ぼっち勇者 〜僕も仲間がほしい!!〜

ゆるだら公

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ぼっち勇者 〜僕も仲間がほしい!!〜

7話

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__会議室

「ねぇ、魔王様~?教えてくださいよー」

「………」

会議室では、ゼロにとって今世紀最大のピンチが訪れていた。

「私も鬼ではないんです。正直に言ってくれればそれでいいんです。
無防備でそこそこ顔がいい勇者を襲ったんですよね?どうなんです?」

「だから!襲ってなどいない!事故だと言っている!!」

ゼロは今すぐ逃げ出したいが、専用の拷問器具に座らされているのでそうもいかない。
逃げようと椅子から体を離すと、魔力という魔力が一瞬で吸収されてしまうのだ。

「…そうですか。ではなぜあの時、動けなくなった勇者を倒さずに部屋へと連れ込んだんですか?」

「っ!?」

初め、ゼロが勇者を連れていこうとした時に現れた男はネクだったのだ。

「敵同士なのに何故助けたのですか?メリットこちらに1つもありませんよねぇ」

「そ、それは………………あ、アイツが仲間がほしいと言っていたから!!」

「……仲間?」

その単語に、ネクも首を傾げる。敵同士の間柄でその単語が出てくるのは意外だったからだろう。

「……アイツは、……5年前から今までずっとぼっちだったらしい」

「なッッ…!」

「しかも影が薄すぎて、肩に触れないとみなは振り返ってくれないと」

「そ、それは………なんとも悲惨な…」

あんなに活発で年中駄々をこねてそうな勇者は、普段は誰からも気づかれない悲しい奴なのだ。それでも彼は前向きにここまで来たのだ。

「だから、人間じゃないけど…勇者の仲間になってやろうかと…」

「…魔王様…。…わかりました。ならいいです。その椅子ももう電源切っておりますので、どうぞ行ってください」

「あぁ、ありがとな」

そう言ってクールに手を振ったゼロは、会議室を出た。

(…………………あっぶねーーーッッ!!殺されるところだったッ!アイツ怒るとクソ怖いんだよなぁ…。勇者の昔話無駄にちゃんと聞いてた甲斐があったわ…)

どうやら魔王は魔王。勇者を盾にして身の安全を守ったということだ。考えがゲスい。

(はぁ、なんか体力がゲッソリ削り取られたな…。玉座の間に行って落ち着こ)

初めて勇者と出会った玉座の間に着くと、ゼロは高級な魔王専用の椅子に腰を下ろした。

「ん~~、落ち着く~~…」

「あ、よう魔王。さっきは散々だったな」

「……勇者?何故ここに」

「料理食べ終わったから、あのネクって奴に皿片付けてもらおうと探したら、なんかここに出た」

満腹になって全回復した勇者がゼロに近づく。

「あ、おい。その階段上るならまず一礼しろ。そういう決まりだ」

「え~、5段くらいしかないのに~?」

「当たり前だ…!」

ゼロが怒鳴ると、勇者はむっと顔を膨らませながらも小さく礼をして階段を上る。
前まで来ると勇者は足を止め、ゼロをじっと見下ろした。

「…?なんだ勇者。俺より高いところから俺を見るな。ムカつく」

「…わがままだな、この魔王」

「お前が言うな」

「……なぁ、魔王」

ブーメランなセリフを言った勇者は、急に真剣な趣でゼロを呼んだ。

「……なんだ?」

いきなりの表情変化にゼロもビクリと身体を震わせ、無意識に顔を上げ勇者に視線を合していた。

「……僕さ、もう無理なんだ…」

「……え?」

「もう、離れられないんだ…」

「ゆ、勇者……?」

突然クールなイケメンを発揮してきたので、ゼロもドキッとしてしまう。

「…大好きすぎて、どうにかなっちゃう。……あの部屋の居心地の良さに…」

「……へ?」

そういうこと?と、ゼロはぽかんと口を開けて呆然とする。するとまた、1つのドアから声が聞こえてきた。

「なるほど。もう両思いでしたか。それなら話は早いですね」

「こ、この声は……!!?」

「はい、魔王様の第1臣下のネクでーす。まさか魔王様がそちら側とは思いもしませんでしたよ」

「…え?そちら側って…。!?ち、違う!!そういう事じゃない!!最後のコイツの言葉聞いてたか!?」

「さぁ?生憎私は耳がよくないので。
勇者さんが大好きすぎてと言ったのは聞こえましたけど」

「あれも結構声ちっちゃかったぞ!!?」

この返事に、ネクはニコッと笑っておいた。そして2人に近づいていく。

「あのネクって奴。都合の悪いことは聞こえない体質だぞ……」

「そんな体質あるかッッ!!」

ゼロが勇者にツッコム。気がつけばネクは2人のすぐそばにいた。

「ひッ……どうしたんだ…?俺の忠実なる臣下よ……」

「はい。私は魔王様に忠実な臣下です。なので、魔王様が仰ったことには素直に従います」

「…そ、そうか…」

いつものネクだと、安堵したのも束の間。
なんとネクは2人に魔法をかけたのだ。

「は!!?おい何をする!ネク!」

「うわ~めっちゃきれ~」

「お前が1番驚け!!」

2人のすぐ下になんらかの魔法陣が描かれ、光が分散する。

「魔王様が、先程勇者さんのお仲間になりたいと仰っていたので、それを叶えて差し上げようかと」

「え、いやそれは違くて……はは」

笑って誤魔化そうとするが、それはもう遅く、2人の前に1枚の紙が出現した。

「?………これは?」

「契約書です。今後、魔王様と勇者さんはお仲間同士仲良く過ごしていくということを書かせて頂きました」

「はぁ!!?いや俺はコイツと仲良くなんか…!」

「?仲間という文字に仲良しの仲入ってますよね?そういうことを見越して言ったとばかり思っていたのですが…」

ただの言い逃れをこんなにも真剣に受け止めている臣下を見ると、流石のゼロにも罪悪感が湧いた。
しかも、彼は今、自分の思考を読み取って行動をしている。
もしそれが違うとわかったら、「え、魔王様ってその程度の者だったのですね。失望しました」となってしまうかもしれない。それはまずかった。

「ま、まぁ、それも考えていた気がするししなくもないがな…」

「ならよかったです~。じゃ、魔王様のお言葉をいただけたので、契約成立ですね」

「え、いやいいとは一言も…」

言った時にはもう、2人の左手の薬指には銀色に輝く指輪がはめられていた。

「……マジか」

「はい!契約完了です。おめでとうございます、お2人共」

「なんか綺麗な指輪だなー。ちなみになんで左の薬指なんだ?僕の街では、薬指に指輪をつけるのは__」

「わあぁぁあ!!!」

勇者が言いかけると、ゼロは顔を紅潮させてその言葉を遮った。

「契約書がそこが1番いいと判断したのでしょう。よかったですね」

「その契約って、どんな効果があるんだ?」

「はい。まず、契約違反は絶対にしてはいけません。これが最低事項です」

ネクがニコニコでそう告げると、逆に汗ダラダラのゼロが、震えた声で尋ねる。

「…えっと、契約内容って、どんなだっけ…」

「今後、魔王様と勇者さんはお仲間同士仲良く過ごしていく。ですね!」

「「…はあぁぁぁあ!!?」」

2人は同時に声を荒らげ目を丸くした。

「はは、開始早々息ぴったりですね~。よかったですよ契約して」

「ふざけるな!すぐにその契約を廃止しろ!」

「契約すると、1年はそのまま実行しなければいけません。そういう決まりです」

「……」

すると今度は、ようやく異常事態だと察した勇者がネクに訊いた。

「…えっと、じゃあ僕は、魔王を倒すことが…」

「できないですね」

「街に戻ることも?」

「できないですね。契約違反ですので」

「わお、鬼畜」

契約のせいで本来の目的すら封じられてしまった。一瞬の沈黙が流れたあと、2人は大声で叫んだ。

「ふざけるな!!1年もこの馬鹿と一緒?有り得ないんだが!?」

「僕も!あの部屋はほしいけど魔王まではほしくないっ!返品!」

「誇り高き魔王をもの扱いしないでくれますーー?」

「そっちこそ!!誇り高き勇者を馬鹿呼ばわりしないで頂きたい」

「ふふ、仲がいいこと」

「「よくない!!」」

こうして、勇者と魔王は契約に縛られながら1年間という長い期間を一緒に過ごすこととなった。

「仲間は仲間でも魔族の仲間はいらーーんッッ!!!」



_____✻✻_____



__そのころアルスでは

「…あの勇者……死んだの。ご愁傷さまじゃ」

1人の魔法使いが、街を出ていった。
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