稚拙図書館

織賀光希

文字の大きさ
上 下
33 / 57

笑えん方のサンタクロース

しおりを挟む
落ちた。
まっ逆さまに。
勢いよく。
赤い衣装も、真っ白だ。
もちろん頭も、真っ白だ。

初めてだった。
初めましてだった。
あのトナカイさんとやるのが。
昨日言われた。

いつものトナカイさんは。
体調不良で走れないと。
その時点で、悪い予感がした。
「よろしく一」
「イェイ」

苦手なタイプのトナカイさんだった。
僕は人見知りだ。
ペアをずっと組んでいる、トナカイさんとだって。
今まで、うまく喋れなかった。

5年経って、よくやく打ち解けられたのに。
あの、明るすぎるトナカイさんと。
打ち解けられる訳がない。

5年の付き合いのトナカイさんは。
かなり、やさしいタイプだ。
それで、仲良くなるのに5年。
今日のトナカイさんとは。
やっぱり無理だったんだ。

サンタクロースは、華やかな世界。
そこで、プレゼントを届ける。
明るい感じのオジサン。
そんなタイプだけではない。

雪の上で大の字になる。
笑えん方の、僕のような。
サンタも、いるということだ。
しおりを挟む

処理中です...