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地味なのにアイドルになってしまった俺が年下の人気メンバーの面倒を見ていたら溺愛されてしまった話
2
「ねぇ、僕、高校卒業したよ」
もう一度彼は俺に言い聞かせるように、ゆっくりと言った。
それは、まるで愛の言葉のように甘くて、狂おしくて、ひどく重たかった。
午前中に高校の卒業式を終えたばかりの彼は、卒業証書を貰ったその足で、このスタジオの楽屋に駆け付けたらしい。
俺は彼のそのセリフを聞いて、ゴクリと生唾を呑み込んだ。
いつものアイドル然とした爽やかな彼の雰囲気は微塵も無かった。
獲物を狩る捕食者のような雰囲気に動けなくなった俺を、彼は悠然と笑った。
毎日のように彼と顔を合わせていたが、彼は俺に対しては優しいばかりで、こんな獰猛な一面をあからさまに見せつけることはなかった。
「僕、もーすっごく待ったんだからね。ほんとに辛かったんだよ」
辛かったなんて殊勝なことを言ってみせるが、もう身長は俺よりずっと高く肩幅もがっしりして、美少年から大人の色気がふんだんに香る美青年に成長した彼に、哀れな様子などは少しもなかった。
俺に伸ばされた大きな手が本気であることを、美しい瞳の奥に見える色から震えるほど理解した。
ここ最近色気が凄いと思ってはいたが、こんなにギラついた雄を隠していたのか。
いや、彼が俺を見つめる瞳の奥にあるものに気付かなかったわけではないけれど、彼が大人しくしていたものだから、気付かないふりを続けたのだ。
俺はとんでもない獣に長いこと『待て』を強いたのだと思い知り、本能的に彼の手から逃げるように一歩後退った。
俺が一歩後退ると、彼はゆっくりと大きな一歩で詰めてくる。
「もしかして、逃げてる? そんなことないよね? ハルノさんは約束破るなんてこと、しないもんね。だって僕、四年も待ったんだよ。ハルノさんが高校卒業したら付き合ってくれるって言ったから。その間僕はずっーとお利口さんだったでしょう?」
背中が壁に当たって、もう逃げ場はない。
俺達と同じグループで一緒にアイドルとして活動する他のメンバーが部屋に入って来くれば、この状況から脱することができるかもしれない、誰か来て欲しい、と本能的に部屋の扉を見た。
そのときだった。
ドンっ
彼が、俺の後ろの壁に強く手を突いた音が大きく響いた。
大きな音が顔のすぐ横で鳴って、俺ははっきりわかるほどにびくりと体を震わせた。
「ひ……っ」
「俺の前で他の男のこと考えてんじゃねぇよ」
滅多に出さないうんと低い声で俺の耳元で囁いた琥珀は、カリ、と俺の耳朶を甘く噛んだのだ。
そして。
「あのときよりずっと大人になったでしょう? 僕」
と、再び甘い声に切り替えて彼は言った。
そう、彼は信じられないくらい大人になった。
体が大きくなったのはもちろん、全てが大人になっていた。
あの頃の可愛い少年の影は微塵もなく、目の前にいるのは、成熟した大人の雄だった。
「僕、ハルノさんとした約束のこと、考えない日は一日もなかったよ」
そう言って、琥珀は俺の小指に、そっと自身の小指を絡めた。
あの日絡めて約束した小指と同じ小指のはずなのに、ずっと大きくなった彼の手。
触れた小指は、火傷しそうなほど熱かった。
「大好きだよ……ハルノさん。もう、全部僕のものだよね」
彼の長い腕の中に囚われて、唇が、重なった。
目眩がしそうなほど、熱くて柔らかいそれを押し付けられたのち、濡れた舌が口の中に入ってきた。
「んっ……」
すっかりフリーズしてしまった俺の舌のカタチをなぞるように舐めて、そっと吸われる。
舌の裏の敏感なところを舐められて、脚が震えると、長い腕が俺の腰を支えた。
行方を見失っていた手は、がっしりと太くなった彼の首に縋るようにしがみついていた。
彼の手は片方俺の腰に、もう片方は後頭部を優しく撫でる。
撫でる掌はとても優しかったけれど、逃げるところを周到に奪ってもいた。
優しく上顎を辿られて、呼吸が上がる。
「ここで息するんだよ……ハルノさん……キスは初めてなの?」
唇を合わせながら、すり、と鼻を擦り合わせるようにして、聞いたことないほど大人びた声で教えられる。
教えられたとおり、必死にすん、すんと酸素を吸い込む。
「かわいい……だいすき……」
もう一度合わされた唇から漏れた囁きは、今度はいつものようにちょっと甘ったれた声。
喉の奥の方は舐められると少し苦しくて、
頭がひどく熱くてぐちゃぐちゃにかき混ぜられたみたいに混乱する。
「ふは。目ぇうるうるじゃん」
ようやく、口の中を犯すのをやめた彼の舌は、俺の唇を舐めて言った。甘いキャンディで出来ているのかと勘違いしてしまうほどに、俺の唇を彼は舐める。
「ふ、あ……」
唇を舐められる度にびくびくと背を震わせた俺に、彼が満足そうに笑ったとき、賑やかに扉が開いた。
「琥珀、卒業おめでとう!……ってどした?」
扉を開けて入ってきた、グループのメンバー達が琥珀に次々卒業おめでとう、と言いながら、広い楽屋の壁際でくっついている俺達に首を傾げる。
「ハルノさんが今日の仕事後、僕の卒業祝いしてくれるって言うからその話してたとこ!」
くるりとメンバーの方を向いて平然と嘘を吐いたが、彼はいつものとおり、メンバーの中で一番年下の琥珀として振る舞っていた。
「えー、いいなー!俺もそれ参加していい?」
「だめー、今日は僕の卒業の日だからハルノさんの家で特別にお祝いしてもらうの!皆はまた今度ね」
無邪気にそう言った琥珀に皆が仕方無いなって年下の可愛い我儘を笑う。
その中で俺だけが琥珀に体の奥に点けられた火を持て余して呆然としていた。
そんな俺を静かに振り返った琥珀は、すうっと目を眇めた。
ふんだんに色が含められた彼の瞳に、心臓がどくん、どくん、と激しく脈打った。
思わず、服の上からぎゅっと心臓の辺りを抑えると、彼は獲物を捉えたかのように満足そうに笑って。
『に、が、さ、な、い』
と、交わした口付けのせいでしっとりと濡れた美しい唇が、ゆっくりと音を出さずに俺に告げた。
もう一度彼は俺に言い聞かせるように、ゆっくりと言った。
それは、まるで愛の言葉のように甘くて、狂おしくて、ひどく重たかった。
午前中に高校の卒業式を終えたばかりの彼は、卒業証書を貰ったその足で、このスタジオの楽屋に駆け付けたらしい。
俺は彼のそのセリフを聞いて、ゴクリと生唾を呑み込んだ。
いつものアイドル然とした爽やかな彼の雰囲気は微塵も無かった。
獲物を狩る捕食者のような雰囲気に動けなくなった俺を、彼は悠然と笑った。
毎日のように彼と顔を合わせていたが、彼は俺に対しては優しいばかりで、こんな獰猛な一面をあからさまに見せつけることはなかった。
「僕、もーすっごく待ったんだからね。ほんとに辛かったんだよ」
辛かったなんて殊勝なことを言ってみせるが、もう身長は俺よりずっと高く肩幅もがっしりして、美少年から大人の色気がふんだんに香る美青年に成長した彼に、哀れな様子などは少しもなかった。
俺に伸ばされた大きな手が本気であることを、美しい瞳の奥に見える色から震えるほど理解した。
ここ最近色気が凄いと思ってはいたが、こんなにギラついた雄を隠していたのか。
いや、彼が俺を見つめる瞳の奥にあるものに気付かなかったわけではないけれど、彼が大人しくしていたものだから、気付かないふりを続けたのだ。
俺はとんでもない獣に長いこと『待て』を強いたのだと思い知り、本能的に彼の手から逃げるように一歩後退った。
俺が一歩後退ると、彼はゆっくりと大きな一歩で詰めてくる。
「もしかして、逃げてる? そんなことないよね? ハルノさんは約束破るなんてこと、しないもんね。だって僕、四年も待ったんだよ。ハルノさんが高校卒業したら付き合ってくれるって言ったから。その間僕はずっーとお利口さんだったでしょう?」
背中が壁に当たって、もう逃げ場はない。
俺達と同じグループで一緒にアイドルとして活動する他のメンバーが部屋に入って来くれば、この状況から脱することができるかもしれない、誰か来て欲しい、と本能的に部屋の扉を見た。
そのときだった。
ドンっ
彼が、俺の後ろの壁に強く手を突いた音が大きく響いた。
大きな音が顔のすぐ横で鳴って、俺ははっきりわかるほどにびくりと体を震わせた。
「ひ……っ」
「俺の前で他の男のこと考えてんじゃねぇよ」
滅多に出さないうんと低い声で俺の耳元で囁いた琥珀は、カリ、と俺の耳朶を甘く噛んだのだ。
そして。
「あのときよりずっと大人になったでしょう? 僕」
と、再び甘い声に切り替えて彼は言った。
そう、彼は信じられないくらい大人になった。
体が大きくなったのはもちろん、全てが大人になっていた。
あの頃の可愛い少年の影は微塵もなく、目の前にいるのは、成熟した大人の雄だった。
「僕、ハルノさんとした約束のこと、考えない日は一日もなかったよ」
そう言って、琥珀は俺の小指に、そっと自身の小指を絡めた。
あの日絡めて約束した小指と同じ小指のはずなのに、ずっと大きくなった彼の手。
触れた小指は、火傷しそうなほど熱かった。
「大好きだよ……ハルノさん。もう、全部僕のものだよね」
彼の長い腕の中に囚われて、唇が、重なった。
目眩がしそうなほど、熱くて柔らかいそれを押し付けられたのち、濡れた舌が口の中に入ってきた。
「んっ……」
すっかりフリーズしてしまった俺の舌のカタチをなぞるように舐めて、そっと吸われる。
舌の裏の敏感なところを舐められて、脚が震えると、長い腕が俺の腰を支えた。
行方を見失っていた手は、がっしりと太くなった彼の首に縋るようにしがみついていた。
彼の手は片方俺の腰に、もう片方は後頭部を優しく撫でる。
撫でる掌はとても優しかったけれど、逃げるところを周到に奪ってもいた。
優しく上顎を辿られて、呼吸が上がる。
「ここで息するんだよ……ハルノさん……キスは初めてなの?」
唇を合わせながら、すり、と鼻を擦り合わせるようにして、聞いたことないほど大人びた声で教えられる。
教えられたとおり、必死にすん、すんと酸素を吸い込む。
「かわいい……だいすき……」
もう一度合わされた唇から漏れた囁きは、今度はいつものようにちょっと甘ったれた声。
喉の奥の方は舐められると少し苦しくて、
頭がひどく熱くてぐちゃぐちゃにかき混ぜられたみたいに混乱する。
「ふは。目ぇうるうるじゃん」
ようやく、口の中を犯すのをやめた彼の舌は、俺の唇を舐めて言った。甘いキャンディで出来ているのかと勘違いしてしまうほどに、俺の唇を彼は舐める。
「ふ、あ……」
唇を舐められる度にびくびくと背を震わせた俺に、彼が満足そうに笑ったとき、賑やかに扉が開いた。
「琥珀、卒業おめでとう!……ってどした?」
扉を開けて入ってきた、グループのメンバー達が琥珀に次々卒業おめでとう、と言いながら、広い楽屋の壁際でくっついている俺達に首を傾げる。
「ハルノさんが今日の仕事後、僕の卒業祝いしてくれるって言うからその話してたとこ!」
くるりとメンバーの方を向いて平然と嘘を吐いたが、彼はいつものとおり、メンバーの中で一番年下の琥珀として振る舞っていた。
「えー、いいなー!俺もそれ参加していい?」
「だめー、今日は僕の卒業の日だからハルノさんの家で特別にお祝いしてもらうの!皆はまた今度ね」
無邪気にそう言った琥珀に皆が仕方無いなって年下の可愛い我儘を笑う。
その中で俺だけが琥珀に体の奥に点けられた火を持て余して呆然としていた。
そんな俺を静かに振り返った琥珀は、すうっと目を眇めた。
ふんだんに色が含められた彼の瞳に、心臓がどくん、どくん、と激しく脈打った。
思わず、服の上からぎゅっと心臓の辺りを抑えると、彼は獲物を捉えたかのように満足そうに笑って。
『に、が、さ、な、い』
と、交わした口付けのせいでしっとりと濡れた美しい唇が、ゆっくりと音を出さずに俺に告げた。
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