私が預言者?いいえ、ただのインチキ占い師です!

香樹 詩

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第6話 悪者諸君!準備はいいかい?

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「さぁ、こちらも応戦しますか?」
私の言葉にカレンさんが、にっこり笑う。
でもその笑顔が、ちょっと悪者みたいよ。

ユーエン王子が連れていかれて、呆然としているノエルくんに話しかけた。

「ねぇ、王立図書館って、この街にもある?」
「はい、街の北側にありますよ。どうかされました?」
ノエルくんが小首を傾げる。

「うん、もしそこに──百年分くらいの新聞が保管されてたら、ちょっと調べたいことがあるの」
「新聞、ですか? たぶん、あると思いますよ。よかったら一緒に行きましょうか?」

「ありがとう。でも馬車だけお願いしていい? ノエルくんには、別のお願いがあるの」
「別の?」

「うん。……王族の家系って、家族の医療記録を閲覧できたりする?」
「医療記録……ですか?」

私は一歩近づき、彼の耳元でそっと囁いた。
ノエルくんは一瞬目を見開き、すぐに真剣な表情で頷く。

「それが重要なカギになるから、しっかり調べてね。
さぁ、みんなで反撃の準備といきますか」



それから七日後。
ノエルくんの口利きで、国王様と王妃様に謁見できることになった。もちろん、神官長さんも同行してるよ。

初めて王宮ってところに入ったけど、なんだか神殿の西側に比べたら地味だな。

「神官長の住まいのほうが豪華だよね」
思わず漏れた一言に、カレンさんが吹き出した。
「やだぁ、本当のこと言わないの」

案内された謁見の間。
王様と王妃様の登場に、思わず「おおっ」と声が出てしまった。
だって、映画に出てきそうな雰囲気なんだもん。

「真希殿とカレン殿、突然この世界に呼んでしまったこと、誠に迷惑をかけた。
息子の独断とはいえ、国王であるわしの責任だ。
二人が不自由なく暮らしていけるよう、しっかり保証すると約束する」

真摯な王様の言葉と、申し訳なさそうな表情。
あぁ、この国の王様ってちゃんとした人なんだね。

でも、王妃さま。
そんなに睨まなくてもいいんじゃない?
余計なことしたのは、貴方の息子さんですよ。

「そういえば、ノエルの看病をしてくれたと息子から聞いた。
ここまで回復させてくれて、ありがとう」
王様が優しい笑顔で告げるから、私もカレンさんも笑顔で返した。

王妃様だけは、悔しそうな顔してるけどね。



さぁ、始めようか。
王妃様も準備はいい?

「ところで王様、私最近この国の歴史を勉強し始めたんです」
「ほぉ、それは良いことだな」
感心したように王様が、顎の髭を撫でた。

「25年前に大きな自然災害があったって、昔の新聞に載ってました。
その時、王様が三ヶ月かけて各地を視察して、復興の指揮をとったってありました。
王族自ら陣頭指揮って、すごいなぁって感心したんです」

「よくそんな昔のこと調べたね」
王様の笑った顔、ユーエンさんにそっくり。

「記事にはなかったけど、王妃さまもご一緒されたんですね?
国のトップ二人が揃ってきてくれたら、住民は心強かったと思います!」

王様なんて言うかな?
おや、ちょっと不思議そうな顔になったね。

「いや、わし一人だったが、なぜそう思ったのかな?」

「アルマ王子はユーエン王子より三ヶ月早く生まれたから、第一王子ですよね?」
「うむ」

「私の世界では、赤ちゃんが産まれるのに十月十日(とつきとうか)って言います。
そうなると、十ヶ月前はちょうど視察中だったから」
チラッと王妃様見たら、すごい顔で睨んでるよ。

「真希殿、話の意図が見えん。何が言いたいのじゃ?」
困惑顔の王様が私を見た。

「んっと、はっきり言いますね!
それだと、アルマ王子は七つ月(ななつき)で産まれてきたことになるんです。
私の世界だと、医療設備が整った病院で対応する月数なので。

あっ、この国は赤ちゃんが産まれるまで十月(とつき)かからないんですね!」

「いや……、そなたの世界と同じだが」
王様の顔がだんだん険しくなる。

「それじゃあ、この世界には特別な魔法とか、進んだ医療技術があるんですね」
わざと元気よく言い切った。

「そんな、ものは無い……」
王様が隣の王妃に鋭い視線を向けて、言葉を発した。
「王妃、どういうことだ!」

あぁ、王妃様真っ青だよ。
「いえ……、あっ……、アルマは第一王子です。その娘の勘違いでしょう」

えぇ、そう来るの?
やだ、こっち睨んでるよ。

それなら、私も応戦するよ!
「えぇ、私の勘違いなの?
ねぇノエルくん、アルマ王子の出生記録ってあった?」

王様たちの近くにいるノエルくんが、ニッと口角を上げた。
準備万端ね!
「父上、発言をよろしいでしょうか?」

「うむ、話してみろ」

「はい、ではまずはアルマ兄上の当時の出生記録です。
ここには“健康そのもの”と書かれていて、特に気になる点は書かれていません」

「つまり、健康そのものということは、十月(とつき)相当の大きさだということだな。
王宮医を呼べ!」
王様は声を荒げて、指示を出した。

「父上、当時担当していた王宮医は王妃の出産後に、行方をくらませています。
彼は王妃の従兄弟です」

ノエルくん! 絶妙なタイミングだよ!

突然呼ばれて現れた初老の王宮医は、とっても緊張した様子で顔が引き攣っている。
臣下の一人が王宮医に今までの流れを説明し終えると、彼の顔がますます固まった。

「では聞く。わが国で七つ月で生まれた場合、そこに書かれている“健康そのもの”という表現が当てはまるのか?」
王様の低い声が響く。

王宮医は青い顔で、必死に答えた。
「……陛下、七つ月でお生まれになった場合、そこに書かれているような状態ではないかと……」

「では、アルマは……」
王様の険しい顔が、王妃に向く。

王妃は俯いたまま、一言も発しない。

まだまだ、ここからですよ! 王妃様!
「あっ、そうだ!
この世界って、継承の紋ってあるんですよね?
それ見たら、王様の子かわかるんじゃないですか?」

ハッとして息を呑んだ王様が、叫んだ。
「アルマを連れてこい!」

臣下に連れてこられたアルマ王子。
あぁ、とっても不服そうな顔。

「アルマ、ここにきなさい。背中の紋をわしに見せよ!」
「父上、いきなりなんですか?」
「いいから、早くしろ」

しぶしぶって感じで、アルマ王子が王様に背中の紋を見せた。

「なんて……ことだ!」
王妃に詰め寄る王様の迫力がすごい。
「わしの紋の痕跡がないではないか!」

騒然とする謁見の間。

アルマ王子だけがポカンとした顔で呟いた。
「え? なに?」

腕を組んで眉間に深い皺を寄せた王様が、王妃様に問う。
「アルマの父親は誰だ」

いまだに王妃様は俯いたまま、ダンマリを決め込んでいる。

さぁ、あなたにも主役になってもらわないとね!
私は後ろに控えている彼をチラッと見た。

済ました顔してるけど、絶対ドキドキしてるはず。
だって、さっきから王妃様がチラチラ視線送ってるし。

「私も発言よろしくて?」
カレンさんが、この空気を破った。

「……何かな」
王妃様から視線をこちらに向けた王様。

きっと内心怒り爆発だろうに、すっごく冷静にカレンさんに返事してる。
こんなところはユーエンさんと同じね。

「私たち、ユーエン王子にお世話になったのよ。
その彼が横領の疑い? ですか?
ちょっと疑問に思って調べたら、こんなものが出てきたから、王様にお知らせしないとって。ねぇ真希ちゃん?」
王様相手にいつものカレンさん、さすがだよ。

ちなみに時系列、ちょっと誤魔化したね?
それ見つけたの、ユーエンさんが連れていかれる前だから。
なんなら、ユーエンさんが見つけたからね。

カレンさんが手渡したのは、あの手紙の束。
そう、神官長の執務室で見つけたやつ。

あぁ、王様、手が震えてるよ。

「王妃、そなただったのか。
長年、王室資金を流用していたのは。
それも神官長と通じておったとは。
ここにしっかりとそなたの筆跡で署名されておる。
もう言い逃れはできん!」

手紙を握りしめた王様が、神官長に告げる。
「長年、余を騙したな。この罪は重いぞ。
しかも神官の職にありながら、王室資金を使い込み私腹を肥やすとは。
あろうことか、それをユーエンになすりつけるとは、処罰を覚悟するといい!」

「王妃と神官長を捕えろ!」
王様の一声で、騎士たちが動く。

「私は、神官長に騙されただけです!」
王妃様が叫んで許しを乞う。
いや、無理な言い訳だよ。

そう思っていたとき、またあの感覚。
思考がスッと抜ける感じ。

今映り込んだ映像に、慌てて叫んだ。
「王様が危ない! 神官長を捕まえて!」

叫んだ直後、短剣を握りしめた神官長が王様めがけて飛び出した。
騎士が急いで、王様の前に出る。

短剣を振り上げた神官長を、騎士が弾き飛ばした。

あぁ、間に合った……。
しかし、また思考が抜ける。

えぇ‼︎ そんなの反則でしょ。
神官長が懐から水晶のような玉を出して、それが赤く膨れ上がって爆発する様子が映った。

神官長を見た誰かが叫んだ。
「魔力玉だ!」

「カレンさん! 神官長を止めて! 何か持ってる! 爆破するよ!」
「了解! 任せて!」

咄嗟に叫んだ私に、ウインクを返したカレンさん。
神官長めがけて手をかざす。

「フリージング!」
カレンさんの手から光が走る。
瞬く間に、神官長がかざした右手と魔力玉が凍った。
氷の重さに耐えかねて崩れ落ちた神官長を、騎士たちが囲んだ。

あぁ、これで大丈夫だね。
ちょっと焦ったよ。

ホッとしてカレンさんを見たら、優しい笑顔が飛んできた。

「やはり、あなた方は預言者さまと、賢者さまなのですね」
王様がぽつりとこぼした一言。

その場にいる全ての人が、私たちに注目した。

困った私はカレンさんを見た。
「真希ちゃんの力は預言じゃなくて、予知かな。
なんだっていいじゃない。
だってあなたは、私の自慢の娘なんだから」

カレンさんの言葉が嬉しくて、思わずにっこり笑顔になる。

でも、ちゃんと言っとかないとね。
王様たちの方を見て、叫ぶ。

「私、預言者じゃありません! ただのインチキ占い師です!」

終わり
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