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先輩。
1話
「好きなんだ。付き合って欲しい」
図書委員の千景がいつものように貸し出し業務のために図書室の受付カウンターに座っているときのことだった。
「……えっと……誰に言ってます?」
とても自分に向けられた言葉とは思えず、千景は目の前にいる人物に尋ねた。
中高一貫教育の進学校であるこの高校で前期まで生徒会長を務めていた彼は、誰もが振り返るほどの美貌を持っている高校三年生の先輩だった。更に先輩は成績も優秀らしく、それがまだ中等部である千景の耳にまで入ってくるほどの人物だった。彼に憧れている人は男女問わず多数いる。
比べて図書カウンターに座る千景は、他の図書委員に当番を押し付けられるため、毎日放課後の図書室のカウンターに座っているだけの生徒だ。大人しそうな見た目のせいで先輩や同級生のみならず後輩からも仕事を押し付けられまくっているそんな地味な生徒。
だから自分に告白されたのだとはすぐには思えず、聞き返してしまった千景に先輩はうっとり見惚れるほど美しく笑って、
「目の前の君に言ってるんだけど……上田千景くん。君が好きなんだ。僕と付き合ってもらえませんか」
と改めて言ったので千景の時間は完全にぴたりと止まってしまった。
実は先輩と話すのはこれが初めてではない。
『僕が借りる本、中等部の上田千景って子が先に借りてることが多いんだけど、その子って君かな?』
本を借りるときは本に挟まっている図書カードに記名して図書室のカウンターに提出するため、過去にその本を誰が借りたのかはカードを見ればわかるようになっているのだ。
今日と同じように図書室のカウンターで貸し出し業務をしていると、読書好きらしくよく本を借りに来る先輩からそう話しかけられた。本の趣味合うねってとびきり優しく微笑まれて、それから話をするようになった。
生徒会長だけでなくバスケ部の主将も務めていた忙しい彼が図書室を訪れることができる時間はほんの僅かであったが、言葉を交わすことができた日は嬉しくて顔が緩んでしまうのを抑えられなかった。
先輩が6月頃にバスケ部と生徒会長を引退してからは、受験勉強を図書室ですることが増えた。その静謐な横顔を卒業してからも忘れないようにと千景はカウンターからこっそり眺めていたのだ。
高等部の先輩なんて、中等部の千景から見たら雲の上にいるような存在だ。加えて生徒会長でバスケ主将ときたらもうそれはとんでもなく大きな隔たりが感じられた。この恋心が実ることなんて露ほども期待していなかった。たまに話せるだけでも充分過ぎる思っていた。
だからその日の先輩の告白は千景にとっては青天の霹靂そのもので、固まってしまうのも無理はなかった。そんな千景が壊れたおもちゃのようにぎこちなく頷くまでは、随分と時間が掛かってしまった。だが先輩はカウンター前でそんな千景を根気強く待ってくれた。千景がようやく頷くとそれはそれは嬉しそうに笑ってくれて、実はかなり先輩も緊張していたんだ、と密やかに打ち明けてくれた。
そうして、二人は恋人同士になった。
図書委員の千景がいつものように貸し出し業務のために図書室の受付カウンターに座っているときのことだった。
「……えっと……誰に言ってます?」
とても自分に向けられた言葉とは思えず、千景は目の前にいる人物に尋ねた。
中高一貫教育の進学校であるこの高校で前期まで生徒会長を務めていた彼は、誰もが振り返るほどの美貌を持っている高校三年生の先輩だった。更に先輩は成績も優秀らしく、それがまだ中等部である千景の耳にまで入ってくるほどの人物だった。彼に憧れている人は男女問わず多数いる。
比べて図書カウンターに座る千景は、他の図書委員に当番を押し付けられるため、毎日放課後の図書室のカウンターに座っているだけの生徒だ。大人しそうな見た目のせいで先輩や同級生のみならず後輩からも仕事を押し付けられまくっているそんな地味な生徒。
だから自分に告白されたのだとはすぐには思えず、聞き返してしまった千景に先輩はうっとり見惚れるほど美しく笑って、
「目の前の君に言ってるんだけど……上田千景くん。君が好きなんだ。僕と付き合ってもらえませんか」
と改めて言ったので千景の時間は完全にぴたりと止まってしまった。
実は先輩と話すのはこれが初めてではない。
『僕が借りる本、中等部の上田千景って子が先に借りてることが多いんだけど、その子って君かな?』
本を借りるときは本に挟まっている図書カードに記名して図書室のカウンターに提出するため、過去にその本を誰が借りたのかはカードを見ればわかるようになっているのだ。
今日と同じように図書室のカウンターで貸し出し業務をしていると、読書好きらしくよく本を借りに来る先輩からそう話しかけられた。本の趣味合うねってとびきり優しく微笑まれて、それから話をするようになった。
生徒会長だけでなくバスケ部の主将も務めていた忙しい彼が図書室を訪れることができる時間はほんの僅かであったが、言葉を交わすことができた日は嬉しくて顔が緩んでしまうのを抑えられなかった。
先輩が6月頃にバスケ部と生徒会長を引退してからは、受験勉強を図書室ですることが増えた。その静謐な横顔を卒業してからも忘れないようにと千景はカウンターからこっそり眺めていたのだ。
高等部の先輩なんて、中等部の千景から見たら雲の上にいるような存在だ。加えて生徒会長でバスケ主将ときたらもうそれはとんでもなく大きな隔たりが感じられた。この恋心が実ることなんて露ほども期待していなかった。たまに話せるだけでも充分過ぎる思っていた。
だからその日の先輩の告白は千景にとっては青天の霹靂そのもので、固まってしまうのも無理はなかった。そんな千景が壊れたおもちゃのようにぎこちなく頷くまでは、随分と時間が掛かってしまった。だが先輩はカウンター前でそんな千景を根気強く待ってくれた。千景がようやく頷くとそれはそれは嬉しそうに笑ってくれて、実はかなり先輩も緊張していたんだ、と密やかに打ち明けてくれた。
そうして、二人は恋人同士になった。
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