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4章
告白
そんなアンドレアの部屋のテーブルにはおいしそうな焼きたてのスコーンやパン、溜息が出そうなほどきれいなオムレツに優しく湯気が出ているスープが並んでいた。
それらをサランが見た時だった。
グゥゥ……
「ぷ……っくくく……」
「笑うなよー、僕は朝はお腹が空いて起きるタイプだから、朝ごはん見るとお腹なっちゃうの!」
真っ赤になってサランが抗議する。
「すっげぇでけぇ腹の音なんだもん、お前ほんとマヌケ……っ」
「もういい! 帰る……っ」
「……っわ……っ悪かった! ごめん! 謝るから、帰るな……いや、帰らないでください……っ」
アンドレアは慌てたようにサランの腕を掴んだ。
「……離してよ。もう帰る。朝ごはんは家で食べる」
「ごめん。そんなこと言わないでくれ。あの……お前……いや、サランを見るとなんか……その……いじめたくなるっていうか……もう意地悪言わないとは約束できねぇけど、なるべく改める」
「……なるべく改めるってなんだよ……絶対しないって言えよ」
「絶対……は無理かも。だって、お前可愛いし面白いし。ついいじめたくなる」
「は⁉ 可愛い? 確かに僕は可愛いけど、アンドレアに言われるとびっくりする」
可愛いと言われて、サランは心底驚いてアンドレアを見た。
「帰らないでくれるか?」
「わかった、わかった。帰らない。ユノが故郷に帰ったから、僕が落ち込んでるって思って朝ごはん用意してくれたんだろ? 一緒に食べるよ」
いつも尊大な男が、へりくだった態度を取るので、サランも怒りの矛先を収めることにした。
「よかった……帰らないでくれて、嬉しい」
アンドレアは安堵した顔つきになると、サランの頬にその大きな掌を添えた。
そして、徐々に唇が近づいてきて……
「ちょっ……な……なに……?」
「なにって……キスだろ」
「はぁ⁉ キスぅ⁉ いや、この前寮の部屋行ったときも言ったけど、冗談でそれしようとするのやめろって! あ、もしかしてそれも意地悪のひとつ?」
「違うに決まってるだろ。俺は交流会の夜サランにキスしたかったからキスしたし、今も寮の部屋でもサランにキスしたかった……意地悪でも冗談でもない……っぶっ……」
驚きすぎたサランは思わず両手でアンドレアの顔を遮った。サランの掌に思いっきりアンドレアの顔が当たって、アンドレアはつぶれたような声を上げた。
「へ? 交流会の夜のってほんとのキス……のつもりだったの……?」
「キスじゃなかったらなんなんだと思ってたんだよ?」
アンドレアはサランの掌を退けると、唇を尖らせた。
「えーと……冗談じゃないなら、頭突きしようとして口がぶつかったとか?」
「……なんて解釈だ……じゃ、やっぱりもう一回するしかねぇな」
アンドレアは一瞬瞠目して呆然と呟いたが、その赤い髪を振るともう一度サランに唇を近づけた。
「ぎゃー! ちょっと待って!!」
「ぎゃーってなんだよ……失礼だな……これでも一応婚約者にしてくれってヤツは後を絶たないんだぞ」
「そ……それは有名な話だから知ってるけど……っ……アンドレアはユノが好きなんじゃないの? 僕は他の人が好きな人とはキスなんてしたくないし。それに僕にだって……」
「たしかにユノのことはとても好きだ」
「じゃあなんで……っ……僕にキスなんか……」
「ユノのことは好きだし、心から尊敬している。でも恋愛感情とは違う」
「は……?」
アンドレアの言葉にサランは驚きすぎて呆けた声を出してしまったが、彼は意に介さず続けた。
「生徒会室で初めてユノに出会った日、ユノがかなり腕が立つ戦士だとは見てすぐにわかった。戦士の勘だ。あいつの特性は賢者でも治癒師でもなく戦士だろ?」
「すごい! よく分かったね! 僕でもユノが戦士って聞くまでわからなかったのに!」
突然始まった話だが、ユノを戦士と言い当てた人は初めて見たので、サランは驚きの声を上げた。
「まぁなって言いたいとこだが、俺も特性戦士だから同じものを感じただけだと思う。キリヤ様を隣で守るポジションを俺から奪いそうな奴が現れた気がしたんだ。俺はそれでかなり苛立った。もちろんそれまでシュリがキリヤ様の隣にはいたが、俺はシュリは眼中になかったし、イヴァンも俺とはタイプが違うから、俺をこんなに焦らせたヤツは初めてだった」
「うん? やっぱユノへの告白じゃない? これ」
「ちげーよ。ちゃんと全部聞けって。俺は焦りで、生徒会から帰るとすぐに、寮の訓練場で狂ったように攻撃魔法の練習をした。そして、焦りから、自分の足に攻撃を当てるという馬鹿な怪我をした。ユノが初めて生徒会に来た日の夜に、何があったかは覚えているか?」
「……仮面舞踏会……」
アンドレアは穏やかな表情で語りだしたので、サランも素直に答えた。
「そうだ、仮面舞踏会だ。俺は医務室のフリーレンス先生の治癒魔法が……いやそもそも治癒魔法そのものが苦手だったので、怪我の手当てをしないまま仮面舞踏会に出た。しかし、仮面舞踏会の会場で歩いているうちにどんどん怪我は悪化し、怪我を庇うために魔力もかなり消費してしまった。そんなとき……」
「僕とぶつかった?」
サランだって忘れることができない印象的な出来事だ。
「そうだ。普段ぶつかったら壊してしまいそうなほど小さい奴とぶつかって、俺は歩けなくなった」
「失礼だな。アンドレアがぶつかったくらいで壊れるもんか。僕だって男だぞ……っ」
サランが言うと、アンドレアはふ、っと笑った。あまりに愛しみに満ちた笑みだったので、サランは文句を呑み込んで狼狽えた。
「吹っ飛ぶよ。お前華奢だもん。まぁ、それはいいとして。ぶつかった小さい奴が、治癒魔法を使えると言うんだ」
「わ……わかったよ。あの日のことにアンドレアが気付いたのはわかった。黙っててごめん。だから全部話さないでいいって……」
あの日のことをアンドレアがすべてわかっていて全部話そうとしているのがわかって、サランは途端に気恥ずかしくなった。
「別に謝らなくていい。それに礼を言わなければならないのは俺の方だ。いくら治癒魔法が嫌いとはいえ、あのときは限界だったから、治癒魔法を使ってもらうより他なかった。そして治癒魔法をしてもらったわけだが、あんなことは初めてで俺は驚いた」
「あんなこと?」
「そう俺にとって治癒魔法は痛みや変な感覚と引き換えに症状を治すものだった。痛みを麻痺させるパラリシスを使ってもらったとしても施術後頭痛に苦しむことも多くて、治癒魔法は大嫌いなんだが、サランの治癒魔法は全然違った。パラリシスも絶妙な匙加減で穏やかに効いて痛みは全くなかったし、なによりもサランの治癒魔法は心地よかった。優しくて、温かかった。俺が知る限り、ダントツで一番の治癒魔法だった」
「そ……そりゃ……ど……どうも……」
手放しでアンドレアに褒められる日が来るとは思わず、サランは驚いてしどろもどろになってしまう。
「施術が終わった後も、足が温かくて気持ちよかった。頭痛もなかったし、気分も悪くなることもなかった。それどころか、治癒魔法から流れてきた怪我を治したいと心から思ってくれる優しい気持ちがどうしても忘れられなかった。治癒魔法は相変わらず苦手だけれど、その治癒魔法ならいいと……いや、好きだとさえ思った。すごく癒された。どうして仮面の下の顔を見せてもらわなかったのか、名を無理にでも聞かなかったのかと、ずっと後悔していた」
聞いたことがないほどのアンドレアの真摯な声にサランは何も言えなくなって黙りこくった。アンドレアが好きだと言ったのはサランの治癒魔法のことなのに、顔が熱くてたまらない。恥ずかしくてたまらなかったが、アンドレアがいつになく真剣なので茶化すことなんてできなかった。
「そして、同じころめちゃくちゃ生意気な奴に会った。平民でチビのくせにやたら言い返して盾突いてくる。そのうちにポンポン言い返してくるのが面白いと思うようになって、くるくる変わる表情も気になって、ついいじめたくなった。ただの変わった面白いヤツだと思っていたのに」
「ただの面白いヤツって……なんだよ、それ……」
こんなときも思わず突っ込みを入れなきゃ気が済まない自分が呪わしかったが、サランの言葉にアンドレアはびっくりするほど優しく笑うものだから、もうサランはどうしていいかわからなかった。
「面白いヤツだと思っていたんだけどな。面白いだけじゃなくて、すごく愛情深くて、いいヤツで……可愛いって気付いてしまった……」
彼の視線は見つめ返すなんてことは到底できないほど、熱かった。
「一方で、仮面舞踏会のとき治癒魔法をかけてくれた人のこともやっぱり俺は気になって仕方なくて……同時に二人にこんなにも惹かれることがあるのかと自分の気の多さに呆れていた時だよ。サランが子猫に治癒魔法を使ったのは。なぁ、サラン。目を逸らさないで聞いてくれ」
そう言われても、いつも喧嘩ばかりの彼の真摯でそれでいて甘い声なんてどうしたらいいかわからなかった。
「わ……っ」
アンドレアの情熱的な赤い瞳が見られずにいると、顎に男らしい長い指がかかって、上を向かせられた。いつものやんちゃなシトラスの香りは、近づくとこんなにも色っぽいのかとサランは密かに狼狽える。
彼の香りと、真剣な赤い瞳。
心臓が破裂しそうなほど高まって、顔が熱い。
まさか、とかそんなはずないとか、そういう言葉がサランの頭の中を駆け巡る。
「そりゃ二人に惹かれるはずだよ。同一人物なんだから。同一人物だと分かった瞬間に確信したよ。俺は好きなんだ、サランのことが」
それらをサランが見た時だった。
グゥゥ……
「ぷ……っくくく……」
「笑うなよー、僕は朝はお腹が空いて起きるタイプだから、朝ごはん見るとお腹なっちゃうの!」
真っ赤になってサランが抗議する。
「すっげぇでけぇ腹の音なんだもん、お前ほんとマヌケ……っ」
「もういい! 帰る……っ」
「……っわ……っ悪かった! ごめん! 謝るから、帰るな……いや、帰らないでください……っ」
アンドレアは慌てたようにサランの腕を掴んだ。
「……離してよ。もう帰る。朝ごはんは家で食べる」
「ごめん。そんなこと言わないでくれ。あの……お前……いや、サランを見るとなんか……その……いじめたくなるっていうか……もう意地悪言わないとは約束できねぇけど、なるべく改める」
「……なるべく改めるってなんだよ……絶対しないって言えよ」
「絶対……は無理かも。だって、お前可愛いし面白いし。ついいじめたくなる」
「は⁉ 可愛い? 確かに僕は可愛いけど、アンドレアに言われるとびっくりする」
可愛いと言われて、サランは心底驚いてアンドレアを見た。
「帰らないでくれるか?」
「わかった、わかった。帰らない。ユノが故郷に帰ったから、僕が落ち込んでるって思って朝ごはん用意してくれたんだろ? 一緒に食べるよ」
いつも尊大な男が、へりくだった態度を取るので、サランも怒りの矛先を収めることにした。
「よかった……帰らないでくれて、嬉しい」
アンドレアは安堵した顔つきになると、サランの頬にその大きな掌を添えた。
そして、徐々に唇が近づいてきて……
「ちょっ……な……なに……?」
「なにって……キスだろ」
「はぁ⁉ キスぅ⁉ いや、この前寮の部屋行ったときも言ったけど、冗談でそれしようとするのやめろって! あ、もしかしてそれも意地悪のひとつ?」
「違うに決まってるだろ。俺は交流会の夜サランにキスしたかったからキスしたし、今も寮の部屋でもサランにキスしたかった……意地悪でも冗談でもない……っぶっ……」
驚きすぎたサランは思わず両手でアンドレアの顔を遮った。サランの掌に思いっきりアンドレアの顔が当たって、アンドレアはつぶれたような声を上げた。
「へ? 交流会の夜のってほんとのキス……のつもりだったの……?」
「キスじゃなかったらなんなんだと思ってたんだよ?」
アンドレアはサランの掌を退けると、唇を尖らせた。
「えーと……冗談じゃないなら、頭突きしようとして口がぶつかったとか?」
「……なんて解釈だ……じゃ、やっぱりもう一回するしかねぇな」
アンドレアは一瞬瞠目して呆然と呟いたが、その赤い髪を振るともう一度サランに唇を近づけた。
「ぎゃー! ちょっと待って!!」
「ぎゃーってなんだよ……失礼だな……これでも一応婚約者にしてくれってヤツは後を絶たないんだぞ」
「そ……それは有名な話だから知ってるけど……っ……アンドレアはユノが好きなんじゃないの? 僕は他の人が好きな人とはキスなんてしたくないし。それに僕にだって……」
「たしかにユノのことはとても好きだ」
「じゃあなんで……っ……僕にキスなんか……」
「ユノのことは好きだし、心から尊敬している。でも恋愛感情とは違う」
「は……?」
アンドレアの言葉にサランは驚きすぎて呆けた声を出してしまったが、彼は意に介さず続けた。
「生徒会室で初めてユノに出会った日、ユノがかなり腕が立つ戦士だとは見てすぐにわかった。戦士の勘だ。あいつの特性は賢者でも治癒師でもなく戦士だろ?」
「すごい! よく分かったね! 僕でもユノが戦士って聞くまでわからなかったのに!」
突然始まった話だが、ユノを戦士と言い当てた人は初めて見たので、サランは驚きの声を上げた。
「まぁなって言いたいとこだが、俺も特性戦士だから同じものを感じただけだと思う。キリヤ様を隣で守るポジションを俺から奪いそうな奴が現れた気がしたんだ。俺はそれでかなり苛立った。もちろんそれまでシュリがキリヤ様の隣にはいたが、俺はシュリは眼中になかったし、イヴァンも俺とはタイプが違うから、俺をこんなに焦らせたヤツは初めてだった」
「うん? やっぱユノへの告白じゃない? これ」
「ちげーよ。ちゃんと全部聞けって。俺は焦りで、生徒会から帰るとすぐに、寮の訓練場で狂ったように攻撃魔法の練習をした。そして、焦りから、自分の足に攻撃を当てるという馬鹿な怪我をした。ユノが初めて生徒会に来た日の夜に、何があったかは覚えているか?」
「……仮面舞踏会……」
アンドレアは穏やかな表情で語りだしたので、サランも素直に答えた。
「そうだ、仮面舞踏会だ。俺は医務室のフリーレンス先生の治癒魔法が……いやそもそも治癒魔法そのものが苦手だったので、怪我の手当てをしないまま仮面舞踏会に出た。しかし、仮面舞踏会の会場で歩いているうちにどんどん怪我は悪化し、怪我を庇うために魔力もかなり消費してしまった。そんなとき……」
「僕とぶつかった?」
サランだって忘れることができない印象的な出来事だ。
「そうだ。普段ぶつかったら壊してしまいそうなほど小さい奴とぶつかって、俺は歩けなくなった」
「失礼だな。アンドレアがぶつかったくらいで壊れるもんか。僕だって男だぞ……っ」
サランが言うと、アンドレアはふ、っと笑った。あまりに愛しみに満ちた笑みだったので、サランは文句を呑み込んで狼狽えた。
「吹っ飛ぶよ。お前華奢だもん。まぁ、それはいいとして。ぶつかった小さい奴が、治癒魔法を使えると言うんだ」
「わ……わかったよ。あの日のことにアンドレアが気付いたのはわかった。黙っててごめん。だから全部話さないでいいって……」
あの日のことをアンドレアがすべてわかっていて全部話そうとしているのがわかって、サランは途端に気恥ずかしくなった。
「別に謝らなくていい。それに礼を言わなければならないのは俺の方だ。いくら治癒魔法が嫌いとはいえ、あのときは限界だったから、治癒魔法を使ってもらうより他なかった。そして治癒魔法をしてもらったわけだが、あんなことは初めてで俺は驚いた」
「あんなこと?」
「そう俺にとって治癒魔法は痛みや変な感覚と引き換えに症状を治すものだった。痛みを麻痺させるパラリシスを使ってもらったとしても施術後頭痛に苦しむことも多くて、治癒魔法は大嫌いなんだが、サランの治癒魔法は全然違った。パラリシスも絶妙な匙加減で穏やかに効いて痛みは全くなかったし、なによりもサランの治癒魔法は心地よかった。優しくて、温かかった。俺が知る限り、ダントツで一番の治癒魔法だった」
「そ……そりゃ……ど……どうも……」
手放しでアンドレアに褒められる日が来るとは思わず、サランは驚いてしどろもどろになってしまう。
「施術が終わった後も、足が温かくて気持ちよかった。頭痛もなかったし、気分も悪くなることもなかった。それどころか、治癒魔法から流れてきた怪我を治したいと心から思ってくれる優しい気持ちがどうしても忘れられなかった。治癒魔法は相変わらず苦手だけれど、その治癒魔法ならいいと……いや、好きだとさえ思った。すごく癒された。どうして仮面の下の顔を見せてもらわなかったのか、名を無理にでも聞かなかったのかと、ずっと後悔していた」
聞いたことがないほどのアンドレアの真摯な声にサランは何も言えなくなって黙りこくった。アンドレアが好きだと言ったのはサランの治癒魔法のことなのに、顔が熱くてたまらない。恥ずかしくてたまらなかったが、アンドレアがいつになく真剣なので茶化すことなんてできなかった。
「そして、同じころめちゃくちゃ生意気な奴に会った。平民でチビのくせにやたら言い返して盾突いてくる。そのうちにポンポン言い返してくるのが面白いと思うようになって、くるくる変わる表情も気になって、ついいじめたくなった。ただの変わった面白いヤツだと思っていたのに」
「ただの面白いヤツって……なんだよ、それ……」
こんなときも思わず突っ込みを入れなきゃ気が済まない自分が呪わしかったが、サランの言葉にアンドレアはびっくりするほど優しく笑うものだから、もうサランはどうしていいかわからなかった。
「面白いヤツだと思っていたんだけどな。面白いだけじゃなくて、すごく愛情深くて、いいヤツで……可愛いって気付いてしまった……」
彼の視線は見つめ返すなんてことは到底できないほど、熱かった。
「一方で、仮面舞踏会のとき治癒魔法をかけてくれた人のこともやっぱり俺は気になって仕方なくて……同時に二人にこんなにも惹かれることがあるのかと自分の気の多さに呆れていた時だよ。サランが子猫に治癒魔法を使ったのは。なぁ、サラン。目を逸らさないで聞いてくれ」
そう言われても、いつも喧嘩ばかりの彼の真摯でそれでいて甘い声なんてどうしたらいいかわからなかった。
「わ……っ」
アンドレアの情熱的な赤い瞳が見られずにいると、顎に男らしい長い指がかかって、上を向かせられた。いつものやんちゃなシトラスの香りは、近づくとこんなにも色っぽいのかとサランは密かに狼狽える。
彼の香りと、真剣な赤い瞳。
心臓が破裂しそうなほど高まって、顔が熱い。
まさか、とかそんなはずないとか、そういう言葉がサランの頭の中を駆け巡る。
「そりゃ二人に惹かれるはずだよ。同一人物なんだから。同一人物だと分かった瞬間に確信したよ。俺は好きなんだ、サランのことが」
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~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
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※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。