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第19話 ご飯の後は、お昼寝よね?
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ランゼルは急いで厨房からミルクを受け取り、託児室へ戻った。
室内には、子どもたちの楽しそうな笑い声が満ちている。
ララは男の子を抱いたまま、カップを準備していた。それを手伝っているのは、マルクとリンのふたり。
「あら、ランゼル。ありがとう。早かったのね」
まるで夫の帰りを待っていた妻のようなセリフだと、ランゼルは思い、口元をゆるめた。
「さぁ、みんな、お祈りして食べましょう!」
ララが声をかけ、ミルクを受け取ると、手際よく皆のカップへ注いでいく。
それが終わると、自分も腰掛け、膝の上の男の子にミルクで柔らかくしたパンを与え始めた。
そんなララの姿に、ふと未来の情景が浮かんだのか──
ランゼルは頬を赤らめながら、その様子を見守っていた。
おやつの時間が終わると、ララは片付けを始める。それに気づいた子どもたちも、自分のカップやお皿を次々と運び出す。
ランゼルも自然な流れで、そのサポートに加わっていた。
片付けを終えた一行は、中庭で遊ぶことにした。
女の子たちはララのまわりに集まり、草花で花冠を作り始め、男の子たちはランゼルと元気いっぱいに追いかけっこ。
にぎやかな時間のあと、昼食の準備が始まる。
子どもたちもランゼルも、当たり前のように並んで手洗いへと向かった。
ララはその光景を微笑ましく見送りながら、男の子を抱えたままテーブルを拭き始める。
すると、慌てた様子の女性が入口から駆け込んできた。
「あら、どうかしたの?」
気づいたララが声をかけると、入ってきたのはダンとエマの母親だった。
「申し訳ありません! 王女様に子どもたちのお世話をお願いしたと聞いて……!」
「気にしなくていいのよ。ちょうど託児室の様子も気になっていたから」
ララは穏やかに答える。
抱いていた男の子を受け取ろうと、母親が手を伸ばすが──
その子は首を振り、ララの胸元にしがみついた。
「気にかけてくれて、ありがとう。でも大丈夫よ。みんな、心配せずにお仕事に戻ってね」
ララはそう言って、男の子の背中をトントンと優しくあやす。
ダンとエマの母親は、その慣れた様子に戸惑いと関心の入り混じった表情を浮かべていた。
手を洗い終えた子どもたちが、それぞれ家から持参した昼食を手にテーブルへ集まってくる。
「それじゃ、マルクとリン、みんなの準備を手伝ってね」
「はーい!」
元気よく返事をして、小さな子たちの手伝いを始めるふたり。
ランゼルもすっかり慣れてきたのか、いそいそと動いていた。
ララはダンとエマの母親に向き直ると、にっこり笑ってこう言った。
「ね? 大丈夫でしょ?」
その言葉に、「お願いします」と頭を下げて、母親は仕事へ戻っていった。
賑やかで楽しい昼食の時間も終わり、小さな子たちは眠そうに目をこすりはじめる。
ララの腕の中にいた男の子は、すでに夢の中だった。
「ランゼル、今から子どもたちはお昼寝の時間にするわ。マットレスの準備をお願いできるかしら?」
「はい、あちらに準備しても?」
窓辺の空間を指して尋ねるランゼル。
「風が心地よさそうね。お願いするわ」
壁際に立てかけてあった薄手のマットレスを、ランゼルが運び出す。
ララは眠っている男の子をそっと寝かせ、タオルケットを優しくかけた。
腕から降ろされたことに気づいたのか、男の子が「んー」とぐずり出す。
ララはすかさず、一定のリズムでその胸元をトントン……。
男の子は再び、すぅっと眠りに落ちていった。
ララは子どもたちに向かって、優しく声をかける。
「さぁ、お昼寝の時間よ。みんな、ここで休みましょうね」
子どもたちは順にマットレスに横たわり、静かに目を閉じていく。
その中で、なぜかエマだけはランゼルの手を握り、そばを離れようとしなかった。
「エマは眠くないの?」
ララがそう問うと、エマは小さな声で答える。
「きしのおとうさんといっしょ……」
困った顔のランゼルに、ララはジェスチャーを交えて伝えた。
「ランゼル、エマが眠るまで抱っこしてくれる? 背中をトントンって、軽くたたいてあげるといいの」
そっとエマを抱き上げ、ランゼルは指示どおり背中をトントン……。
安心したエマは、ほどなく夢の中へ。
ランゼルはそっとエマをマットレスへ寝かせる。
起きる気配のないエマを見て、ララとランゼルは詰めていた息を「はーっ」と吐き出し、思わず顔を見合わせてクスッと笑った。
午後のやわらかな風が、ララとランゼル、そして眠る子どもたちをやさしく包み込んでいた。
室内には、子どもたちの楽しそうな笑い声が満ちている。
ララは男の子を抱いたまま、カップを準備していた。それを手伝っているのは、マルクとリンのふたり。
「あら、ランゼル。ありがとう。早かったのね」
まるで夫の帰りを待っていた妻のようなセリフだと、ランゼルは思い、口元をゆるめた。
「さぁ、みんな、お祈りして食べましょう!」
ララが声をかけ、ミルクを受け取ると、手際よく皆のカップへ注いでいく。
それが終わると、自分も腰掛け、膝の上の男の子にミルクで柔らかくしたパンを与え始めた。
そんなララの姿に、ふと未来の情景が浮かんだのか──
ランゼルは頬を赤らめながら、その様子を見守っていた。
おやつの時間が終わると、ララは片付けを始める。それに気づいた子どもたちも、自分のカップやお皿を次々と運び出す。
ランゼルも自然な流れで、そのサポートに加わっていた。
片付けを終えた一行は、中庭で遊ぶことにした。
女の子たちはララのまわりに集まり、草花で花冠を作り始め、男の子たちはランゼルと元気いっぱいに追いかけっこ。
にぎやかな時間のあと、昼食の準備が始まる。
子どもたちもランゼルも、当たり前のように並んで手洗いへと向かった。
ララはその光景を微笑ましく見送りながら、男の子を抱えたままテーブルを拭き始める。
すると、慌てた様子の女性が入口から駆け込んできた。
「あら、どうかしたの?」
気づいたララが声をかけると、入ってきたのはダンとエマの母親だった。
「申し訳ありません! 王女様に子どもたちのお世話をお願いしたと聞いて……!」
「気にしなくていいのよ。ちょうど託児室の様子も気になっていたから」
ララは穏やかに答える。
抱いていた男の子を受け取ろうと、母親が手を伸ばすが──
その子は首を振り、ララの胸元にしがみついた。
「気にかけてくれて、ありがとう。でも大丈夫よ。みんな、心配せずにお仕事に戻ってね」
ララはそう言って、男の子の背中をトントンと優しくあやす。
ダンとエマの母親は、その慣れた様子に戸惑いと関心の入り混じった表情を浮かべていた。
手を洗い終えた子どもたちが、それぞれ家から持参した昼食を手にテーブルへ集まってくる。
「それじゃ、マルクとリン、みんなの準備を手伝ってね」
「はーい!」
元気よく返事をして、小さな子たちの手伝いを始めるふたり。
ランゼルもすっかり慣れてきたのか、いそいそと動いていた。
ララはダンとエマの母親に向き直ると、にっこり笑ってこう言った。
「ね? 大丈夫でしょ?」
その言葉に、「お願いします」と頭を下げて、母親は仕事へ戻っていった。
賑やかで楽しい昼食の時間も終わり、小さな子たちは眠そうに目をこすりはじめる。
ララの腕の中にいた男の子は、すでに夢の中だった。
「ランゼル、今から子どもたちはお昼寝の時間にするわ。マットレスの準備をお願いできるかしら?」
「はい、あちらに準備しても?」
窓辺の空間を指して尋ねるランゼル。
「風が心地よさそうね。お願いするわ」
壁際に立てかけてあった薄手のマットレスを、ランゼルが運び出す。
ララは眠っている男の子をそっと寝かせ、タオルケットを優しくかけた。
腕から降ろされたことに気づいたのか、男の子が「んー」とぐずり出す。
ララはすかさず、一定のリズムでその胸元をトントン……。
男の子は再び、すぅっと眠りに落ちていった。
ララは子どもたちに向かって、優しく声をかける。
「さぁ、お昼寝の時間よ。みんな、ここで休みましょうね」
子どもたちは順にマットレスに横たわり、静かに目を閉じていく。
その中で、なぜかエマだけはランゼルの手を握り、そばを離れようとしなかった。
「エマは眠くないの?」
ララがそう問うと、エマは小さな声で答える。
「きしのおとうさんといっしょ……」
困った顔のランゼルに、ララはジェスチャーを交えて伝えた。
「ランゼル、エマが眠るまで抱っこしてくれる? 背中をトントンって、軽くたたいてあげるといいの」
そっとエマを抱き上げ、ランゼルは指示どおり背中をトントン……。
安心したエマは、ほどなく夢の中へ。
ランゼルはそっとエマをマットレスへ寝かせる。
起きる気配のないエマを見て、ララとランゼルは詰めていた息を「はーっ」と吐き出し、思わず顔を見合わせてクスッと笑った。
午後のやわらかな風が、ララとランゼル、そして眠る子どもたちをやさしく包み込んでいた。
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