女王ララの再建録 〜前世は主婦、今は王国の希望〜

香樹 詩

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第37話 節約の糸口はシルクスパイダー

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「王女様? 繊維工場で何をするおつもりですか?」

中枢施設を尋ねた翌日。
ララとランゼル、バートンの三人を乗せた馬車は、王都の南側にある繊維工場へ向けて走っていた。

バートンの問いに、ララは楽しそうに答えた。
「シルクスパイダーの糸で織物を作ってもらおうって考えているの」
「あんな細い糸で布を作るのですか?」と、驚いた様子のバートン。
「シルクスパイダーの糸ってそんなに細いの?」
「はい、髪の毛くらいですよ」

――そんなに細い糸だと、織り機にかけられないかもしれないわね……。
何かいい方法はあるかしら……。

しばらく黙り込んだララの様子を伺いながら、バートンは声をかけた。
「そのシルクスパイダーの糸で作った布がないと、ビスのエネルギーを均等に出力させることはできないの?」

思考の海に沈んでいたララは、反応が少し遅れた。
「――えっ、あっ、そうね……。ちゃんと説明していなかったわね」

ララは姿勢を正し、計画を話し始めた。
「ビス炉には一回に50個のビスを投入するでしょ?
それを五個ずつ一つの塊にして、全部で10列に並べるの」

真剣に聞くランゼルとバートンは、相槌だけで先を促す。

「その五個のビスを、シルクスパイダーの布でコーティングした板に設置するの。
……イメージとしては、五個で一つの大きなビスを作るような感じかしら」

「それでなぜエネルギーが均等に消費できるの?」と、バートンが尋ねた。
「ただ設置しただけでは、今までと何も変わらないわ」
「そうだよね?」

「だから、ここからがバートンの出番なのよ」
口角を上げて楽しそうに微笑むララに、及び腰のバートンは、
「……えっ‼︎ 何をするの……」

「シルクスパイダーの布でコーティングした板に、魔法を付与してほしいの」
「どんな……」
「個々のビスのエネルギーが均等に放出されるように!」

「……魔道を通すってこと?」バートンが呟いた。

――っ‼︎

「なるほど! エネルギーを均等に流す道筋を作れば、ビスの消費は揃う……。
それぞれのビスにかかる負担が減るね……。すごいこと考えたね」

「そう、そうすれば個々のビスの負担も減って、長持ちしそうじゃない?」
「たしかに……。それが残り9列分あれば、一気に全部交換しなくても、色が黄色になったものから順に交換すればいいのか」

ララの考えが理解できたバートンは、感心したように言葉にした。

「これはやってみないとわからないけれど……。
一つのビス塊の色が変わっても、他の9列が白色で出力を保てていれば、最後まで使い切れるかもしれないの」

「もし、それが可能なら、かなりの節約になるね」
バートンの言葉に、ララは満足そうに頷いた。


ずっと何かを考えていた様子のランゼルが、静かに声を発した。
「シルクスパイダーの糸ですが、編んである程度の太さにすれば、織物になるのではないでしょうか?」

「っあ! そうね、その考えがあったわ!」
嬉しそうにランゼルに笑いかけるララ。

ララの笑顔に、ランゼルはわずかに頬を緩め――それを悟られまいと、窓の外へ視線を移した。

その視線を追ったララの目に、大きな川の対岸に並ぶ、数多くの建物が飛び込んでくる。
近づくにつれて、それぞれの煙突から白や灰色の煙が立ちのぼり、その匂いが馬車の中に流れ込んできた。

「植物を蒸したような香り……それに、薪を燃やしたような匂いも混じってるわね」

「この辺りは工業地帯ですから。鍛冶屋や繊維工場、木工所、染色工場などがあります。
この先の橋を渡れば、すぐに到着ですよ」

落ち着いた低音で説明するランゼル。
初めて訪れる場所に、ララは胸の内で小さく期待感を膨らませた。

そんな和やかな空気を、唐突な声が破る。

「ちょっと待って!」

思わず声の方――バートンを見る二人。

「シルクスパイダーの布に魔道を通す⁉︎ ……これって、高等魔法じゃないか‼︎」

難易度の高さに気づいたバートンの叫びが、馬車の中にこだました――。

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