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第1章 ウィムンド王国編 2
抜かれた毒気 -3-
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「会議中にすまん! 大至急、受付嬢のミューニャに確認してくれとギルマスから要請を受けたんだ! ここを開けてくれ!」
殴打に近しい勢いを持った激しいノックと共にそう告げられた言葉にフェリシティアはアーウィンを窺い見て、頷いた彼の意を汲んで会議室の扉を開いた。
「ありがとう! ミューニャっ……あ! アーウィン殿下もここに居た!」
室内へと足を踏み入れた冒険者としては比較的良い装備を着込んだ男は、扉を開けてくれたフェリシティアへの礼もそこそこに室内を見回して、最終的な目標人物であったアーウィンの姿を認めるとその傍へと駆け寄った。
「正式には初めましてです、アーウィン殿下。俺は黄昏の翼っていうパーティのリーダーやってるB級冒険者で、クラリオンって言います」
アーウィンの目の前で片膝をついたクラリオンと名乗った青年は、微妙に常体と敬体が入り混じったような挨拶をして頭を下げた。
「試験闘技場で公開されてる “アレ” の下に現れた看板に神殿のシスターが触っちまって……ああ、いえ、触ってしまいまして。頭の上にバッテンと文字みたいのが浮き出てきて、意識がない状態です。なんで、ギルマスがミューニャに殿下の居場所を聞いて来いって指示が出ました。会議中申し訳ありませんが、ご足労願ってもいいですか?」
「そうか。誤って看板に触れてしまったという理解でよいのか?」
確認するようにアーウィンから発せられた言葉にクラリオンは一瞬、言い淀み、視線を彷徨わせてから左上に視線を投げた。
「あ……いえ。えっと……たまたまその時、俺も見てたんですけど……四角の中にいる連中と同じことを死んだら神殿の連中もされるんだ、ざまぁ、とかいいながらケラケラ笑ってて、不意に、もう疲れちゃったから地獄に連れてって、とかいいながら、両手で叩くみたいにして看板に触ってたんで……本人的には、自殺みたいな感覚だったんじゃないかと……個人的には思うんですけど……?」
見て聞いていたままを感想混じりで報告しているのは間違いないようだ。
対するアーウィンも口元へ緩く握った右手の親指横を押し付けながら何かを思案している。
「なぁ。そのシスターってもしかして、エリザベスか?」
「ああ。そうだ」
「騎士スライ。何か心当たりが?」
「あ、はい。俺がここに来る直前、神殿で彼女に会ったんですけど」
「乳繰り合ってたニャ」
「心当たりはそこじゃなくて、その前だっつの!」
ツッコミなのか合いの手だったのかサクッと絶妙なタイミングで入って来たミューニャの台詞を否定するより先に該当ヶ所の訂正をかけたスライへと女性陣の白い視線が向けられる。
「ああ、いや、だから……彼女が、そう言う行為に走る理由みたいなのをその時に口走ってまして、今の、自分から地獄に行っちまったみたいな話しが補完出来そうかなって」
「どのような話しだったのか、聞いても?」
「まぁ……大凡、今、地獄で責苦に合ってる連中に女達がされたのと同じ理由です」
流石に被害内容自体を本人の承諾なく勝手にベラベラ喋ってしまうことが躊躇われたのだろうスライが、やや濁した言い方でアーウィンの類推に頼るような発言をすることで彼への問いに答えを返した。
「なるほど。そのシスターの魂をどうするかは、ザッハラウデン殿次第となるが、身体の保護は念の為にしておいた方がよさそうだ。すまぬが一旦、席を外すぞ」
「いや。我々も同行いたしますぞ、殿下」
腰を下ろしていた椅子から立ち上がったアーウィンにそう断りを入れてローガンが自席を立つ。
「そうですね。ギルドの敷地内とは言え、団長も師団長もいらっしゃらないんですから、可能な限り殿下から目を離さないようにしないと何があるか分かりませんからね!」
「あ! 今、試験闘技場にはギルマスの案内で貴族院の役員連中がいるんで、俺もその方がいいと思う! あ、いや、思います! はい!」
レンリアードがローガンの判断に同意して告げたことにクラリオンが自ら重要情報をリークしてくれた。
だが、その告げられた内容自体にはローガンとレンリアードは勿論、スライもバリナも嫌そうに「うげっ」と呻き声のような物を漏らしていた。
「そういうことなら、貴族なんざクソ喰らえな冒険者ギルド受付嬢のミューニャがいないと話しになんないニャね!」
「及ばすながら、わたくしも。海軍伯の娘でございますし。何より、陛下から直々に殿下へ便宜を図るよう申し遣っておりますので」
権力外組織の申し子と海路に於ける移動と輸出入の保安権・戦闘権・監視権を持つ海軍伯、その御令嬢。
貴族院がナンボのもんじゃ、とでも言い出しかねない空気を纏った2人の娘を先頭に会議室の一同は、部屋を出て試験闘技場を目指すことになった。
殴打に近しい勢いを持った激しいノックと共にそう告げられた言葉にフェリシティアはアーウィンを窺い見て、頷いた彼の意を汲んで会議室の扉を開いた。
「ありがとう! ミューニャっ……あ! アーウィン殿下もここに居た!」
室内へと足を踏み入れた冒険者としては比較的良い装備を着込んだ男は、扉を開けてくれたフェリシティアへの礼もそこそこに室内を見回して、最終的な目標人物であったアーウィンの姿を認めるとその傍へと駆け寄った。
「正式には初めましてです、アーウィン殿下。俺は黄昏の翼っていうパーティのリーダーやってるB級冒険者で、クラリオンって言います」
アーウィンの目の前で片膝をついたクラリオンと名乗った青年は、微妙に常体と敬体が入り混じったような挨拶をして頭を下げた。
「試験闘技場で公開されてる “アレ” の下に現れた看板に神殿のシスターが触っちまって……ああ、いえ、触ってしまいまして。頭の上にバッテンと文字みたいのが浮き出てきて、意識がない状態です。なんで、ギルマスがミューニャに殿下の居場所を聞いて来いって指示が出ました。会議中申し訳ありませんが、ご足労願ってもいいですか?」
「そうか。誤って看板に触れてしまったという理解でよいのか?」
確認するようにアーウィンから発せられた言葉にクラリオンは一瞬、言い淀み、視線を彷徨わせてから左上に視線を投げた。
「あ……いえ。えっと……たまたまその時、俺も見てたんですけど……四角の中にいる連中と同じことを死んだら神殿の連中もされるんだ、ざまぁ、とかいいながらケラケラ笑ってて、不意に、もう疲れちゃったから地獄に連れてって、とかいいながら、両手で叩くみたいにして看板に触ってたんで……本人的には、自殺みたいな感覚だったんじゃないかと……個人的には思うんですけど……?」
見て聞いていたままを感想混じりで報告しているのは間違いないようだ。
対するアーウィンも口元へ緩く握った右手の親指横を押し付けながら何かを思案している。
「なぁ。そのシスターってもしかして、エリザベスか?」
「ああ。そうだ」
「騎士スライ。何か心当たりが?」
「あ、はい。俺がここに来る直前、神殿で彼女に会ったんですけど」
「乳繰り合ってたニャ」
「心当たりはそこじゃなくて、その前だっつの!」
ツッコミなのか合いの手だったのかサクッと絶妙なタイミングで入って来たミューニャの台詞を否定するより先に該当ヶ所の訂正をかけたスライへと女性陣の白い視線が向けられる。
「ああ、いや、だから……彼女が、そう言う行為に走る理由みたいなのをその時に口走ってまして、今の、自分から地獄に行っちまったみたいな話しが補完出来そうかなって」
「どのような話しだったのか、聞いても?」
「まぁ……大凡、今、地獄で責苦に合ってる連中に女達がされたのと同じ理由です」
流石に被害内容自体を本人の承諾なく勝手にベラベラ喋ってしまうことが躊躇われたのだろうスライが、やや濁した言い方でアーウィンの類推に頼るような発言をすることで彼への問いに答えを返した。
「なるほど。そのシスターの魂をどうするかは、ザッハラウデン殿次第となるが、身体の保護は念の為にしておいた方がよさそうだ。すまぬが一旦、席を外すぞ」
「いや。我々も同行いたしますぞ、殿下」
腰を下ろしていた椅子から立ち上がったアーウィンにそう断りを入れてローガンが自席を立つ。
「そうですね。ギルドの敷地内とは言え、団長も師団長もいらっしゃらないんですから、可能な限り殿下から目を離さないようにしないと何があるか分かりませんからね!」
「あ! 今、試験闘技場にはギルマスの案内で貴族院の役員連中がいるんで、俺もその方がいいと思う! あ、いや、思います! はい!」
レンリアードがローガンの判断に同意して告げたことにクラリオンが自ら重要情報をリークしてくれた。
だが、その告げられた内容自体にはローガンとレンリアードは勿論、スライもバリナも嫌そうに「うげっ」と呻き声のような物を漏らしていた。
「そういうことなら、貴族なんざクソ喰らえな冒険者ギルド受付嬢のミューニャがいないと話しになんないニャね!」
「及ばすながら、わたくしも。海軍伯の娘でございますし。何より、陛下から直々に殿下へ便宜を図るよう申し遣っておりますので」
権力外組織の申し子と海路に於ける移動と輸出入の保安権・戦闘権・監視権を持つ海軍伯、その御令嬢。
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