取扱説明少女の取扱説明書

織賀光希

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第一話

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 取扱説明書って、分厚い。何だか、読む気がしない。でも、読まないと使い方が分からない。その結果、何も出来ない。だから、読もうとはする。
 だけど、あんな分厚いものだ。目的の説明に、たどり着くことは困難だ。あらゆるものを消耗する。説明書を読むことは、煩わしいことだ。

 携帯電話というものには、ネットという機能が付いてる。ネットというものは、情報の宝庫だ。ネットの使い方は、最近覚えた。
 無論、友人がレクチャーしてくれたのだ。説明書を見たり、誰かに教われば出来る男。やり方が分かれば、すぐに身に付ける男なのだ。

 取扱説明書を、効率よく読む方法はないのか。それが知りたくて、長四角の中に入力した。検索結果に、気になる文字を見つけた。
 それは【取扱説明少女】というもの。開くとそこには、夢のようなことが書かれていた。少女が自宅に来て、どんなものでも、説明してくれるらしい。家電、家具、薬などなど、何でも。

 取扱説明専門の、家政婦のようなものらしい。だが、頼む決心は、すぐにつかなかった。少女に説明をしてもらうだけのことに、お金を払ってもいいのか。それが、少し引っ掛かっていた。
 取扱説明少女には、ランクがある。そのランクによって、料金は違った。もちろん、頼むなら一番下のランクと決めている。

 昼間は、仕事先にいる。だから、主に説明を欲することの多い時間帯に決めた。朝と夜に、頼むことにした。
 頼んでみたはいいけど、不安は途轍もなく大きい。知らない少女を、自宅に招かなくてはならない。ひとりぼっちの優雅なひとときを、消さなくてはならない。でも、説明の充実の為には、仕方のないことだ。

 三十年の人生の中で一番思い切った。一応その他の世話もしてくれるとは書いてあったが気が散るし、そんなの必要ない。説明だけしてくれれば十分だ。
 来る予定の少女が一番下のランクなのには少々訳があるらしい。捻くれものみたいな説明はあったが知識量と説明能力はトップクラスということだった。
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