美形に溺愛されて波乱万丈な人生を送ることになる平凡の話

ゆなな

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地味なのにアイドルになってしまった俺が年下の人気メンバーの面倒を見ていたら溺愛されてしまった話

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 「ねぇ、僕、高校卒業したよ」
 美しく輝く瞳はあの頃のままだったけど、その視線は俺の遥か上から注がれるものに変わっていた。
 

 あれは今からもう四年も前のことだった。
 まだまだ幼かった彼だが、キラキラと大きく輝く瞳にキラキラ光る天使の輪が乗ったような髪。内側からキラキラ光るような肌。伸びやかな四肢は成長期特有の美しさがあった。
 生まれながらにして、アイドルになる運命みたいな子。
 俺みたいに、運命の悪戯が過ぎてしまってアイドルになった男とは全く違う、指の先まで美しいアイドル。
 そんな完璧に綺麗で可愛い子が、俺を少し下から見上げ、睫毛を震わせながら俺に告白してきた。
「……っハルノさん、好きです……っ付き合って下さい」
 上気した頬の健気な様子。どうしても耐えられず溢れてしまったかのような幼くも切ない告白。
 あまりの可愛らしさに俺の胸の奥はきゅんと締め付けられた。
 あぁ、これが俗に言うキュンってやつなのか。
 なんて、思ったけれど、俺は彼の可愛い告白を受けるわけにはいかなかった。
 なにしろ、俺は彼より八つも歳上で、告白を受けたときはもうとっくに成人を迎えていた。
 同じグループになった幼くも将来性抜群の彼を教育して守って欲しいと事務所の上層部に頼み込まれてもいた。
 俺みたいなアイドルとしてのカリスマ性に欠け、些か地味な俺がこのグループに入れたのも、俺が常識的な感覚を持ち、素行も良く、若いメンバー達をきちんと教育できるから。
 そんなところだと思うのに、俺がその約束を違えて未成年の琥珀と付き合うわけにはいかなかったし、美しい彼を汚すようで、俺が彼と付き合うなんてとんでもなかった。
「琥珀……気持ちは嬉しいけれど……俺は琥珀と付き合うことはできな……?!」
 俺が断りの言葉を口にしかけたときだった。
 美しい宝石のようにキラキラした琥珀の大きな瞳にぶわりと水の膜が盛り上がった。
 悲しそうに琥珀が長い睫毛を瞬かせると、ぽろり、と雫がなめらかな頬を伝った。
「……ハルノさん……っ僕のこと嫌いなんですか……?」
「そんな……っ嫌いなわけないよっ……」
 可愛い琥珀が泣くのが俺は何より苦手だったので、俺は条件反射でそう返事をしていた。
「じゃあ好き?」
 ひくり、と喉を震わせて、可愛い琥珀がもう一度俺に尋ねた。
「好き……だよ」
 そう、琥珀のことは嫌いなわけない。それどころか大好きだ。他の人には警戒心いっぱいの彼が、俺を頼って慕ってくれる健気な姿は、本当に可愛い。
 だけどまだ14歳の彼が8つも年上の、それも男の俺を好きだなんて、何か別の感情と勘違いしているように思えてならなかった。
 俺が学校まで車で送り迎えしてやってるし、仕事もレッスンもずっと一緒だから、勘違いしているだけに思えてならなかった。
 本当に悲しそうに涙を流す可愛い可愛い琥珀に、お前の想いは勘違いなんだよ、とはっきりと告げることはどうしてもできなかった。
 そして、そんな勘違いを大人の狡さで受け取って、美しい琥珀を汚すことなんてことも、俺には到底出来なかった。
「僕のこと好きなら付き合ってよぉ……っ」 
 狂おしい悲痛な声が響いて、琥珀はぺたりと床に座り込んでしまった。
 俺はキラキラでツヤツヤな琥珀の頭をそっと撫でた。
「俺はもうとっくに成人している大人で、事務所からも未成年のメンバーのことを面倒見るように頼まれている立場だから、まだ14歳の琥珀と付き合うわけにはいかないんだよ」
 柔らかい彼の髪を指に絡めて言い聞かせるように話す。
「……面倒を見る……?そっか……確かに僕ハルノさんにいっぱい面倒見られてるもんね、僕……」
 呆然とした顔で琥珀が呟く。こんな子供じゃだめだよね、とぽろぽろとまた涙が綺麗な頬を伝った。
「泣かないで……琥珀。琥珀はまだ14歳なんだから、仕方ないよ。仕事もして、学校も頑張って、充分すごいよ? 大人の手助けが必要なのは当たり前のことなんだよ」
 そう言って、そっと琥珀の頭を抱きしめてやる。
「じゃあ……っじゃあ僕がもっと大きくなったら……付き合ってくれる……?」
 細く、細く消え入りそうな声。
 いくら先のこととはいえ、安易にそんな約束していいものかという思いも過ぎったが。
 恐らく数年…いやもしかしたら数ヶ月もしないうちにすぐに俺への気持ちは勘違いだと彼は気付くだろう。
 それに、彼が大人になるまでにはあと何年もかかる。
 例え彼が今は本気で俺のことを好きだったとしても、気持ちが移ろいやすい10代の子供だ。
 大人になるまで付き合えない俺のことをいつまでも好きではいないだろう。
 そう思うと胸の奥がつきり、と痛んだが、彼のためにならないことは一つだってしたくなかった。
 俺はゆっくり瞬きする。
「わかった。琥珀が高校を卒業したとき、俺のことをまだ好きでいてくれたら、付き合おう」
 そう言うと、彼は口の中で小さく「よねん……もある」と呟いた。
「うん。四年もあるね。無理して待たなくてもいいよ」
 俺がそう言うと、琥珀はひどく可愛らしい仕種で俺の手を取ると、俺の小指をそっと彼の小指に絡めた。
「ハルノさんが約束してくれるなら、待つ……」
 そう言った彼の涙で濡れた目元を俺は指切りした手と反対の手で、そっと拭った。
 すると、琥珀は泣き顔を隠すようにぎゅっとハルノを抱きしめてその胸に顔を埋めた。
 幼子が母に抱きつくようなその仕種に、俺は目を細めて彼の綺麗なカーブを描く後頭部をそっと撫でた。
 そのとき、琥珀は俺の胸に顔を埋めていたから、俺は琥珀がどんな顔をしていたのか、知らなかったのだ。
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