強面騎士団長と僕はケンカしてばかりだったのに、いつの間にか溺愛されていました

ゆなな

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4章

僕が好きなのは

「そ……そんなこと言われたって、アンドレアは僕に意地悪言ったりからかってばっかで、ユノにだけ優しいから、本気でアンドレアはユノが好きだと思ってたんだ。頭がついていかないんだけど……」

 サランは混乱するままに伝えた。

「ユノのことはその人間性も実力も学力も心から尊敬している。だが、キリヤ様がユノを愛していて、ユノもキリヤ様を好きだと早い段階でもうわかっていた」

「最初から失恋だと思って身を引いたってこと?」

 サランはアンドレアに尋ねた。

「それは違う。ユノの良さに気付いた時には、すでに俺の心には優しい治癒魔法を掛けてくれた魔法使いがいたんだ。キリヤ様が本気でユノを愛していると気が付いた時、キリヤ様はやはりさすがだと感嘆したが、嫉妬の気持ちは湧き出なかった。そして、ユノには敬愛の気持ちを込めて敬意を持った行動が自然とできるんだが、サランを見るとなんだかつい意地悪をしたくなる……俺は好きな子に意地悪したくなるたちみたいだ」

「……な……なんだよ、それ……子供じゃんか」

 さらりと好きな子だと言われ、サランはなんて返したらいいかわからず、しどろもどろに言う。頰が火照って仕方ない。
 
「そうだな。直さなきゃ、いつまで経ってもユノには勝てねぇと思うんだけどなかなか難しい」

「え……?」

 ユノを好きなことがばれていたとは思わず、サランはまた動揺した。

「サランがユノに恋していることなんて知ってる。よく見ているからな。でもユノへの思いは深くても純粋すぎて、現実的な恋愛だとは思えないから、俺にもチャンスはあると思っている」

「ぶ……っなんだよっそれ……っ……僕のユノに対する気持ちは正真正銘現実の恋愛だし、僕の初恋だよっ」

 サランが叫ぶように言うと、アンドレアはそれとは逆に落ち着いて口を開いた。

「イヴァンに聞いたところ、キリヤ様はユノに会いに北部へ行く時間を作るために、ここのところ寝る間もないくらい任務に勤しまれているそうだ」

「なんだよ、藪から棒に。話がコロコロ変わるな。キリヤ会長がユノに会うために寝ずに無理をするなんて、別にありえそうなことだろ」

「キリヤ様は北部に出向くことでなにか伝えたいことがあるんだろう。サランはそれをキリヤ様が伝えに行くのを黙って見てるのか?」

「……だって、キリヤ会長だよ?! 僕なんかが勝てるわけない。ユノだってキリヤ様をすごく好きなのもわかるし、お邪魔虫に思われたくない。それに別にキリヤ様とユノがどうなったって、僕がユノを好きなことには変わりないし」

 サランが捲し立てる一方で、アンドレアはとても落ち着いて話していた。

「俺は、相手が誰だって遠慮なんかできねぇし、友達じゃ満足できない。『その先』が欲しい。サランがユノを好きな気持ちが恋じゃないとは言わないが、頭の先から足の先まで全部欲しくて頭がおかしくなるような、生身を伴った恋愛とは違うように見える」

「ちょ……っや……やめろって、」

 そう言いながら、彼の指先がサランの頬を撫でて唇に触れたのが、すごく生々しく感じられて、サランはその場で飛びあがった。
 サランが嫌がると、アンドレアはさっと手を引いた。

「生身を伴ったって言うと、体が目当てみたいに聞こえるかもしれないが、そういうことじゃない……いや、体も欲しいから全く違うと言えばそうではないし、二人で笑っていられればそれでだけで幸せだ、とは俺は思えない。心も体も両方欲しい。全部で愛し合いたい。それが俺の気持ちだ」

「……そ……そんなこと言われても、僕の好きな人はユノだし、アンドレアが…僕を好きだなんて思いもよらなかったし……っアンドレアの気持ちは嬉しいけれど、応えられない……」

 顔が熱い。いや、顔だけじゃなく全身が熱く火照ってしまったみたいだった。
 とんでもないことを言われて、全身が心臓にでもなってしまったかのように、鼓動は大きくなった。
 だから、アンドレアの申し出は断らないといけないと強く感じた。こんなにいつもドキドキハラハラしていたら身が持たない。

「急いで答えを出さなくていい。ライバルがユノだなんて、めちゃくちゃ厳しいし分が悪い。お前にとってユノがどんなに大切なのかわかっているし、ユノを大切に愛してるサランを丸ごと好きになったからサランがユノを好きでもいいんだ。でもな、そんなユノにもサランのことだけは譲れない。ユノを愛していていいよ。でもユノに対する気持ちごと、全部サランを俺のものにしたい。俺がそういう想いだとわかった上で、俺のことを改めてちゃんと見て考えてほしい」

「な……なにそれ……ややこしいにもほどがあるだろ……それに僕はものじゃないっ……もう! 早く食べないと騎士団の朝礼に遅れても知らないから!」

 あまりに真剣な彼の様子に、サランは掠れた声でそう言うと、身を乗り出してサランの耳元に今にも唇を落としそうな位置で話すアンドレアをグイっと押しやった。
 そして冷めてしまったスコーンにクロテッドクリームとイチゴジャムを塗りたくって、むしゃむしゃと食べた。

「うん、冷めても美味しい」

 美味しいものを口にすると、少しだけ落ち着いて、サランは冷静を取り戻すように言った。

「ぷ……っくく……本当にうまそうに食うな……あぁほら、クリーム付いてる」

 アンドレアが、長い指でサランの口の端に付いたクリームを拭い取った。

「ひゃっ……じ……自分で取れるって……!」

「お。サランの唇に付いていたから甘いな」

 唇の端に触れられて、不覚にも甘い痺れが走ってしまい、サランは大きな声を上げたが、アンドレアはサランの唇の端に付いていたクリームをさも美味しそうに舐めた。

「や……やめろやめろ! 甘い雰囲気なんか出すなっ! そ……そんなことより、さっさと食べろよなっ……僕だって治癒院に遅刻しちゃうだろ」

 そう言ったサランはもぐもぐとスコーンを口に頬張り、フルーツの盛り合わせの真っ赤なイチゴをぷすっとフォークに刺した。

「あ、俺もイチゴ食いたい」

「いっぱいあるじゃん。どーぞ」

「ん」

「はい、あーん……っておい!! 自分で食べろよ!!」

「んなこと言って、サラン、やさしーく食わせてくれたじゃん。ありがとう、うまい」

「く……っ僕は生まれながらにして治癒師だから面倒見がいいんだよ……それだけだから……っ」

「そうだな。初めて会ったときも俺が怪我しているってわかったら放っておけなかったもんな、サランは。そういう実は面倒見良くて優しいとこ、すげぇ好き」

 そう言ったアンドレアはじっとサランを見つめてくる。その目線が、甘くて、甘くて……
 思わずサランは下を向いた。
 見た目の可愛さを女の子に褒めてもらうことは沢山あったが、こんな風にサランのことを褒めてくれたのは今までユノ以外にはいなかったし、ユノは友達として褒めてくれたから、こんなにも甘くはなかった。

    
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