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2章
10話
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目を覚ますとベッドの上ではなく、ベッドの下に敷かれた布団に寝ていた。
「やべっ…… 今日早番じゃん!何でアラーム鳴らないんだよっ」
思わず飛び起きて時間をチェックしようとスマホを見ると沢村から『お前は今日遅番』とだけメッセージが入っていた。
恐らく沢村は高弥の代わりに早番に行ったので、高弥は沢村の代わりに遅番の時間で出勤しろということだろう。
重い躯を起こすとベッドは狂乱の一夜のせいでぐちゃぐちゃだった。
「げ。もうどっちの何……とか思うとブルーだから考えるのやめよ……つーか布団敷いて寝かせてくれるならシーツも洗濯機入れておいてくれりゃいいのに」
ぶつぶつ文句を言いながらシーツを剥がして洗濯機に放り込む。
洗濯してる間に何か食べようと部屋に戻ると、布団を敷くために部屋の端に移されたローテーブルの上には高弥が好きな近所のパン屋のメロンパンが置いてあったのを見つけた。早朝のパン屋にあの男がわざわざ買いに行ったのかと思うと
「優しいのか、優しくないのか、どっちなんだよ。もぉ……」
と高弥は思わず座りこんだ。
昨日はあの後バスルームで意識が朦朧としてしまったところをベッドに運ばれて、それで……
ラットを起こした沢村に何度も、何度も激しく抱かれた。いつもはどちらかというと高弥が感じるところばかりを攻める沢村だが、昨夜はやたらと奥に入りたがって、より奥に受け入れることができる体位で何度も犯された。着せられていたTシャツの隙間からは恐ろしいほどに躯中に散らされた所有欲の印。咬まれた痕やキツく吸われたが色濃く残っていた。まるで獣の情交の痕のようなそれ。
「うわ……ビョーキみてぇ。引くわ……」
それから、 何度も執拗に舐めたり吸ったりしていたうなじに高弥はそっと手をやった。うなじの皮膚のなめらかな感触に、高弥は静かにため息を吐いた。咬まれたとすれば傷口が痛むだろう。それになめらかな感触からも傷がないことは感じ取れた。
昨夜は沢村は高弥に対する所有欲に苦しんでいたように見えた。獣が獲物を自分だけのものにしたいように、抱いたオメガを番にしたがるのはアルファの本能であるとも言える。
ラットを起こし、理性を失ったように高弥を抱いた。普通ならば後先考えられずにうなじを咬んで番にするだろう。
でも。沢村は昨夜も高弥を番にはしなかった。うなじに何度もくちびるを這わせて執着を見せていたくせに、強い意思で咬みたい欲望を耐えているようだった。
「結婚すんのに、他に番がいたらまずいもんなぁ」
ともすれば、婚姻よりも強い繋がりになってしまう番。 沢村が結婚してしてしまうんだったら、 せめて番にして欲しかったのかもしれないという自分の浅ましい気持ちに気が付いて高弥は愕然とした。
「愛人とか不倫とか、そんなの大嫌いなのに」
それでも、いいと思ってしまったのだ。他の人と結婚する男の番になりたかったというのはそういうことだ。それでもいいから咬んで欲しかった。
ばかみたいに、あのどうしようもない男が好きなのだ、高弥は。
「あーーもうやだ……」
そう言ってやけくそになって沢村が置いていったメロンパンにかじりつく。
「あま……」
とびきり甘くておいしいのに、高弥の目の奥は熱くなってじわりと視界がにじんだ。
「やべっ…… 今日早番じゃん!何でアラーム鳴らないんだよっ」
思わず飛び起きて時間をチェックしようとスマホを見ると沢村から『お前は今日遅番』とだけメッセージが入っていた。
恐らく沢村は高弥の代わりに早番に行ったので、高弥は沢村の代わりに遅番の時間で出勤しろということだろう。
重い躯を起こすとベッドは狂乱の一夜のせいでぐちゃぐちゃだった。
「げ。もうどっちの何……とか思うとブルーだから考えるのやめよ……つーか布団敷いて寝かせてくれるならシーツも洗濯機入れておいてくれりゃいいのに」
ぶつぶつ文句を言いながらシーツを剥がして洗濯機に放り込む。
洗濯してる間に何か食べようと部屋に戻ると、布団を敷くために部屋の端に移されたローテーブルの上には高弥が好きな近所のパン屋のメロンパンが置いてあったのを見つけた。早朝のパン屋にあの男がわざわざ買いに行ったのかと思うと
「優しいのか、優しくないのか、どっちなんだよ。もぉ……」
と高弥は思わず座りこんだ。
昨日はあの後バスルームで意識が朦朧としてしまったところをベッドに運ばれて、それで……
ラットを起こした沢村に何度も、何度も激しく抱かれた。いつもはどちらかというと高弥が感じるところばかりを攻める沢村だが、昨夜はやたらと奥に入りたがって、より奥に受け入れることができる体位で何度も犯された。着せられていたTシャツの隙間からは恐ろしいほどに躯中に散らされた所有欲の印。咬まれた痕やキツく吸われたが色濃く残っていた。まるで獣の情交の痕のようなそれ。
「うわ……ビョーキみてぇ。引くわ……」
それから、 何度も執拗に舐めたり吸ったりしていたうなじに高弥はそっと手をやった。うなじの皮膚のなめらかな感触に、高弥は静かにため息を吐いた。咬まれたとすれば傷口が痛むだろう。それになめらかな感触からも傷がないことは感じ取れた。
昨夜は沢村は高弥に対する所有欲に苦しんでいたように見えた。獣が獲物を自分だけのものにしたいように、抱いたオメガを番にしたがるのはアルファの本能であるとも言える。
ラットを起こし、理性を失ったように高弥を抱いた。普通ならば後先考えられずにうなじを咬んで番にするだろう。
でも。沢村は昨夜も高弥を番にはしなかった。うなじに何度もくちびるを這わせて執着を見せていたくせに、強い意思で咬みたい欲望を耐えているようだった。
「結婚すんのに、他に番がいたらまずいもんなぁ」
ともすれば、婚姻よりも強い繋がりになってしまう番。 沢村が結婚してしてしまうんだったら、 せめて番にして欲しかったのかもしれないという自分の浅ましい気持ちに気が付いて高弥は愕然とした。
「愛人とか不倫とか、そんなの大嫌いなのに」
それでも、いいと思ってしまったのだ。他の人と結婚する男の番になりたかったというのはそういうことだ。それでもいいから咬んで欲しかった。
ばかみたいに、あのどうしようもない男が好きなのだ、高弥は。
「あーーもうやだ……」
そう言ってやけくそになって沢村が置いていったメロンパンにかじりつく。
「あま……」
とびきり甘くておいしいのに、高弥の目の奥は熱くなってじわりと視界がにじんだ。
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