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高俊×尚
Firstkiss2
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「瞼あんまり腫れない方なんだな、尚。これならいつもどおりになるよ」
よかった、と尚の瞼の上にアイスノンを置いて、 結人は尚の
鼻の頭に青みがかったコントロールカラーを薄く塗っている。
これで上からパウダー叩けば鼻の赤いの隠せるから、と言う。
「僕、今学園ドラマ撮ってるじゃん?」
ぽそり、と尚が呟いた。
「あぁ。あれ、生徒役端から端までよく人気若手俳優とかアイドルとか集めたよな。お前もだけど面子凄いじゃん 」
アイスノンで瞼を冷やしているから結人の顔は見えないけど優しい顔をしてくれてるのがわかる。
「……キスシーンあるんだ。事務所もGoサイン出したんだって」
「……あー……」
察しのよい結人は、それを高俊が尚に言ったのだとわかったのだろう。結人の声が少し重たくなった。顔が見えたら多分しかめてるんだろうなってことまで感じられた。
好きな人がいても仕事でキスをしなければならないっていうことは、こういう職業に就いてるのだから仕方ないと尚はわかっているつもりだ。
でも、好きな人に、他の人とキスしろって言われるのは辛い。
しかも、尚は誰ともキスしたことがなかった。 ファーストキスってやつだ。
「ファーストキスなんてさ、 馬鹿みたいに拘ってないでさっさと済ませておけばよかったんだよね。二十歳も過ぎるのに大事に取っておくから拗らせちゃった」
尚が少し自嘲ぎみに笑うと、 瞼がふ、と軽くなった。アイスノンを結人が持ち上げたのだ。どうしたのかと思って瞼を開けると、すぐ近くに結人の瞳があってびっくりした。
「わ……結ちゃん……?」
「馬鹿じゃないよ」
結人はいつもより低い声で言った。
「大事なことだよ、尚。お前がこのまま好きな人と出来ないまま仕事で初めてのキスをすることになっちゃうとしても、大切に思っていたことは間違ってなかったと俺は思う」
「結ちゃん……」
「でもさー、いっそ思いきってドラマの撮影前に尚から唇奪っちゃえば?」
「結ちゃん?!冗談やめてよ」
「強ち冗談でもないんだなー。 好きな人とだったらどんなキスでも後悔ないよ」
いたずらっぽい顔であったが、結人の表情をどこか切なく感じた。
そのときだった。
「おい、俺と伊織終わって孝太郎始まったぞ。結人、もうスタジオでスタンバイしといた方がいい」
征弥が控え室に現れた。
「おー、わかった。征弥、悪いけど続きやっといて。軽くパウダーブラシで馴染ませてやれば大丈夫だと思う。あんまパウダー付けすぎないように注意して。……あー、あとさ俺の声廊下に聞こえてた?」
結人は征弥に言ってメイク道具を放りながら聞く。
「いや、別に聞こえなかったけど」
征弥の返答に結人はそっか、と短く返して
「じゃあな!終わったら尚もすぐ来いよ」
と言って慌てたように行ってしまった。
「ごめん……征弥……?あの……自分でやるよ?」
征弥が黙りこくってるので、謝って振り返ると何とも言えない顔をしてメイク道具を見つめている征弥がいた。
「征弥?」
「……あ……悪い。別に何でもない。いいよ、 俺がやってやるよ」
征弥はそう言って、えーと何だっけ?ブラシでパウダー?なんて呟きながら渡されたメイク道具をゴソゴソしだした。
一時期は口をきかないほどの仲だったが、最近は同じグループのメンバーとして話をしているみたいだった。グループで引き受ける大きな仕事について何かは高俊と3人で結構話し込むこともあるようだ。ただ、ふとした瞬間何かを我慢したみたいな顔をしている征弥を見ることがある。
「征弥、結ちゃんのこと先に行かせたってことは、結ちゃんの頭痛は口実で僕の調子が悪いってこと気付いてたよね」
「あぁ。結人の偏頭痛にしては、今日然程体調悪そうに見えなかったからな」
今日の結人の様子を回想しているのか、少し笑って征弥は言った。
「ごめんね。迷惑かけちゃって」
尚が謝ると
「色々我慢しなきゃなんねぇことばっかだからな。きついときはお互い様だろ。撮影の順番変えただけで、時間は押してねぇから迷惑掛かってない」
気にすんなと笑ってパウダーをのせたブラシで尚の顔をさっと撫でる。自分にも他人にも厳しそうに見える1つだけ年上の征弥は本当に参ってるときは実はすごく優しい。今こんなに優しいということは、本当に参ってるように見えるんだなと思って尚は思わず苦笑いをした。
「……っと、 こんなもんでいいんじゃねぇ? いつもどおりの尚に見えると思うけど」
征弥の声で顔を上げると、二人のお陰で鏡に映る尚は、涙を流したことなんて、全くわからない顔だった。
よかった、と尚の瞼の上にアイスノンを置いて、 結人は尚の
鼻の頭に青みがかったコントロールカラーを薄く塗っている。
これで上からパウダー叩けば鼻の赤いの隠せるから、と言う。
「僕、今学園ドラマ撮ってるじゃん?」
ぽそり、と尚が呟いた。
「あぁ。あれ、生徒役端から端までよく人気若手俳優とかアイドルとか集めたよな。お前もだけど面子凄いじゃん 」
アイスノンで瞼を冷やしているから結人の顔は見えないけど優しい顔をしてくれてるのがわかる。
「……キスシーンあるんだ。事務所もGoサイン出したんだって」
「……あー……」
察しのよい結人は、それを高俊が尚に言ったのだとわかったのだろう。結人の声が少し重たくなった。顔が見えたら多分しかめてるんだろうなってことまで感じられた。
好きな人がいても仕事でキスをしなければならないっていうことは、こういう職業に就いてるのだから仕方ないと尚はわかっているつもりだ。
でも、好きな人に、他の人とキスしろって言われるのは辛い。
しかも、尚は誰ともキスしたことがなかった。 ファーストキスってやつだ。
「ファーストキスなんてさ、 馬鹿みたいに拘ってないでさっさと済ませておけばよかったんだよね。二十歳も過ぎるのに大事に取っておくから拗らせちゃった」
尚が少し自嘲ぎみに笑うと、 瞼がふ、と軽くなった。アイスノンを結人が持ち上げたのだ。どうしたのかと思って瞼を開けると、すぐ近くに結人の瞳があってびっくりした。
「わ……結ちゃん……?」
「馬鹿じゃないよ」
結人はいつもより低い声で言った。
「大事なことだよ、尚。お前がこのまま好きな人と出来ないまま仕事で初めてのキスをすることになっちゃうとしても、大切に思っていたことは間違ってなかったと俺は思う」
「結ちゃん……」
「でもさー、いっそ思いきってドラマの撮影前に尚から唇奪っちゃえば?」
「結ちゃん?!冗談やめてよ」
「強ち冗談でもないんだなー。 好きな人とだったらどんなキスでも後悔ないよ」
いたずらっぽい顔であったが、結人の表情をどこか切なく感じた。
そのときだった。
「おい、俺と伊織終わって孝太郎始まったぞ。結人、もうスタジオでスタンバイしといた方がいい」
征弥が控え室に現れた。
「おー、わかった。征弥、悪いけど続きやっといて。軽くパウダーブラシで馴染ませてやれば大丈夫だと思う。あんまパウダー付けすぎないように注意して。……あー、あとさ俺の声廊下に聞こえてた?」
結人は征弥に言ってメイク道具を放りながら聞く。
「いや、別に聞こえなかったけど」
征弥の返答に結人はそっか、と短く返して
「じゃあな!終わったら尚もすぐ来いよ」
と言って慌てたように行ってしまった。
「ごめん……征弥……?あの……自分でやるよ?」
征弥が黙りこくってるので、謝って振り返ると何とも言えない顔をしてメイク道具を見つめている征弥がいた。
「征弥?」
「……あ……悪い。別に何でもない。いいよ、 俺がやってやるよ」
征弥はそう言って、えーと何だっけ?ブラシでパウダー?なんて呟きながら渡されたメイク道具をゴソゴソしだした。
一時期は口をきかないほどの仲だったが、最近は同じグループのメンバーとして話をしているみたいだった。グループで引き受ける大きな仕事について何かは高俊と3人で結構話し込むこともあるようだ。ただ、ふとした瞬間何かを我慢したみたいな顔をしている征弥を見ることがある。
「征弥、結ちゃんのこと先に行かせたってことは、結ちゃんの頭痛は口実で僕の調子が悪いってこと気付いてたよね」
「あぁ。結人の偏頭痛にしては、今日然程体調悪そうに見えなかったからな」
今日の結人の様子を回想しているのか、少し笑って征弥は言った。
「ごめんね。迷惑かけちゃって」
尚が謝ると
「色々我慢しなきゃなんねぇことばっかだからな。きついときはお互い様だろ。撮影の順番変えただけで、時間は押してねぇから迷惑掛かってない」
気にすんなと笑ってパウダーをのせたブラシで尚の顔をさっと撫でる。自分にも他人にも厳しそうに見える1つだけ年上の征弥は本当に参ってるときは実はすごく優しい。今こんなに優しいということは、本当に参ってるように見えるんだなと思って尚は思わず苦笑いをした。
「……っと、 こんなもんでいいんじゃねぇ? いつもどおりの尚に見えると思うけど」
征弥の声で顔を上げると、二人のお陰で鏡に映る尚は、涙を流したことなんて、全くわからない顔だった。
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