玩具で遊んでる猫の背中を彷彿とさせる動きでトゥラガルドとファイアースライムブロッカシアの攻防は続く。
それは例えるならば「捕らえる動き!」「回避した!」「肉球虎パンチ!」「華麗に躱した!」とでも表記出来そうな光景としてリクアルドの目の前で展開されていて。
(あの、緩急つけた “伸びっ!” “縮みっ!” “ちょっとずつ引っ込み……ピュッと隠れっ!” “静止っ! ……から~の、小刻み左右揺れ長距離一気逃げっ!” って動き……猫科の連中弱いんだよなぁ。狩猟本能刺激されんのか、大人になってからも絶対引っかかるもんな……つか、あの魔獣絶対、ワザとやってるよな)
スライム+カメレオンなので、姿が隠れる時はカメレオン部分だけではなく、スライムごと見えなくなる。
その逆もしかりで、カメレオン部分が捕まりそうになると今見ているみたいにスライム部分が伸び縮みして距離を取ったり、火の玉をブレスみたいにして敵へと吐き出すことでカメレオン部分を逃したりする。
けれど、魔獣はトゥラガルドと距離を取りこそすれ、逃亡する素振りを全く見せなかったので。
「なぁ、オッサン。どうでもいいけどよ。アンタ絶対ぇ遊ばれてね?」
「お前もどうだ? 楽しいぞー! わっはっはっはっは‼︎」
「いや、そんなキラキラした目で童心に返ることを全力推奨されてもさ? 俺、アンタほど歳食ってねぇから返れるほどの年月ねぇっつーの」
細かいことは気にしないでファイアースライムブロッカシアに遊んでもらうのもテなのかもしんないけどな、と考えかけたリクアルドだったが。
『けたけたけたけたけたけたけたけた』
スライム部分が出しているのか、カメレオン部分が出しているのか謎でしかない音が、どうしても馬鹿にしている笑い声に聞こえてしょうがないリクアルドは、ノリ遅れて気持ちが冷めたみたいな気分を味わいながら、完全にトゥラガルドを舐めきっている様子で空中遊泳を楽しむファイアースライムブロッカシアを座り込んで眺めることにしたのだった。
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