神様にいちばん遠い島 〜女人禁制の「神の島」で神子となった少年は、神職者らの性処理のための慰み者にされて〜 18禁 BL歴史小説 完結済み

丸井マロ

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第5章 立浪

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 立浪は口入れ屋に、人知れず船を入手できないかと相談し、ある漁師を紹介された。

「この船だ」

 老人が指し示す先には、四、五人乗りの小さな船が浮かび、ゆらゆらと波に揺られている。

「まさに探していたものだ、かたじけない」

 立浪は懐から銭を取り出し、老人に手渡した。

「役に立ててよかった。儂はもう目が見えなくなってきておる。肩も膝も痛い。ちょうど隠居しようと考えていたところじゃ」

 老人の目は白く濁り、前歯は一本しか残っていない。

 手の甲には入れ墨で「一」をあらわす一本線が刻まれており、どこかで盗みを働いて、一度、公の裁きを受けた過去をうかがわせた。

「ところであんた、やしろの人だろう。こんな船を買って、どうするのじゃ?」

「どうせこの先ずっと島暮らしだ、憂さ晴らしに釣りをしようと思ってな」

「社の人も釣りをするのか?」

「ほかの者はどうか知らんが……。儂は伊勢の漁村に生まれた。故郷にいた頃は漁師の真似事をしていたんだ」

「ほう」

「もしもの話だが、うっかり沖に流されてしまった場合、潮の流れに乗れば、そのまま本土に流れ着いたりするのかい?」

「海流によるが、満潮に向かう流れならありうるかのう」

「そうか」

 立浪はうなずいた。

「かたじけない、じいさん、達者に暮らせよ」

「お前さんも。気をつけてな」

 老人に背を向け、立浪は歩きはじめた。

「海を侮ってはいかんぞ」

 遠ざかる若者に、老人はひとこと忠告すると、手を振って見送った。
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