14 / 106
2章 卓球をはじめよう!
007話 初練習と、特技と ①
しおりを挟む
SIDE:YUNO
入部届を出した翌日。
「ゆのー、有栖川ちゃん、行こうぜー!」
放課後になった途端に、隣の教室から私の幼馴染にして同じ卓球部員となった工藤美夏が勢いよくやってくる。
「工藤さんこんにちは」
「ういっすー」
入口側に近い席の稔里ちゃんと合流する美夏。私も荷物をまとめて稔里ちゃんの席へ行く。
「それじゃ行こうか」
放課後すぐの女子更衣室はそれなりの人口密度だった。ただ、元々体育会系に入る人が少ない高校ということもあり、着替えるスペースも見つからないというようなことはないらしい。
「とりあえず体育のジャージで良かったかな」
「いいんじゃない、部活のジャージとか作るのはもう少し先だろうし」
そんな会話を美夏としながら、ふと逆側を見ると、そこにはスカートの下から短パンを摺り上げて、全身卓球のユニフォーム姿になろうとしている稔里ちゃんの姿があった。
短パンを膝上まで上げた体勢の稔里ちゃんと目が合う。
「え、柚乃さんユニじゃない、の?」
「いや、初日は身体慣らす程度かなって」
稔里ちゃんにやる気がないと思われてしまっただろうか。
やらかしてしまったと焦るところに、更衣室に絵東先輩が入ってくる。
「え、アリス初日からユニ着てきたん? 今日はあくまで慣らしだから無理すんなよー」
「あ、はい」
次からは、何着て行くかくらい事前にメッセしよう。
***
更衣室のある別棟から本校舎を横断して逆側へ抜けたところにあるのが第二体育館、通称二体。今日からここが私たち卓球部の練習場所だ。
まずは絵東先輩に用具室へ連れて行ってもらう。中から運び出したフェンスをバドミントン部との境界線上に並べていく。女子四人でやるには結構な重労働だけど、これをやらないと打球が外れる度にバドミントン部に迷惑をかけてしまうので最低限の礼儀だ。
その後に、卓球台を二台用意する。ぱっと見た感じ、割と新し目の卓球台が二台、古めの卓球台が四台の計六台がヤマコーの備品のようだ。四人しかいない部なので新しい方の台で練習ができる。それに古めといっても中学で使っていたのはその古めと同型だったので、練習環境は廊下で練習していた中学時代よりは各段に良いだろう。
「あら、もう準備終わっていたのね」
ちょうど台のセッティングが終わったところでジャージ姿の前原先生がやってくる。やっぱりジャージを着た音楽の先生感が強くて運動するイメージはないけれど、ラケットやシューズなんかは自前のようだ。
「絵東さんは知っているけど、私は自分でやる卓球はほぼ素人だから。基本は自分達で練習して。その代わり練習メニューの相談とかにはのるわ」
「うん、ナオミちゃん今日は初日だから来てもらってるけど、仕事も忙しいだろうし基本は練習始めと終わりの報告に行くだけだよ」
先生の言葉に先輩が付け加える。まあ練習メニューなどは中学のときも自分で考えていたし、今度は頼れる先輩や同級生もいる。
そう。
中学時代に全国に行っている人が四人中二人もいるなんてぱっと聞いただけなら強豪校だ。
稔里ちゃんは実際に手合わせしたけど、絵東先輩もどれくらい強いのか早く見てみたかった。
「じゃまずは準備運動からね」
膝や股関節のストレッチを入念に行う。このあたりはどこの卓球部、卓球クラブでも共通だろう。
そしてストレッチをしながら練習プランの打ち合わせをする。
「今日はみんな久しぶりだろうし軽めのラリー中心ね。間違っても試合形式とかはやらないからね、アリス」
「はい……」
ユニフォーム姿の稔里ちゃんはちょっと残念そうな表情をするが、入念にストレッチを行う。それにしても手足が長くて細いのによく見るとしっかりと筋肉が付いていて羨ましい体型だ。
「私は何する感じ? 素振り?」
「せっかくみのりちゃんにラケット借りてるのにそれはないよ」
「くどみかちゃんは卓球の経験はどれくらい?」
「うーんと、体育でやったのと、後はゆのの試合観に行くくらいです」
先輩の質問に美夏が答える。昨日会って今日でもう美夏の愛称であるくどみか呼びになっている。
「私ら三人のうち誰かが一緒にラリーしながらフォーム教える感じかな。私は左だからアリスかゆのちかな」
「絵東さんサウスポーなんですね」
私もゆのち呼びになっているけどそれは置いておいて。
なるほど、卓球のダブルスはラリーの性質上、右利きと左利きで組むのが圧倒的に有利だ。左利きの絵東先輩と右利きの稔里ちゃんのダブルスがとても強かったというのも納得がいった。
そして、美夏の練習については自分に考えがあった。
入部届を出した翌日。
「ゆのー、有栖川ちゃん、行こうぜー!」
放課後になった途端に、隣の教室から私の幼馴染にして同じ卓球部員となった工藤美夏が勢いよくやってくる。
「工藤さんこんにちは」
「ういっすー」
入口側に近い席の稔里ちゃんと合流する美夏。私も荷物をまとめて稔里ちゃんの席へ行く。
「それじゃ行こうか」
放課後すぐの女子更衣室はそれなりの人口密度だった。ただ、元々体育会系に入る人が少ない高校ということもあり、着替えるスペースも見つからないというようなことはないらしい。
「とりあえず体育のジャージで良かったかな」
「いいんじゃない、部活のジャージとか作るのはもう少し先だろうし」
そんな会話を美夏としながら、ふと逆側を見ると、そこにはスカートの下から短パンを摺り上げて、全身卓球のユニフォーム姿になろうとしている稔里ちゃんの姿があった。
短パンを膝上まで上げた体勢の稔里ちゃんと目が合う。
「え、柚乃さんユニじゃない、の?」
「いや、初日は身体慣らす程度かなって」
稔里ちゃんにやる気がないと思われてしまっただろうか。
やらかしてしまったと焦るところに、更衣室に絵東先輩が入ってくる。
「え、アリス初日からユニ着てきたん? 今日はあくまで慣らしだから無理すんなよー」
「あ、はい」
次からは、何着て行くかくらい事前にメッセしよう。
***
更衣室のある別棟から本校舎を横断して逆側へ抜けたところにあるのが第二体育館、通称二体。今日からここが私たち卓球部の練習場所だ。
まずは絵東先輩に用具室へ連れて行ってもらう。中から運び出したフェンスをバドミントン部との境界線上に並べていく。女子四人でやるには結構な重労働だけど、これをやらないと打球が外れる度にバドミントン部に迷惑をかけてしまうので最低限の礼儀だ。
その後に、卓球台を二台用意する。ぱっと見た感じ、割と新し目の卓球台が二台、古めの卓球台が四台の計六台がヤマコーの備品のようだ。四人しかいない部なので新しい方の台で練習ができる。それに古めといっても中学で使っていたのはその古めと同型だったので、練習環境は廊下で練習していた中学時代よりは各段に良いだろう。
「あら、もう準備終わっていたのね」
ちょうど台のセッティングが終わったところでジャージ姿の前原先生がやってくる。やっぱりジャージを着た音楽の先生感が強くて運動するイメージはないけれど、ラケットやシューズなんかは自前のようだ。
「絵東さんは知っているけど、私は自分でやる卓球はほぼ素人だから。基本は自分達で練習して。その代わり練習メニューの相談とかにはのるわ」
「うん、ナオミちゃん今日は初日だから来てもらってるけど、仕事も忙しいだろうし基本は練習始めと終わりの報告に行くだけだよ」
先生の言葉に先輩が付け加える。まあ練習メニューなどは中学のときも自分で考えていたし、今度は頼れる先輩や同級生もいる。
そう。
中学時代に全国に行っている人が四人中二人もいるなんてぱっと聞いただけなら強豪校だ。
稔里ちゃんは実際に手合わせしたけど、絵東先輩もどれくらい強いのか早く見てみたかった。
「じゃまずは準備運動からね」
膝や股関節のストレッチを入念に行う。このあたりはどこの卓球部、卓球クラブでも共通だろう。
そしてストレッチをしながら練習プランの打ち合わせをする。
「今日はみんな久しぶりだろうし軽めのラリー中心ね。間違っても試合形式とかはやらないからね、アリス」
「はい……」
ユニフォーム姿の稔里ちゃんはちょっと残念そうな表情をするが、入念にストレッチを行う。それにしても手足が長くて細いのによく見るとしっかりと筋肉が付いていて羨ましい体型だ。
「私は何する感じ? 素振り?」
「せっかくみのりちゃんにラケット借りてるのにそれはないよ」
「くどみかちゃんは卓球の経験はどれくらい?」
「うーんと、体育でやったのと、後はゆのの試合観に行くくらいです」
先輩の質問に美夏が答える。昨日会って今日でもう美夏の愛称であるくどみか呼びになっている。
「私ら三人のうち誰かが一緒にラリーしながらフォーム教える感じかな。私は左だからアリスかゆのちかな」
「絵東さんサウスポーなんですね」
私もゆのち呼びになっているけどそれは置いておいて。
なるほど、卓球のダブルスはラリーの性質上、右利きと左利きで組むのが圧倒的に有利だ。左利きの絵東先輩と右利きの稔里ちゃんのダブルスがとても強かったというのも納得がいった。
そして、美夏の練習については自分に考えがあった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる