平凡な俺は魔法学校で、冷徹第二王子と秘密の恋をする

ゆなな

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強面騎士団長は宿敵だったはずなのに5章

再び始まる学校生活

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「ユノー、紅茶飲も。お菓子も食べる? たくさん移動して疲れたでしょ?」
 寮の前までビスコンティ家の馬車で送ってもらった二人は、寮の部屋に久しぶりに帰った。そこでせっせと荷物を整理しているユノにサランは声を掛けた。
「ありがとう、サラン。いつもの楓の蜜のお菓子のお土産だけど、それも出すからおやつ食べようか」
「クルリ村のお菓子は優しい味で大好きだから嬉しいよ。いつもお土産ありがと」
 そう言ってサランはユノに紅茶の入ったカップを渡した。
 ユノのベッドの天幕を捲り上げ、端に二人並んで腰かけた。
 小さな移動テーブルをその前に置いてユノのお土産のお菓子とアンドレアの侍従が寮でどうぞと言ってくれたチョコレートを並べた。
「ふふ。寮に戻ってきたなぁって感じ」
 ユノが優しく笑った。
「あれ? ユノ、もしかしてネックレス付けてる?」
「あ……これ?」
 よーく見るとセーターの襟ぐりのところにキラリと光るものを見つけてサランが言うと、ユノはそっとチェーンに指を引っかけてセーターの下からネックレスを出して見せてくれた。
 そのネックレスの先に青い宝石の付いたリングを見つけてサランは思わず息を呑んだ。
「そ……それって……僕なんかに見せてくれていいものなの⁉」
「サランならいいよ。キリヤがクルリ村の俺の家まで遥々これを渡しに来てくれたんだ」
「これって……魔法石の指輪だよね……?」
「うん。魔法石の指輪だよ。こんなのもらっちゃだめだよね。俺は卒業後故郷に戻らないといけないし、キリヤはこの国の王子なんだから、こんな大切なもの受け取ったって俺たちに卒業後一緒にいられる未来はないのに……」
 そう言いながら、ユノはネックレスの先に付いた指輪を見て顔を歪めた。
 この指輪に付いている宝石は魔法石といって、王族や一部の貴族などが生れるときに握りしめてくる宝石で、強い魔力が込められたものだ。その魔法石は二つに魔法で分けられて一つは自分で持ち、もう一つは結婚相手に渡す人が多いという。
 つまりキリヤはユノと結婚したい、そういうことなのだ。
 この国は同性同士の結婚は禁じていないし差別も少ないが、後継ぎを必要とする王族や高貴な貴族は子供の産める女性と結婚する。男同士で結婚した王族というのは少なくともサランは知らないし、ましてやその相手が平民だというのもあり得ないことだと思う。
 だけどキリヤは永遠を誓う指輪をユノに渡したし、ユノはそれを受け取った。
「でもそんなことは承知でキリヤ会長はユノに指輪を渡したし、ユノもそういう未来があったらいいなって少しは思っていたからその指輪を受け取ったんじゃないの? 大切にすればいいじゃん」
 これは完全なるサランの失恋だ。それなのに、指輪を愛おしさのあまり泣きそうな瞳で見ているユノにサランはそう言わずにはいられなかった。
「サラン……でも、いつか返さなきゃいけないのに……」
「それは返さなきゃいけないときになってから考えたら? 今は受け取りたいって思ったんでしょ? その気持ちを大切にすることは故郷を裏切ることなんかじゃないよ。その指輪をずっと持っていられてしかも故郷も復興できる! そんな未来を夢見て頑張ればいいじゃん……え? ええ⁉ ユノ⁉ 泣いてるの⁉ なんで⁉ 僕まずいこと言った⁉」
「……ありがとう、サラン。サランのそういうところにいつも救われてきたよ」
 その涙で濡れた目はとっても綺麗でサランが大好きでたまらないところの一つだ。
 ユノにそう言ってもらえてサランは嬉しかった。ユノの背負っているものに何かできるんじゃないかと思うほど傲慢にはなれない。でもサランと話すことで束の間気楽になってもらえたらいいなとずっと思ってきた。
 それが出来ているよって大好きな人に言われてサランはとっても嬉しかった。
 完全にユノがキリヤに取られてしまって寂しいけれど、嫉妬の気持ちや胸の痛みはなかった。ユノの性格ならば、誰にも話さないで自分で抱え込むような話なのにサランに打ち明けてくれたことがなによりも嬉しかった。
「で、サランはどうなの? アンドレアとなんかあったよね? この休暇中」
「ぶっ……ゴホっ」
「わ、サラン大丈夫?」
 お茶を飲んでいたサランが咽たので、背をユノが優しく摩ってくれる。
「あ……ありがと……突然どうしたの? ユノ」
「俺が帰る前と今のサランは全然雰囲気が違うと思って。あ、でも無理に言わなくてもいいんだよ」
 ユノはそう言って優しく微笑んだ。
「ううう……あのね、ユノ……」
 そんなユノの表情を見たら、サランは何もかも聞いてもらいたくなって、アンドレアに告白されたことをゆっくりと話した。
 恥ずかしくて話せないことがあることもユノはきっと理解してくれて、ただただ一生懸命聞いてくれた。
 好きな人に話す内容ではないような気はしたが、やっぱりサランは大好きなユノに聞いてもらいたかった。
「そっか。とうとうアンドレア、素直になれたんだね」
 ユノはサランの話を聞くと花が密やかに開くように笑った。
「とうとうってことは……ユノは気付いていたの?」
「うん。アンドレアが自分でサランに言うか、サランが自分で気が付くまでは俺が言うべきことではなかったからね」
「そっかーさすがユノ」
「ははは。全然さすがってほどじゃないよ。アンドレアの気持ちはわかりやすいし。でも自分に向けられている想いって、なかなか気付きにくいところがあるよね」
「ねぇ、ユノ……僕はどうすればいいと思う? 今まで何をどうすればいいかってあんまり悩まずに直感で決めてきたからさ……どうしたらいいかわからないんだ」
 まったく気が付かなかったサランにも優しい言葉を向けてくれるユノをサランは頼った。
「サラン、さっき俺に素敵なアドバイスくれたよね。そのまま返すことになっちゃうけど……アンドレアから手を伸ばされた時、その手を取りたいとサランが思ったのなら取っていいんじゃないかな。いつもの直感で大丈夫だよ」
「それが……わからないんだ。僕はアンドレアの手を取りたいのか取りたくないのか……わかんないんだ」
 ユノは微笑みながら言ってくれたけれど、やっぱりサランはどうしたらいいのかわからず唇を少し突き出しながら言うと、ユノはサランの頭を優しくなでてくれた。アンドレアに撫でられた時のように、心臓はバクバクしないけれど、温かくて安心する。そしてサランを優しくなでながらユノは口を開いた。
「じゃあきっとはっきりわかるときが来ると思うし、アンドレアはその時まで待てないわけじゃないと思うから、ゆっくり考えたら……え? 俺なんか変なこと言った?」
「あ……っえっと……な……なんでもない……っ……ゆっくり考えてみる……」
 ここ最近のアンドレアの様子にもしかしたら待てないかもしれない……と思ったとはサランは言えずに紅茶を飲んだ。
 ただ、ユノと話してサランのぐちゃぐちゃだった気持ちは、少しずつ整理されてきたように感じた。
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