はじまりはいつもラブオール

フジノシキ

文字の大きさ
102 / 106
8章 全道大会と、新たな強豪

049話 試合レベルと、予想外と ②

しおりを挟む
 先ほどまでの客席と正反対側。
 見知った青色のジャージ軍団。
 つい先日、地区予選の団体戦で戦った聖マリヤ女学院の人達が客席を埋めていた。

 優勝候補の強豪ということで私は気後れする部分もあるが、先輩はわずか数席空いている横の席へ躊躇なく進んでいく。

「やっほ明依ちゃん、横失礼するよー」
「絵東さん!? なんでここに」
「もち試合相手の偵察だよ」

 マリ女一年の刈屋明依さんの横の椅子に先輩が着席する。

「一回戦で絵東さんがわざわざ観るような選手いないと思いますけど」
「明依ちゃん、それ目の前の試合見て言ってる?」
「ユキさん、刈屋さん試合前は集中するので人の試合は見ないです」
「こら! 有栖川アンタ急に出てきて知った風なこと言うな」

 稔里ちゃんも先輩の後ろに座ったので、私も空いている席にお邪魔する。

「失礼します」
「あら、あなたこの前のカットマンの」

 隣の席に座っていたのは、マリ女のキャプテンでシングルス第一シードの妙高静香さんだった。


「あなたも個人戦の偵察?」
「あ、いえ私は予選落ちです。先輩の付き添いで」
「あら、そうだったのね。で、絵東。真子ちゃん見に来たわけじゃないんでしょ?」

 妙高さんが絵東先輩に問いかける。知らない名前が出てきたので私は思わず声に出す。

「真子ちゃん?」
「清水真子。一番手前のコートの右側。札幌琴似商業のエースだよ。私たちの学年で北川やマリ女相手でもシングルスで勝つこともある琴商の絶対エース。私も中学の時練習試合で負けたことがある」

 いくら公式戦ではないといえ、中学時代の絵東先輩は全道王者だ。その先輩に勝ったことがあるというのは相当な実力者だろう。

「真子ちゃんの相手。パンフだと留萌中央高校の一年生の根岸さんってなってるけど。アリスは対戦記憶がないみたい」

 先輩の言葉に稔里ちゃんが頷く。稔里ちゃんは対戦相手の名前を憶えていなくても、プレースタイルは完璧に覚えている。

「あ、アタシ多分やったことあります。でも……」
「でも?」


 目の前の高速ラリーを険しい目付きで睨みながら刈屋さんがつぶやく。

「中学に全道でやったときは多分三、四回戦くらいで。特に苦労せず勝てました。琴商の清水さんとじゃ相手にならないと思います」
「でも左側の人、全然打ち負けてない。バックのフェイントはむしろ押している」
「アンタに言われなくても見りゃわかるわよ! だから自分の記憶を思い出そうとしてるんじゃない」

 稔里ちゃんの言うように、留萌の根岸さんは絵東先輩に勝ったこともあるという琴似商業の清水さん相手に押していた。一年生であれほどの打ち合いができれば全道の決勝や準決勝で稔里ちゃんとも戦ったことがあるはずだ。

「絵東は留萌中央の情報入れてないの?」
「ん、静香がそう言うのは何かネタがあるん?」
「本当はわざわざライバルに教えたくはないけど、まぁ絵東とはもうシングルスで戦うことはないしね」

 そう言うと、妙高さんが視線を左側、留萌中央高校のベンチの方へずらす。


「留萌中央のベンチ見て」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...