美形に溺愛されて波乱万丈な人生を送ることになる平凡の話

ゆなな

文字の大きさ
27 / 41
年上彼氏がコンビニで買ってきたものは

年下彼氏視点

しおりを挟む
「アイス食いたいからコンビニ行ってくるわー」
 これからイチャイチャしようって意気揚々と風呂から出てきたのに、年上の彼氏ときたら俺のTシャツを可愛くゆるっと着こなして玄関に居た。
「え? チョコのアイス買ってあるよ?!」
「チョコの気分じゃねぇんだもん」
「じゃ、ちょっと待って、俺も一緒に行く!」
 濡れた髪を慌ててごしごしタオルで拭きながら、バタバタ俺も玄関に向かった。
「お前髪まだ濡れてんじゃん。ちゃんと拭けよ」
「今急いで乾かすから待って」
「すぐそこのコンビニなんだから、そんなん待ってる間に行って帰って来れんだろ。アイスお前の分も買ってきてやっからイイコで待ってろ」
「えー、じゃあもう濡れたまま行く!」
「ばか。風邪引くだろ。ソーダのアイスもいちごミルクもちゃんと買ってきてやるから」
「あっ待って!行かないで」
 そう可愛い年下彼氏が言ってるのに、彼ときたら無情にもドアを閉めて行ってしまった。
 忙しくて毎日午前様だったし、先週末も仕事だったから久しぶりの二人の時間なのに。
 1分1秒を大事にイチャつきたいと俺が思っても、風呂も一緒に入ってくれなかったし、コンビニにも置いていかれた。二人でアイスとかお菓子とか選ぶのすげぇ楽しいじゃん。なんでだよ。ひどい!
 思わず拗そうになって、そういうところが子供扱いされてしまうんだと気付いて溜息を吐く。
 せめて帰ってきたら一緒にイチャイチャしながらアイス食べよ。
 俺の脚の間に座ってくれるかな。抱っこしながらアイス食べたい。
 ……でも俺のこと置いてアイスなんか買いに行くくらいの気分だからイチャイチャなんて無理かも。
 っていうか、イチャイチャどころかエッチも無理だったらどうしよ。久しぶりに二人揃って早く帰れたのに。
 やば……悲しくなってきた。
 そう思ってソファのクッションに顔を埋めたときだった。
「ただいまー」
 思ったより早く帰ってきた彼の声に、俺はがばっと顔を上げて急いで玄関に出迎えに行った。
「……お前まだ髪濡れてんじゃん。さっさとドライヤーしろよ」
「うん。でも先に買ってきたもの冷蔵庫に入れといてあげるから、手洗っておいでよ」
 俺がそう言って、彼の持つレジ袋を受け取ろうとすると、彼はさっ、とレジ袋を体の後ろに隠した。
「アイスすぐ食うから冷蔵庫入れないで平気」
「え? でも何か他にも色々入ってない? 冷蔵庫入れとくよ。袋ちょうだい?」
「いやだから、大丈夫だっつーの!」
「いいから、早く手洗ってきなって!」
 何か隠してる? どういうこと?
 背に隠したレジ袋に手を伸ばして俺が引っ張ると、彼も袋を俺に取らせまいと引っ張る。
 すると。
「うわっ」
「うぉっ」
 レジ袋を取り合って揉めていると、ドサドサと玄関にレジ袋から飛び出た中身が散らばってしまったのだ。
「ご……ごめんっ」
 落ちたアイスやいちごミルク、お菓子にヨーグルトなんかを拾おうとしゃがむと……あれ? この箱って。
「うわぁぁ、見るなぁっ」
「あ……これ買いに行ってくれたの……?」
「ち……違うかんな!アイス食いたかったって言っただろうが!あと明日の朝飯にヨーグルトも食いたいし……!……で、それはついでっつーか……ほんと、ついでの……ついでに……安売りしてたから……うん。そう。安売り……」
「コンビニでコレ安売りしてないでしょ」
 思わずツッコむ。
「っせぇな!」
「うそうそ。せっかく買ってきてくれたのに、意地悪言ってごめん。めっちゃ嬉しい」
 嬉しさのあまりぎゅうっと抱き締めると、大好きな彼の匂い。
 あぁ、嬉しいな。今夜はいっぱいいっぱいイチャイチャしようね。コレ全部なくなっちゃうまでしよっか。
「……ほんと、ばか。そんなん無理に決ってんだろ……ほらアイス溶けるし、手ぇ洗いに行きたいから離せ……」
 そう言った彼の顔は真っ赤。
 もうどうしよう。この場でコレ使いたい。ここで押し倒したい。怒られちゃうかな。
「それはダメ……」
 あれ? 心の声聞こえてた?
「アイス食ってから……ベッドの上がいい」
「ぶっ……突然デレないで……心臓バクバクする……」
 そう言って思わず心臓を押さえてしまう。
「ばぁか。ほら、早くアイス食おうぜ」
 そして二人で落ちたものを拾ってリビングに向かう。
「あ、でもさ。前に買ったやつもまだあと2個残ってたよね……もしかして2回以上したくて買いに行ってくれたの? あーやっぱ我慢できない。アイス後にして先にベッド行こ?」
「ちっげーよ! ばーか! アイス先っ!」
 なんて、俺の頭を小突いたけれど、俺の脚の間に座ってアイスを食べてくれたし、買ってきてくれたものをたくさん使うことも許してくれたのであった♡
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

年下くんに堕とされて。

bara
BL
イケメン後輩に堕とされるお話。 3話で本編完結です

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

処理中です...