パワー&ブレイン

織賀光希

文字の大きさ
上 下
1 / 1

パワー&ブレイン

しおりを挟む
知識が豊富。

判断力にも優れた天才。

そんな医師のもとにやってきた、不思議な症状の少年。

調べても原因不明。

そんな病気に、少年は掛かっていた。

「ゴメンね。先生でも分からないんだ」

「大丈夫です。ありがとうございます」

「また、検査するから。そして、絶対に見つけてみせるから」

「はい」

「もう少しの辛抱だよ」

「ありがとうございます」

様々な検査を実施。

必死で原因を探った。

だが、分からない。

少年の苦しみが増してゆく。





少年の母親は、噂である男を知った。

そして、その男に依頼していた。

力を込めて触るだけで、何でも治せる。

そんな男だ。



医者は、知識と技術を磨く。

必死で必死で、詰め込む。

しかし、その男は少し違う。

パワーを取り入れる。

それが、唯一の仕事なのだ。

男は、筋トレ、食事、瞑想でパワーをつける。





「こんにちは」

「はい、こんにちは」

「お願いします。息子を、治してください」

「分かりました。パワーで治りますから」

「すぐに治るんですか?」

「はい。では、いきますよ」

少年の胸に手を当てる。

そして、目を瞑り、息をフッと吐いた。

「もう治りましたよ」

「本当ですか? ありがとうございます」

「こういうことでしたか」

「えっ? どういう原因だったんですか?」

眉間にシワを寄せて、母親が聞く。

男は、目をパチリパチリとして、喋り始めた。

「簡単に言うと、仮病ですね」

「仮病ですか?」

「でも、かなり特殊な仮病ですので」

「かなり重い症状が、出ていたはずですから」

「そうです。かなり重い症状も出る、仮病なんです」

「はあ。あっ、はい」





少年は、あざむこうとしていた。

あらゆる手を使って。

病気になる自分を、全力で想像していた。

それが、本当に体調に表れた。

そういうことだ。

「気持ちで、体調を変化させたり。演技や細工で、あざむいてみせたり。それが出来てしまう。それが、この少年の能力です」

「実際に、病気に簡単になれてしまうってことですよね。これからも」

「それはないです。必死で体力などの力を集結させて、全力で治しておきましたから」

「あっ、そうですか」

「少年の胸に手を当てて、汚い心を一瞬で取り除いたので、もう大丈夫ですよ」

「良かったです。ありがとうございます」



少年は、その日から、筋トレを始めた。

そう誰かが、噂している。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...