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第1章 ウィムンド王国編 2
竜種の種別 -2-
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映し出されている丘陵のあちこちでは、猪に見た目は似通っているけれど、頭の前中心と鼻筋の上に大きな角を生やし、分厚い深緑の鱗皮を鎧のように纏った巨大な個体が、のっしのっしと重量感たっぷりに歩き、低木に生っている木の実を葉や小枝ごと銜えてブチ切り、磨り潰すような口の動きで食んでいた。
幅の大きな川は、水深もそれなりにあるらしく、長い首を伸ばした青灰色の個体が群れで川上へと移動し、時折、水中へ頭を突っ込んで上げた時には凍った大きな魚を口に銜えていた。
空を飛んでいるのは、クォールンドラコに似た個体だが、体色が緑がかっていて尻尾の先に尖った棘状の物が生えていた。
「ここまでで何となく分かったかもしれぬが、同じような型の竜で色や模様が違うもの、環境に順応する形で多少の形態変化は見て取れても同じ種類の竜なのではないか、と思えるようなものが居たと思う。それが端的に通常種、亜種、変異種、希少種の区分わけを意味する」
話しながら紫板を指先で叩き、もう1枚光板を出したアーウィンは、そこにパッと見、色違いとしか判断出来ない竜を4体映し出した。
「比較をするのに、よく引き合いに出されるのが、この大型種の代表格と言われる生息数の多さを誇る火竜の1種だ。火山竜 プレアリオラス 通常種。見ての通り黒の混じった濃い赤の鱗を持ち、空を飛んで火のブレスを吐く。これが亜種になると体色が紫となって、火のブレスに毒素の煙が加わる」
「えっ⁈ パッと見、色違いにしか見えないのに、能力自体が変わっちゃうんですか⁈」
しかもブレスに関しては、物自体が変わるのではなく追加変更という極悪さで、思わずバリナが驚きの声を上げた。
「そうだ。その理由は主に生息地と摂取している食事による差異であることが判明している。隣に表示されておる変異種の体色が青、希少種が金色なのもその為だ」
生息地と摂取している食事によって体色が変わるというのは、昆虫類や鳥類にもあることなのは知っていたが、それがよもや竜種にも当て嵌まる物だとは毛程も思っていなかった。
「んー……差し詰め、通常種が火山、亜種が毒性のある沼とか湿地帯、変異種は青いから海、とか? 希少種は……金脈のある鉱山、とか? そんな感じですかね?」
「察しが良いな。その通りだ。種別名もそれに併せて毒沼竜、浅海竜、金床竜と変化してゆく」
スライの予想を肯定したアーウィンは、それぞれの竜につけられている種別名を口にして続ける。
「小型竜から大型竜までの竜種に共通しているのは、生息年月が5千年未満であり、同種の見た目に先程上げた程度の変化しかないこと。影響を及ぼすことの出来る内容が、所持能力や生息・生態域を基点としていること。それを自身で完全に制御可能なこと。但し、周辺環境への影響は限定的且つ、一時的なものであることが上げられる」
つまる所、神代古龍ではなく、古竜でもない大型の竜であれば、その場を去った段階で現れていた様々な影響は殆ど消えて元に戻るということだろう。
「対して、古竜種になるとこの共通点が大幅に崩れることとなる。生息年は5千年以上10万年未満、同種の見た目にさしたる変化がないことは竜種としての共通事項だが、古竜ではない大型種には持ち得ない特殊能力やスキルを所持するようになり、且つ、周辺環境への影響は自身を中心とした限定範囲しか制御出来ず、そこに居る、または居た、と言うだけで継続的に広範囲の環境へ影響を及ぼしてしまうこととなる」
「影響が残るのは……困りますなぁ」
「物によるが、歓迎は出来ん影響だろうしなぁ。殿下、その影響とやらが残るは、どのくらいの期間となりますかな?」
フリュヒテンゴルト公爵とベントレー子爵は、自領の領主として考えれば、為政者としての側面も持っているからだろう。
本気でやめて欲しい、みたいな語感で感想と質問を溢す。
「最短で5年、最長で30年程という記録が残っている」
「30年……」
淡、と告げられた記録という名の残酷な事実に思わずベントレー子爵が眉間を人差し指と親指の第2関節で摘み押す仕草をしながら呻くように呟いた。
「此度、この地に来ることはないが、神代古竜種なぞ居るだけで環境そのものが完全に変化して、其奴が居やすいように作り替えてしまうのだから、それに比べればまだマシだろう。私がこの国へ飛ばされる切掛となったヴォルガニアレガース亜種なぞ、棲んでいた島が丸ごと溶岩島と化していたぞ」
アーウィンの言葉にヴォルガニアレガースを知るローガンとベントレー子爵が、それぞれの経験から納得の空気を醸し出すものの、目が何処か遠くなっている辺り、決して歓迎されるべき変化ではなかったのだろうことだけはスライやバリナにも伺い知ることが出来た。
「永年変化と30年以内の限定変化、ですか。どちらも遠慮しておきたい所ですが、いつしか戻るというのならば、戻ってくれる方が良いことは確かですなぁ」
フリュヒテンゴルト公爵が諦めた感の漂う声音で言ったことにアーウィンが、やや苦みの伴った笑みを面に浮かべた。
「まぁ、30年経ったら急に戻ると言うのではなく、30年かけて徐々に戻ると言う方が正確だからな。それに比べれば一過性の物でしかない、ただの大型竜が齎す影響なぞ、微々たるものであろうよ?」
「そりゃあまぁ、そうですけど……通常種の段階で吹雪みたいな氷の嵐に地震と衝撃波。必要ステータスなんか冒険者級がAの者とて届くか怪しい数値ですし。既に次の亜種っていう竜がどんな竜なのか聞くのが怖いですよ」
「だが、報告せねばならぬ相手が居る以上、教えなければ困るのは公爵と子爵だからな」
「まぁ、それはそうなんですがね……」
レンリアードが言葉にして示したことは、この場の者達が大なり小なり抱いている本音に近い心情だった。
アーウィン曰く、想定外の出来事であったらしいが、それでも……この計略とやらを考えて、剰え実行してくれやがったヤツだけは、ふんじばってタコ殴りにしなければ気が済まない。
それだけはミューニャとフェリシティアを除いた騎士団組の偽りない決意だった。
「騎士バリナ。他に竜種について知っておきたいことはあるかね?」
「あ、はい! 竜そのものって言うより、竜の使う魔法についてなんですが、4つしか魔法属性が知られていない上に上級魔法とか使える人が殆どいないウチの国では、相殺とか対抗とか無理っぽいのは何となく分かるんですが……やっぱり、4属性以外の魔法を今更、知って、練習して、少しでも竜に対抗出来るようになる、とかって、短期間じゃ出来ないですよね?」
「ふむ。この大陸や国自体のレベルがどの程度なのか分からぬゆえ、断言は出来ぬが、恐らく、希少種までなら上手くゆけば対抗出来るやも……」
「誠にございますか⁈」
バリナの質問したことが、馬車の中でベントレー子爵と交わした目指すべきこの国の未来像、その内容と合致していたが為に思わずフリュヒテンゴルト公爵は、椅子から立ち上がって半透明の水色に光る板へ腰掛けているアーウィンへと詰め寄った。
「古竜からは、竜語魔法を始め、無属性の上位魔法が含まれる時空間属性や扱える者が極端に少ない星属性の魔法を特異技能で持つ竜が存在するゆえ、対竜種の経験がないこの国で初手から相手取るのは勧められぬが、大型種までなら……今から頑張れば、2……いや、3竜目くらいには、どうにかこうにか間に合う程度にはなれるやも……?」
「素質や素養のありそうな者に殿下が手解きくださるのですか?」
「やるとなれば、必然的にそうなるだろうな」
「!」
問われたことへ、他にやりようがあるまい、とばかりに告げられた内容で最初に反応したのはフェリシティアだった。
「わ、わたくし! その知識や魔法を得とうごさいます!」
下の集会所でもその話しが出た時には、是非、知りたいと思っていた気持ちを抑えることが出来ず、成り行きとは言え国から指名された侍女であるという己の立場も、この時ばかりは綺麗に頭の中からスッ飛んでいた。
「あの! こんなことを申しましたなら、自惚れと思われるやもしれませんが、これでも学生時代は卒業までずっと首席でしたし! 座学も魔法も得意でしたわ!」
「ニャー! だったらミューニャもやりたいのニャー!」
「平民でも出来るなら私もやりたいですっ!」
フェリシティアの主張にミューニャとバリナが、ハイハイ! とばかりに立ち上がって手を上げながら立候補した。
「俺も! 贅沢言えるなら魔法だけじゃなくて、ちゃんとした剣術も! ヴェルザリスでは3歳から習えるって聞いたし!」
「そういうことでしたら私も! 何と言っても森妖精ですからね、私! 弓と魔法への適性は高い筈ですよ!」
「ふむ。儂も参加したいのう。この老骨にまだ重ねる知識や技術があるならば研鑽あるのみじゃて」
アーウィンについて国を出ると早々に決めていたメンバーは、我も我もと希望を口にしだして、ベントレー子爵は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「……………」
ヴェルザリスの知識や技術を習う人間が、誰もこの国に残らないとは、此は如何に⁈
いやいや、これを叩き台にして報告すれば、学園の指導要綱改善や騎士団、魔法師団の訓練内容を変更することも……いや、違う、待て。
そもそも存在の価値が上がってしまうことになるだろうこのメンバーを国が手放すのか?
んー……王女・王子・宰相派がそれでも排斥を考える理由はゴマンとある。
自分より能力の高い者への嫉妬が何より強い彼等なら、結局は変わらない可能性も……?
フリュヒテンゴルト公爵とベントレー子爵が脳内だけで考えを巡らせているのを尻目に期待の眼差しを向けられ続けていたアーウィンが、意を決してしまったらしく、頷いた。
「よかろう。では、皆の中で現状1番自由のききそうな……フェリシティア嬢」
「っ!」
「先ずは、そなたから。この会議が終わり次第、早速、手解きを始めるとしよう」
「はいっ! よろしくお願い致します!」
喜色満面。
貴族令嬢としては、本来あるまじきことかもしれないが、フェリシティアの表情と声音には、それがハッキリと現れていた。
「……さて。他に竜種の基本的なことについて、分からぬことはないか?」
「何が分からないかってこと自体が、分かんないかもしれないから、また疑問が出て来たら殿下に聞くのニャ」
ミューニャの言葉に国外脱出予定組が全員、強く首肯した。
「そうか。……ならば、そろそろ本題の話しをまた進めるとしようか?」
「はい!」
フリュヒテンゴルト公爵とベントレー子爵の逡巡や躊躇いに気付いてはいるのか、ほんの少しだけ2人へと目を向けてからアーウィンは、目の前のパネルに視線を戻し、紫板を指先で叩き出した。
幅の大きな川は、水深もそれなりにあるらしく、長い首を伸ばした青灰色の個体が群れで川上へと移動し、時折、水中へ頭を突っ込んで上げた時には凍った大きな魚を口に銜えていた。
空を飛んでいるのは、クォールンドラコに似た個体だが、体色が緑がかっていて尻尾の先に尖った棘状の物が生えていた。
「ここまでで何となく分かったかもしれぬが、同じような型の竜で色や模様が違うもの、環境に順応する形で多少の形態変化は見て取れても同じ種類の竜なのではないか、と思えるようなものが居たと思う。それが端的に通常種、亜種、変異種、希少種の区分わけを意味する」
話しながら紫板を指先で叩き、もう1枚光板を出したアーウィンは、そこにパッと見、色違いとしか判断出来ない竜を4体映し出した。
「比較をするのに、よく引き合いに出されるのが、この大型種の代表格と言われる生息数の多さを誇る火竜の1種だ。火山竜 プレアリオラス 通常種。見ての通り黒の混じった濃い赤の鱗を持ち、空を飛んで火のブレスを吐く。これが亜種になると体色が紫となって、火のブレスに毒素の煙が加わる」
「えっ⁈ パッと見、色違いにしか見えないのに、能力自体が変わっちゃうんですか⁈」
しかもブレスに関しては、物自体が変わるのではなく追加変更という極悪さで、思わずバリナが驚きの声を上げた。
「そうだ。その理由は主に生息地と摂取している食事による差異であることが判明している。隣に表示されておる変異種の体色が青、希少種が金色なのもその為だ」
生息地と摂取している食事によって体色が変わるというのは、昆虫類や鳥類にもあることなのは知っていたが、それがよもや竜種にも当て嵌まる物だとは毛程も思っていなかった。
「んー……差し詰め、通常種が火山、亜種が毒性のある沼とか湿地帯、変異種は青いから海、とか? 希少種は……金脈のある鉱山、とか? そんな感じですかね?」
「察しが良いな。その通りだ。種別名もそれに併せて毒沼竜、浅海竜、金床竜と変化してゆく」
スライの予想を肯定したアーウィンは、それぞれの竜につけられている種別名を口にして続ける。
「小型竜から大型竜までの竜種に共通しているのは、生息年月が5千年未満であり、同種の見た目に先程上げた程度の変化しかないこと。影響を及ぼすことの出来る内容が、所持能力や生息・生態域を基点としていること。それを自身で完全に制御可能なこと。但し、周辺環境への影響は限定的且つ、一時的なものであることが上げられる」
つまる所、神代古龍ではなく、古竜でもない大型の竜であれば、その場を去った段階で現れていた様々な影響は殆ど消えて元に戻るということだろう。
「対して、古竜種になるとこの共通点が大幅に崩れることとなる。生息年は5千年以上10万年未満、同種の見た目にさしたる変化がないことは竜種としての共通事項だが、古竜ではない大型種には持ち得ない特殊能力やスキルを所持するようになり、且つ、周辺環境への影響は自身を中心とした限定範囲しか制御出来ず、そこに居る、または居た、と言うだけで継続的に広範囲の環境へ影響を及ぼしてしまうこととなる」
「影響が残るのは……困りますなぁ」
「物によるが、歓迎は出来ん影響だろうしなぁ。殿下、その影響とやらが残るは、どのくらいの期間となりますかな?」
フリュヒテンゴルト公爵とベントレー子爵は、自領の領主として考えれば、為政者としての側面も持っているからだろう。
本気でやめて欲しい、みたいな語感で感想と質問を溢す。
「最短で5年、最長で30年程という記録が残っている」
「30年……」
淡、と告げられた記録という名の残酷な事実に思わずベントレー子爵が眉間を人差し指と親指の第2関節で摘み押す仕草をしながら呻くように呟いた。
「此度、この地に来ることはないが、神代古竜種なぞ居るだけで環境そのものが完全に変化して、其奴が居やすいように作り替えてしまうのだから、それに比べればまだマシだろう。私がこの国へ飛ばされる切掛となったヴォルガニアレガース亜種なぞ、棲んでいた島が丸ごと溶岩島と化していたぞ」
アーウィンの言葉にヴォルガニアレガースを知るローガンとベントレー子爵が、それぞれの経験から納得の空気を醸し出すものの、目が何処か遠くなっている辺り、決して歓迎されるべき変化ではなかったのだろうことだけはスライやバリナにも伺い知ることが出来た。
「永年変化と30年以内の限定変化、ですか。どちらも遠慮しておきたい所ですが、いつしか戻るというのならば、戻ってくれる方が良いことは確かですなぁ」
フリュヒテンゴルト公爵が諦めた感の漂う声音で言ったことにアーウィンが、やや苦みの伴った笑みを面に浮かべた。
「まぁ、30年経ったら急に戻ると言うのではなく、30年かけて徐々に戻ると言う方が正確だからな。それに比べれば一過性の物でしかない、ただの大型竜が齎す影響なぞ、微々たるものであろうよ?」
「そりゃあまぁ、そうですけど……通常種の段階で吹雪みたいな氷の嵐に地震と衝撃波。必要ステータスなんか冒険者級がAの者とて届くか怪しい数値ですし。既に次の亜種っていう竜がどんな竜なのか聞くのが怖いですよ」
「だが、報告せねばならぬ相手が居る以上、教えなければ困るのは公爵と子爵だからな」
「まぁ、それはそうなんですがね……」
レンリアードが言葉にして示したことは、この場の者達が大なり小なり抱いている本音に近い心情だった。
アーウィン曰く、想定外の出来事であったらしいが、それでも……この計略とやらを考えて、剰え実行してくれやがったヤツだけは、ふんじばってタコ殴りにしなければ気が済まない。
それだけはミューニャとフェリシティアを除いた騎士団組の偽りない決意だった。
「騎士バリナ。他に竜種について知っておきたいことはあるかね?」
「あ、はい! 竜そのものって言うより、竜の使う魔法についてなんですが、4つしか魔法属性が知られていない上に上級魔法とか使える人が殆どいないウチの国では、相殺とか対抗とか無理っぽいのは何となく分かるんですが……やっぱり、4属性以外の魔法を今更、知って、練習して、少しでも竜に対抗出来るようになる、とかって、短期間じゃ出来ないですよね?」
「ふむ。この大陸や国自体のレベルがどの程度なのか分からぬゆえ、断言は出来ぬが、恐らく、希少種までなら上手くゆけば対抗出来るやも……」
「誠にございますか⁈」
バリナの質問したことが、馬車の中でベントレー子爵と交わした目指すべきこの国の未来像、その内容と合致していたが為に思わずフリュヒテンゴルト公爵は、椅子から立ち上がって半透明の水色に光る板へ腰掛けているアーウィンへと詰め寄った。
「古竜からは、竜語魔法を始め、無属性の上位魔法が含まれる時空間属性や扱える者が極端に少ない星属性の魔法を特異技能で持つ竜が存在するゆえ、対竜種の経験がないこの国で初手から相手取るのは勧められぬが、大型種までなら……今から頑張れば、2……いや、3竜目くらいには、どうにかこうにか間に合う程度にはなれるやも……?」
「素質や素養のありそうな者に殿下が手解きくださるのですか?」
「やるとなれば、必然的にそうなるだろうな」
「!」
問われたことへ、他にやりようがあるまい、とばかりに告げられた内容で最初に反応したのはフェリシティアだった。
「わ、わたくし! その知識や魔法を得とうごさいます!」
下の集会所でもその話しが出た時には、是非、知りたいと思っていた気持ちを抑えることが出来ず、成り行きとは言え国から指名された侍女であるという己の立場も、この時ばかりは綺麗に頭の中からスッ飛んでいた。
「あの! こんなことを申しましたなら、自惚れと思われるやもしれませんが、これでも学生時代は卒業までずっと首席でしたし! 座学も魔法も得意でしたわ!」
「ニャー! だったらミューニャもやりたいのニャー!」
「平民でも出来るなら私もやりたいですっ!」
フェリシティアの主張にミューニャとバリナが、ハイハイ! とばかりに立ち上がって手を上げながら立候補した。
「俺も! 贅沢言えるなら魔法だけじゃなくて、ちゃんとした剣術も! ヴェルザリスでは3歳から習えるって聞いたし!」
「そういうことでしたら私も! 何と言っても森妖精ですからね、私! 弓と魔法への適性は高い筈ですよ!」
「ふむ。儂も参加したいのう。この老骨にまだ重ねる知識や技術があるならば研鑽あるのみじゃて」
アーウィンについて国を出ると早々に決めていたメンバーは、我も我もと希望を口にしだして、ベントレー子爵は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「……………」
ヴェルザリスの知識や技術を習う人間が、誰もこの国に残らないとは、此は如何に⁈
いやいや、これを叩き台にして報告すれば、学園の指導要綱改善や騎士団、魔法師団の訓練内容を変更することも……いや、違う、待て。
そもそも存在の価値が上がってしまうことになるだろうこのメンバーを国が手放すのか?
んー……王女・王子・宰相派がそれでも排斥を考える理由はゴマンとある。
自分より能力の高い者への嫉妬が何より強い彼等なら、結局は変わらない可能性も……?
フリュヒテンゴルト公爵とベントレー子爵が脳内だけで考えを巡らせているのを尻目に期待の眼差しを向けられ続けていたアーウィンが、意を決してしまったらしく、頷いた。
「よかろう。では、皆の中で現状1番自由のききそうな……フェリシティア嬢」
「っ!」
「先ずは、そなたから。この会議が終わり次第、早速、手解きを始めるとしよう」
「はいっ! よろしくお願い致します!」
喜色満面。
貴族令嬢としては、本来あるまじきことかもしれないが、フェリシティアの表情と声音には、それがハッキリと現れていた。
「……さて。他に竜種の基本的なことについて、分からぬことはないか?」
「何が分からないかってこと自体が、分かんないかもしれないから、また疑問が出て来たら殿下に聞くのニャ」
ミューニャの言葉に国外脱出予定組が全員、強く首肯した。
「そうか。……ならば、そろそろ本題の話しをまた進めるとしようか?」
「はい!」
フリュヒテンゴルト公爵とベントレー子爵の逡巡や躊躇いに気付いてはいるのか、ほんの少しだけ2人へと目を向けてからアーウィンは、目の前のパネルに視線を戻し、紫板を指先で叩き出した。
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