孤高の騎士団長は誰のものにもならないオメガ

ゆなな

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フェリクス騎士団長

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――貴方があの時、俺の手を取ったから。俺はあの時から生涯貴方を離さないと誓ったんだ……

 貴方は怒るかな? 

 でもごめん。観念して、俺のものになってね。




 ゴルール公国で一番の大通りは、かつてないほど賑わっていた。

「ゴルール公国騎士団、隣国スタール帝国との国境戦線に勝利してのご帰還であります!」

 この公国を治めるダントルグスト大公の住まいであり、政治の中枢部であるゴルール城に向かうその通りで、英雄たちを迎える大きな声が響いた。
 その石畳の道の両側は敵国から国境を守る戦を無事に終え、国を守った騎士団を称える群衆がひしめき合っていた。
 群衆が騎士団の行く道に飛び出してこないように、歩兵たちは群衆の前に立ち、大公直属の音楽隊のファンファーレが鳴り響く。
 そして通りの向こうから帰還した騎士団が連なってやってきて、群衆の前を通過していく。
 その先頭に立っているのは、ゴルール公国第一騎士団長のフェリクス・ランドールだ。
 漆黒の髪と同じ色の鋭い瞳を持つ彼は、一分の隙もない鋭利な刃物のような男だった。

「フェリクス騎士団長様っ! この度は国民のためにありがとうございました!」

「フェリクス様……ぁっなんて神々しい……」

 騎士団長のフェリクスを見て、恍惚となり彼の名を呼び叫ぶ声で通りは騒然となった。
 それくらい彼は凛として気高く美しかった。

「フェリクス様がまだ番を持たないアルファだなんて……なんとかしてあの方の番になれないかしら」

 フェリクスの気高い姿を見て、オメガ達はうっとりと夢見るような声をもらした。
 いたるところから彼を称賛する声が上がっていたが、彼はよどみのない強く鋭い視線で前を見据え、騎士団の先頭を進んでいく。
 すぐ後ろには、金獅子と通り名を付けられるほど雄々しい副団長のバルトの白馬が続く。
 獅子のように雄々しい男を従えるフェリクスは、この国最強の剣の使い手と言われている。
 群衆の称賛の声がまるで聞こえてもいないように進んで行く姿は、彼の強い信念や使命感の現れに見え、群衆たちは彼に対してさらなる尊敬と、燃え盛るような熱情を覚えた。
 この国の政治家たちに対しては不満が募り国民たちは国の未来を案じていたが、彼がいればこれからも国家と騎士団の未来を明るく変えてくれるのではないかと感じさせるほど、彼が率いる騎士団の隊列は、群衆の前をとおり過ぎゴルール城の敷地内に入っていった。



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