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首都ヨルセウス
エピローグ
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ヴァルグロを討伐して一週間が経過した。
そのくらいの時間が経つと、流石にキックスにも魔王が討伐された知らせは届く。
討伐したのは、王国軍十三番隊隊長メイサ・ウル。
伝わってきた情報には俺達の名前は一切入っていないことに安堵した。
その間、俺は配達と近隣のモンスターの討伐をしているが、ヴァルグロを倒した影響でただでさえ弱い周囲のモンスターが更に弱くなっていた。
「平和ですね」
「そうだね」
フランとノノ、それとシスは今も俺の家にいる。
今も二人はお茶を飲んでゆっくりとしている。
シュリ・アーガスの墓参りは、魔王が討伐されお祭りムードが落ち着いてから行くことになっている。
資金も潤沢でもうこのまま余生を送ってもいいが、俺には最後にやらないといけないことがある。
「それじゃあ、俺は少しだけ出てくるから。いつ帰ってくるかわかんないけど、そんなに遅くなるつもりはないから」
「お兄さん一人で大丈夫ですか?」
「私達も一緒に行きますよ」
「私が武器として同行しようか?」
「たぶん俺以外には行けない場所だから」
三人にそう告げ、俺は最初の草原に向かう。
森に向かう途中の広い草原。
周囲に誰もいないことを確認してから【ストレージ】の中からスマホを取り出す。
スマホと言っても、ネットにつながらなければゲームも入っていない。
あの神を名乗る爺さんと唯一会話ができる装置で、俺が使っていたスマホと同じ形というだけだ。
通話のボタンを押すとすぐに神に連絡が付いた。
「ヴァルグロを倒したぞ」
そう言った瞬間に俺は霧の中に立っていた。
そしてその霧はすぐに和室に変わる。
和室に変わったのを確認してからちゃぶ台に座ると、目の前に神がいた。
「よくやってくれた。これでお前の勇者としての役目は終わりだ。後は好きな世界で好きに暮らせ」
「自分が神になったから用済みってことか?」
「ワシはお前を呼んでからずっと神だぞ」
「ヴァルグロから全部聞いた。魔王はお前が人間だったころの悪の部分。それがあると神にはなれないんだろ?」
俺がヴァルグロから聞いたのはこのことだった。
そしてヴァルグロは俺に言った「神にも寿命はある」と。
どんなに良い神でも、健康を司っていても、強くても関係なく寿命は来る。
神の寿命は人に忘れられること。
安全で脅威がなくなり、人が神を崇めなくなると神は消えるとそう教えてくれた。
そしてだからこそ、この世界には不安をあおるモンスターが居て、俺のいた世界の様に便利ではない。
「お前が神に選ばれるまで、モンスターなんていなかったんだろ?」
「神の寿命も知っているのか。それでお前はどうするつもりなんだ? 魔王を生み出しモンスターを作り出したワシを殺すか?」
「別にどうもしない。俺はこっちの世界に来れて満足だし、感謝してるからな。ただ嘘を吐かれたのが許せなかったから真実を知りたかっただけだ」
「そうか。ならさっきの世界に送ろう」
聞きたいことも聞けたし、これから先はもう旅をしなくてもいい。
後はフラン達と一緒に楽しい生活を過ごすだけだ。
俺は神との連絡手段であるスマホをちゃぶ台に置く。
「じゃあ、これからも人を不安にさせながら神様頑張ってくれ。でも、俺ならそんな神様は願い下げだけどな」
「それならば、お前はワシの世界にはいらないわけか」
神はそう言うと、俺に切りかかって来た。
俺はその攻撃を受け止める。
どこかで俺はこうなることに気がしていた。
なにせ、俺の持つチートスキルは性能はいいが、必ずどこかに穴があり使いづらい。
まるで俺がこうして刃向かうことを知っている様に、そんなスキルを渡していた気がする。
「神に会いに来るというのに、武器を持ってくるとは神として断罪しなければな」
「一つ確認しておくが、前の神様を殺したのはお前か?」
「そうだ。立場は今のお前と同じだ」
剣を交えながら神は自らの罪を自白する。
「なんと素晴らしい立場なのだと思ったよ。指先一つで世界が壊せ、思うままに世界を操れる」
「最低の理由だな」
周囲を囲む白い霧は俺を排除するための武器に変わる。
俺が掴むと霧に変わり、神が思えば武器になる。
「だけど、その気持ちは少し前に消えた。今は気まぐれで世界を壊さなければいけないと、脳が告げているだけだ。世界を壊せ、邪魔者を消せ。その意志だけが私を支配している」
「だろうな。悪の心は俺が殺した」
「そのせいだろうな。今なら何故前の神が、世界を暮らしやすいようにと無心で作り変えていたのかよくわかる」
自嘲気味に神は笑う。
無数に生み出される武器を俺に向け、邪魔者を消そうとしながら神はほほ笑む。
「神は世界を作っていなかったんだな。自分の道化さに笑えて来るよ」
「言い残すことはあるか?」
「お前はどうする?」
「仲間を待たせてるから帰らないといけない。別に世界なんて勝手に進んで行くもんだ」
猛追はふと途絶えた。
武器は霧に帰り、真っ白な世界に変わる。
そこで武器を構える俺の前にいるのは、ただ一人の老人。
百万回の転生をするよりも昔にいた、勇者だった老人。
世界を滅ぼすために神になろうとした老人。
俺はその老人が持つ杖に剣を突き立てる。
中に埋められている真珠の様な白い石は、その一撃で粉に変わる。
「勇者よ、君の人生に幸があらんことを」
白い霧に変わりゆく老人は俺に向かって祈りをくれた。
主を失ったこの世界から白い霧が晴れていく。
そして霧が晴れると俺は草原に立っていた。
「俺は神様に向いてないってことかな」
俺は真直ぐ家に戻る。
門番に挨拶をして、顔見知りと挨拶を交わす。
そして広くはない一軒家の扉を開ける。
「ただいま」
俺の言葉に仲間達は「おかえりなさい」とそう言ってくれた。
そのくらいの時間が経つと、流石にキックスにも魔王が討伐された知らせは届く。
討伐したのは、王国軍十三番隊隊長メイサ・ウル。
伝わってきた情報には俺達の名前は一切入っていないことに安堵した。
その間、俺は配達と近隣のモンスターの討伐をしているが、ヴァルグロを倒した影響でただでさえ弱い周囲のモンスターが更に弱くなっていた。
「平和ですね」
「そうだね」
フランとノノ、それとシスは今も俺の家にいる。
今も二人はお茶を飲んでゆっくりとしている。
シュリ・アーガスの墓参りは、魔王が討伐されお祭りムードが落ち着いてから行くことになっている。
資金も潤沢でもうこのまま余生を送ってもいいが、俺には最後にやらないといけないことがある。
「それじゃあ、俺は少しだけ出てくるから。いつ帰ってくるかわかんないけど、そんなに遅くなるつもりはないから」
「お兄さん一人で大丈夫ですか?」
「私達も一緒に行きますよ」
「私が武器として同行しようか?」
「たぶん俺以外には行けない場所だから」
三人にそう告げ、俺は最初の草原に向かう。
森に向かう途中の広い草原。
周囲に誰もいないことを確認してから【ストレージ】の中からスマホを取り出す。
スマホと言っても、ネットにつながらなければゲームも入っていない。
あの神を名乗る爺さんと唯一会話ができる装置で、俺が使っていたスマホと同じ形というだけだ。
通話のボタンを押すとすぐに神に連絡が付いた。
「ヴァルグロを倒したぞ」
そう言った瞬間に俺は霧の中に立っていた。
そしてその霧はすぐに和室に変わる。
和室に変わったのを確認してからちゃぶ台に座ると、目の前に神がいた。
「よくやってくれた。これでお前の勇者としての役目は終わりだ。後は好きな世界で好きに暮らせ」
「自分が神になったから用済みってことか?」
「ワシはお前を呼んでからずっと神だぞ」
「ヴァルグロから全部聞いた。魔王はお前が人間だったころの悪の部分。それがあると神にはなれないんだろ?」
俺がヴァルグロから聞いたのはこのことだった。
そしてヴァルグロは俺に言った「神にも寿命はある」と。
どんなに良い神でも、健康を司っていても、強くても関係なく寿命は来る。
神の寿命は人に忘れられること。
安全で脅威がなくなり、人が神を崇めなくなると神は消えるとそう教えてくれた。
そしてだからこそ、この世界には不安をあおるモンスターが居て、俺のいた世界の様に便利ではない。
「お前が神に選ばれるまで、モンスターなんていなかったんだろ?」
「神の寿命も知っているのか。それでお前はどうするつもりなんだ? 魔王を生み出しモンスターを作り出したワシを殺すか?」
「別にどうもしない。俺はこっちの世界に来れて満足だし、感謝してるからな。ただ嘘を吐かれたのが許せなかったから真実を知りたかっただけだ」
「そうか。ならさっきの世界に送ろう」
聞きたいことも聞けたし、これから先はもう旅をしなくてもいい。
後はフラン達と一緒に楽しい生活を過ごすだけだ。
俺は神との連絡手段であるスマホをちゃぶ台に置く。
「じゃあ、これからも人を不安にさせながら神様頑張ってくれ。でも、俺ならそんな神様は願い下げだけどな」
「それならば、お前はワシの世界にはいらないわけか」
神はそう言うと、俺に切りかかって来た。
俺はその攻撃を受け止める。
どこかで俺はこうなることに気がしていた。
なにせ、俺の持つチートスキルは性能はいいが、必ずどこかに穴があり使いづらい。
まるで俺がこうして刃向かうことを知っている様に、そんなスキルを渡していた気がする。
「神に会いに来るというのに、武器を持ってくるとは神として断罪しなければな」
「一つ確認しておくが、前の神様を殺したのはお前か?」
「そうだ。立場は今のお前と同じだ」
剣を交えながら神は自らの罪を自白する。
「なんと素晴らしい立場なのだと思ったよ。指先一つで世界が壊せ、思うままに世界を操れる」
「最低の理由だな」
周囲を囲む白い霧は俺を排除するための武器に変わる。
俺が掴むと霧に変わり、神が思えば武器になる。
「だけど、その気持ちは少し前に消えた。今は気まぐれで世界を壊さなければいけないと、脳が告げているだけだ。世界を壊せ、邪魔者を消せ。その意志だけが私を支配している」
「だろうな。悪の心は俺が殺した」
「そのせいだろうな。今なら何故前の神が、世界を暮らしやすいようにと無心で作り変えていたのかよくわかる」
自嘲気味に神は笑う。
無数に生み出される武器を俺に向け、邪魔者を消そうとしながら神はほほ笑む。
「神は世界を作っていなかったんだな。自分の道化さに笑えて来るよ」
「言い残すことはあるか?」
「お前はどうする?」
「仲間を待たせてるから帰らないといけない。別に世界なんて勝手に進んで行くもんだ」
猛追はふと途絶えた。
武器は霧に帰り、真っ白な世界に変わる。
そこで武器を構える俺の前にいるのは、ただ一人の老人。
百万回の転生をするよりも昔にいた、勇者だった老人。
世界を滅ぼすために神になろうとした老人。
俺はその老人が持つ杖に剣を突き立てる。
中に埋められている真珠の様な白い石は、その一撃で粉に変わる。
「勇者よ、君の人生に幸があらんことを」
白い霧に変わりゆく老人は俺に向かって祈りをくれた。
主を失ったこの世界から白い霧が晴れていく。
そして霧が晴れると俺は草原に立っていた。
「俺は神様に向いてないってことかな」
俺は真直ぐ家に戻る。
門番に挨拶をして、顔見知りと挨拶を交わす。
そして広くはない一軒家の扉を開ける。
「ただいま」
俺の言葉に仲間達は「おかえりなさい」とそう言ってくれた。
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