凡人高校生

ゆるだら公

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凡人高校生

8話

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「あー!大ちゃん!蓮見!何2人でいるんだよ!」

校門に着くと、そこには腕を組んでムスッとした顔の満が突っ立っていた。2人を見つけた途端、待ちくたびれたと、大声を出していた。

「ごめんごめん。ちょっと大と話してて」

「むー。……何話してたんだよ」

「部活のことだよ」

蓮見が満を宥めてやると、満はどこかほっとした顔で大を見やった。
その視線に、大も笑って返してあげた。

「ていうか蓮見お前。部活途中でどっか行きやがって。しかも大ちゃんと油を売るなんて」

その言葉に、大は驚愕した。今の満のセリフが正しければ、蓮見は部活を途中に抜け出してまで自分を待っていたことになる。

(…いや、流石に他のところにも行っただろ)

うんうんと、自分の考えがあっていろと心の中で唱え続けた。

(…忘れよ)

先程のことを考えれば考えるほど、頭が混乱して疲労が溜まる。なので大は、他のことを考えて忘れることにした。

(…よし。去年水泳の授業で溺れかけた満を想像しよう)

これで大は、無事疲れを感じずに家に帰ることが出来た。



_____✻✻_____



__数分前

「ねぇ先輩。さっきの人、なんだったんでしょうね」

「あ?誰のことだよ」

大より先に帰った創造部部員の、姫野と朝霧。年はひとつ違うが、友達がもういなかったのと、部活が一緒という理由で、姫野は朝霧にくっついて帰っていた。

「ほら居たじゃないですか。空き教室廊下の曲がり角ら辺に」

「……あー、言われてみれば。…て、なんで俺様がお前なんかと会話成立してんだよ」

今まで忘れていたのか、朝霧はハッと我に返り、普段の狂暴な目付きに変わった。

「いいじゃないですか、朝霧せーんぱい♡」

「……キメェ」

「あー!今最低の発言しましたね!明日大先輩に報告して説教させてやる!」

「知らねぇよそんなこと。勝手にしろ」

あざと可愛く朝霧に接したら、静かな罵倒と軽蔑の目線が返ってきたので、姫野は頬を膨らませた。
しかし、彼の性格を、姫野はまだ日が浅いのに理解していたので、このまま怒っても何も変わらないと思い、今は素直に引いてあげた。

「もう。というか話に戻りますけど、あの人のことをすぐ忘れるなんて。
先輩はもっと、他人を知るべきなんじゃないですか?」

「…あ゛?誰に向かってそんなこと言ってんだ。つか、なんでそんな話になる」

年下にアドバイスを受けて、さらに苛立ちが湧き上がってきた朝霧。
姫野は、この怒りは日常茶飯事なので、別段怖がるわけでもなく、スルーしてそのまま話し続けた。

「だってあの人。学校で有名な3年の蓮見先輩ですよ。スポーツ万能容姿端麗頭脳明晰ようしたんれいずのうめいせき。オマケに温厚篤実おんこうとくじつ。人間の憧れを全て詰め込んだ才能の塊みたいな人ですよ」

「…ようしたんれい…ずのう……つまりどういうことだ」

姫野が四字熟語やら色々言葉に表すせいで、読むよりも難しく聞こえてしまう。もちろんそれを朝霧が理解出来るわけなく、それっぽいことを言って誤魔化していた。…それも誤魔化しきれていなかったのだが。

「…要するに、全て完璧ってことです。顔もいいしみんなに優しくスタイル抜群。成績も毎回上位な、よく漫画に出てくるキャラクターですよ。僕たち凡人とは違うんです」

姫野はもう、ため息をつくのを諦めるほどに呆れ返っており、突っ込むのさえも面倒くさくなっていた。

「…ふーん、そうなのか」

姫野の話に熱が冷めたのか、彼はもう興味をなくしていた。初めから興味があったのかすらもわからないのだが。

「…本当にずるいですよね。…高校生で身長180センチなんて…!」

「そこかよ」

逆に姫野には熱が入ってきており、悔しい気持ちで蓮見のことを思い浮かべていた。

「…僕はまだ成長期。これから伸びるんだ。伸びるはずなんだ!…多分!」

「自分で言って自信なくすなよ」

こんな一面もあるのかと、朝霧は少しばかり目を丸くした。確かに、姫野は高校1年生の平均よりは低い方だろう。
朝霧の頭に、背の順で1番前に並んでいる姫野の姿が浮かび上がった。

完全に気が緩んでいたせいか、笑いが込み上げて、思わず朝霧は噴いてしまった。
それに姫野もびくりと体を震わせて視線を向けた。朝霧の状態を見て、彼は顔から火が出そうだった。

「あッ笑いましたね先輩!身体侮辱です!大先輩に言いつけます!」

「…はは。好きにしろよ、マジで」

姫野はまだ許してはいないが、朝霧のレアな笑い顔が見れたので、今日のところは大に報告だけで、これ以上は何も言わなかった。

「…てか、いつまで着いてくるんだ、お前。もう俺の家見えてんだけど」

もう結構長い時間歩いているのに、まだ帰り道が一緒だと、朝霧も疑いの目を隠しきれなかった。
その言葉に姫野はキョトンとした顔をして、そして小さく可愛げのある微笑みを見せた。

姫野は少し駆け足でアスファルトを蹴り、朝霧の方へ振り返った。
夕日の真っ赤な光が姫野を眩しく照らしていた。

姫野は大きな声で、朝霧に返事を返した。

「だって、先輩と僕の家、向かい側じゃないですか!」

「……ッはぁ!!?」

驚きの事実に、流石の朝霧も表情が顔に出てしまい、急いで駆け出していった。
自分の家の真正面の家の苗字を確認する。

「……姫、野…」

「そうですもんね~。先輩他人には興味無いんですもんね~」

本当に朝霧の発言が合っていたと証明された時間だった。

「じゃあね先輩!また明日♡」

最後はしっかりとあざとく終わらせた姫野であった。
朝霧はその場で突っ立っており、手を顔に当ててため息をついた。今この瞬間、朝霧は自分の短所が何か思い知らされた気がした。

「…クソッ。調子狂うな…」

ため息混じりに出た言葉は、音のない風と共に空へと飛んで消えていった。
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