早口言葉に導かれし女性

織賀光希

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早口言葉に導かれし女性

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友達の家の前を、通りかかった。

釘を間違った場所に、打ってしまったらしい。

私は友達に、釘を抜くように頼まれた。

抜こうとしたが、なかなか抜けなかった。

『この釘引き抜きにくいな』

そんな早口言葉みたいなことを、口にしていた。

何とか釘が抜けて、友達にご馳走したいと言われて、出前の寿司をご馳走になることになった。

目の前に出された寿司を、口にいれた。

すると、酸っぱさが結構あった。

『この寿司は少し酢が効きすぎた寿司だ』

気がつくと、また早口言葉みたいなことを言っていた。

飛行機の時間が迫っていることに気が付き、友達にサヨナラした。

空港に向かい、手続きを済ませ、席に座ると、右の席の人がなぜか泣いていた。

そこで、ボソッと早口言葉みたいなことを言ってしまった。

『旅客機の旅客、気になるな』

あまり見すぎてもいけないと思い、左を見ると、様々な類いの人々が、涙を流していた。

『老若男女泣いてる、なんなの?』

また、早口言葉のようなことを言ってしまった。

右隣の人が泣き止み、話しかけてきた。

天気いいですね、みたいな感じで。

こちらは、可もなく不可もなく、こう答えた。

『暖かくなってきましたね』

その言葉も、少し言いづらかった。


なんやかんやで、目的地のホテルに着いた。

色々と細かいことをやり終えて、カバンから肩叩き器を取り出した。

そして、独り言のような、早口言葉のような言葉を、私は口にした。

『昨日買った肩叩き器で、滝のように肩叩こう』
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