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おやすみ
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Side:レックス
「ここが……クルファの街か。すっかり夜になっちゃったね」
月明かりと灯火が街を照らしだしている。大きな街なので夜店はまだやっている
「そうだね、宿を早く探して休もうよ」
シャロは疲れたのか、早々と宿を探している。街に来る度に第一目標が宿だから、実は隠れ宿マニアなのかもしれない
「ん、あったね。それじゃあ行こうか」
そんな馬鹿なことを考えていると、シャロは宿に向けて歩き出した。僕達は一応勇者一行ということで、フードを深く被っている
バレたら二重の意味で厄介だから、急ぎつつも不慮の事故が無いように気を配る。幸いにも宿は街の入口に近く、直ぐに着いた
「すみません、二部屋お願いします」
「あ~、すまんね。今日は旅人が多くてね、一部屋しか空いてないんだ」
うーん、困った。別の宿を探してみるか?流石に男女同衾は不味いだろうし……
「それじゃあ────」
「その部屋でお願いします」
断りを入れようと思ったが、シャロが横から口を出して僕の思惑を阻止した。でも、どうしてだろう。理由を聞こうとしても宿屋の主人とやり取りを進めている間に割り込むのは気が引けて流れに身を任せることにした
体感的に五分くらいした所で全ての手続きが終わったらしく、「いこ、レックス」と促された。部屋は二階の角部屋の様だった
「シャロ、どうして別の宿を探さなかったの?」
特に話すことも無かったので、聞きそびれた質問をシャロに投げかける
「この街の他の宿屋が空いているとも限らないし、モタモタしてこの部屋も取られて野宿は嫌でしょ?」
「まぁ、そうだね」
よくよく考えてみればかなり長い間二人で野宿をしているし、無用な気遣いだったのかもしれない。夜食は既に済ませているので濡れたタオルで身体を拭き、ベッドで就寝すれば完璧……なのだが一つ問題が発生した
「ベッド、一つしか無いね」
そう、やはりというかそれが極自然のようにベッドは一つしか存在していなかった。男女が同じ部屋というのもグレーゾーンだが、シングルベッドに二人で寝るのはどう考えても恋人やそれに準ずる関係の所業だろう
「それなら僕は床で寝るよ」
女子を床に寝させることは男としての沽券に関わるのでこれが最善手である。野宿に比べたら暖かい室内で襲撃に警戒せずに寝れることだけでかなりマシだ
「別に同じベッドで寝てもいいんじゃないかな?密着して寝るなんて偶にあったし、今更何も気にする事は無いと思うよ」
「いや、普通に恥ずかしいから良いよ」
こう言っては誤解を招きかねないが、僕だって一応は男の子だ。緊急時はともかく、平時だと流石に恥ずかしい。なるべく頭から締め出すようにしているが、シャロの体型は凶器と言っても差し支えないほどのプロポーションだ。男性を悩殺するために生まれたかのような蠱惑的な肢体を前にいつまで理性を保っていられるかが分からない。いや、何があっても耐えてみせるんだけど
芸術品とすら呼べる男好きする身体は……いや、やめよう。同じことを言葉を変えて延々と言う気がする
「まぁまぁ、折角の宿屋なんだしゆっくり休もうよ。床で寝るよりベッドで寝た方が疲れは取れるでしょう?」
違う意味で元気になってしまうのは男として避けたい。それ故に譲れない
こうして、僕とシャロの緩い口論が始まった
─────────────────
Side:シャーロット
「そこまで言うなら僕の負けだよ……」
五分くらい話し合った後、レックスは遂に折れた。レックスはどのくらい私を意識してくれているのだろうか。単純な男女の倫理観として「恥ずかしい」と述べたのか、女性として意識しての「恥ずかしい」という感情なのか、す……好きな人だから一緒に寝るのが「恥ずかしい」のか……
その……最後だと嬉しいな
「ささ、寝ようよレックス」
ベッドに横たわり、笑顔でレックスを待つ。かなり大胆な事をしているということは自覚している。羞恥心で顔から火が出そうだけど、何とか誤魔化せた……はず
「そう……だね」
悶々としていたようだけど、諦めたようにベッドに横たわる。背中合わせの形になり、背中で彼の気配と体温と感触を味わっている今は幸せで頬が緩んでいるだろう。レックスにこの顔を見られない事を心の底から安堵している。それほどまでに蕩けきっている自信がある
「そ、それじゃあおやすみ。レックス」
ちょっと動揺したけど大丈夫だよね
胸のドキドキが止まらない。あの日から、レックスの為だけに自分を磨いてきた。多くの男性から求愛されたし、多くの女性から賛美を貰った。でも、本当に愛して欲しい人を虜にできているかが分からない
と、色々考えているとゴロンとレックスが寝返りを打つ。となると当然……
「ひゅぅ……」
彼の寝息が首筋にかかって思わず変な声が出てしまった。恥ずかしいような、くすぐったいような変な感じだ
「……すぅ……」
悶々としている此方を他所に、気持ち良さそうに寝息を立てているのが分かる。まだまだ眠れそうにもないので彼の方を向き、その寝顔を堪能する。少し近付けばキスしてしまいそうな程に近いこの距離で、この無防備な寝顔を独占していると考えたらそれだけで幸せな気分になる
そろそろ寝ないと明日に支障が出てしまう。けど、寝顔を堪能していたい。なので、心を空っぽにしてレックスの寝顔を堪能して睡魔に身を任せることにした
「ここが……クルファの街か。すっかり夜になっちゃったね」
月明かりと灯火が街を照らしだしている。大きな街なので夜店はまだやっている
「そうだね、宿を早く探して休もうよ」
シャロは疲れたのか、早々と宿を探している。街に来る度に第一目標が宿だから、実は隠れ宿マニアなのかもしれない
「ん、あったね。それじゃあ行こうか」
そんな馬鹿なことを考えていると、シャロは宿に向けて歩き出した。僕達は一応勇者一行ということで、フードを深く被っている
バレたら二重の意味で厄介だから、急ぎつつも不慮の事故が無いように気を配る。幸いにも宿は街の入口に近く、直ぐに着いた
「すみません、二部屋お願いします」
「あ~、すまんね。今日は旅人が多くてね、一部屋しか空いてないんだ」
うーん、困った。別の宿を探してみるか?流石に男女同衾は不味いだろうし……
「それじゃあ────」
「その部屋でお願いします」
断りを入れようと思ったが、シャロが横から口を出して僕の思惑を阻止した。でも、どうしてだろう。理由を聞こうとしても宿屋の主人とやり取りを進めている間に割り込むのは気が引けて流れに身を任せることにした
体感的に五分くらいした所で全ての手続きが終わったらしく、「いこ、レックス」と促された。部屋は二階の角部屋の様だった
「シャロ、どうして別の宿を探さなかったの?」
特に話すことも無かったので、聞きそびれた質問をシャロに投げかける
「この街の他の宿屋が空いているとも限らないし、モタモタしてこの部屋も取られて野宿は嫌でしょ?」
「まぁ、そうだね」
よくよく考えてみればかなり長い間二人で野宿をしているし、無用な気遣いだったのかもしれない。夜食は既に済ませているので濡れたタオルで身体を拭き、ベッドで就寝すれば完璧……なのだが一つ問題が発生した
「ベッド、一つしか無いね」
そう、やはりというかそれが極自然のようにベッドは一つしか存在していなかった。男女が同じ部屋というのもグレーゾーンだが、シングルベッドに二人で寝るのはどう考えても恋人やそれに準ずる関係の所業だろう
「それなら僕は床で寝るよ」
女子を床に寝させることは男としての沽券に関わるのでこれが最善手である。野宿に比べたら暖かい室内で襲撃に警戒せずに寝れることだけでかなりマシだ
「別に同じベッドで寝てもいいんじゃないかな?密着して寝るなんて偶にあったし、今更何も気にする事は無いと思うよ」
「いや、普通に恥ずかしいから良いよ」
こう言っては誤解を招きかねないが、僕だって一応は男の子だ。緊急時はともかく、平時だと流石に恥ずかしい。なるべく頭から締め出すようにしているが、シャロの体型は凶器と言っても差し支えないほどのプロポーションだ。男性を悩殺するために生まれたかのような蠱惑的な肢体を前にいつまで理性を保っていられるかが分からない。いや、何があっても耐えてみせるんだけど
芸術品とすら呼べる男好きする身体は……いや、やめよう。同じことを言葉を変えて延々と言う気がする
「まぁまぁ、折角の宿屋なんだしゆっくり休もうよ。床で寝るよりベッドで寝た方が疲れは取れるでしょう?」
違う意味で元気になってしまうのは男として避けたい。それ故に譲れない
こうして、僕とシャロの緩い口論が始まった
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Side:シャーロット
「そこまで言うなら僕の負けだよ……」
五分くらい話し合った後、レックスは遂に折れた。レックスはどのくらい私を意識してくれているのだろうか。単純な男女の倫理観として「恥ずかしい」と述べたのか、女性として意識しての「恥ずかしい」という感情なのか、す……好きな人だから一緒に寝るのが「恥ずかしい」のか……
その……最後だと嬉しいな
「ささ、寝ようよレックス」
ベッドに横たわり、笑顔でレックスを待つ。かなり大胆な事をしているということは自覚している。羞恥心で顔から火が出そうだけど、何とか誤魔化せた……はず
「そう……だね」
悶々としていたようだけど、諦めたようにベッドに横たわる。背中合わせの形になり、背中で彼の気配と体温と感触を味わっている今は幸せで頬が緩んでいるだろう。レックスにこの顔を見られない事を心の底から安堵している。それほどまでに蕩けきっている自信がある
「そ、それじゃあおやすみ。レックス」
ちょっと動揺したけど大丈夫だよね
胸のドキドキが止まらない。あの日から、レックスの為だけに自分を磨いてきた。多くの男性から求愛されたし、多くの女性から賛美を貰った。でも、本当に愛して欲しい人を虜にできているかが分からない
と、色々考えているとゴロンとレックスが寝返りを打つ。となると当然……
「ひゅぅ……」
彼の寝息が首筋にかかって思わず変な声が出てしまった。恥ずかしいような、くすぐったいような変な感じだ
「……すぅ……」
悶々としている此方を他所に、気持ち良さそうに寝息を立てているのが分かる。まだまだ眠れそうにもないので彼の方を向き、その寝顔を堪能する。少し近付けばキスしてしまいそうな程に近いこの距離で、この無防備な寝顔を独占していると考えたらそれだけで幸せな気分になる
そろそろ寝ないと明日に支障が出てしまう。けど、寝顔を堪能していたい。なので、心を空っぽにしてレックスの寝顔を堪能して睡魔に身を任せることにした
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