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彼女の名は

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Side:レックス

「ねぇ、レックス。次の街は何処に行く?」

月光のような白銀の髪の少女が黒髪の男の方を、此方を振り返りながらニコリと尋ねてくる。返り血・・・すら浴びないあまりにも美し過ぎる一閃は魔獣をいとも容易く絶命させた

「そうだね、クルファの街が最寄りかな?物資には余裕もあるけど、シャロもそろそろふかふかのベッドで寝たいでしょ?明日には着くから今日までが野宿だね」

彼女の名はシャーロット=ヘルヴェルミナ。人類最強と名高き勇者。1年前のあの日、一緒に村から出た僕の幼馴染だ

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Side:シャーロット

レックスと共に道無き道を進んで行く。こうしている時間は苦ではなく、むしろレックスと一緒に喋って歩けるので大好きだ
レックス=アルヴェリオ。私の愛しい人
本当は村で愛の巣を築く予定だったのに私の力に目を付けた王国軍と魔王軍・・・がアプローチを仕掛けてきて住めなくなった。優しいレックスの事だから、私が魔王に就任・・しても一緒に来てくれるだろうけど心を痛めるはず。そして何より、魔王としての執務があるからレックスとの時間を確保出来ない。コレが何よりの問題だ。だから私は魔族の使者を切り捨てて勇者として奉られる道を選んだ
魔族の血が流れる私にとって魔獣などただの獣に等しく、もはやドラゴンですら私の敵では無い
しかし、私のというのはふとした時に湧いてくるから用心は重ねなければならない

「レックス。そろそろ野営しない?」

脳内の地図を参照し、頃合いを見て野営を促す。この辺りが丁度いいはずだ、ここで休めば夜にクルファの街に着く。夜も、朝も、昼も、夕方もレックスとの時間を堪能出来る
愛している、だから絶対に逃がさない
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