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8章 全道大会と、新たな強豪
049話 試合レベルと、予想外と ②
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先ほどまでの客席と正反対側。
見知った青色のジャージ軍団。
つい先日、地区予選の団体戦で戦った聖マリヤ女学院の人達が客席を埋めていた。
優勝候補の強豪ということで私は気後れする部分もあるが、先輩はわずか数席空いている横の席へ躊躇なく進んでいく。
「やっほ明依ちゃん、横失礼するよー」
「絵東さん!? なんでここに」
「もち試合相手の偵察だよ」
マリ女一年の刈屋明依さんの横の椅子に先輩が着席する。
「一回戦で絵東さんがわざわざ観るような選手いないと思いますけど」
「明依ちゃん、それ目の前の試合見て言ってる?」
「ユキさん、刈屋さん試合前は集中するので人の試合は見ないです」
「こら! 有栖川アンタ急に出てきて知った風なこと言うな」
稔里ちゃんも先輩の後ろに座ったので、私も空いている席にお邪魔する。
「失礼します」
「あら、あなたこの前のカットマンの」
隣の席に座っていたのは、マリ女のキャプテンでシングルス第一シードの妙高静香さんだった。
「あなたも個人戦の偵察?」
「あ、いえ私は予選落ちです。先輩の付き添いで」
「あら、そうだったのね。で、絵東。真子ちゃん見に来たわけじゃないんでしょ?」
妙高さんが絵東先輩に問いかける。知らない名前が出てきたので私は思わず声に出す。
「真子ちゃん?」
「清水真子。一番手前のコートの右側。札幌琴似商業のエースだよ。私たちの学年で北川やマリ女相手でもシングルスで勝つこともある琴商の絶対エース。私も中学の時練習試合で負けたことがある」
いくら公式戦ではないといえ、中学時代の絵東先輩は全道王者だ。その先輩に勝ったことがあるというのは相当な実力者だろう。
「真子ちゃんの相手。パンフだと留萌中央高校の一年生の根岸さんってなってるけど。アリスは対戦記憶がないみたい」
先輩の言葉に稔里ちゃんが頷く。稔里ちゃんは対戦相手の名前を憶えていなくても、プレースタイルは完璧に覚えている。
「あ、アタシ多分やったことあります。でも……」
「でも?」
目の前の高速ラリーを険しい目付きで睨みながら刈屋さんがつぶやく。
「中学に全道でやったときは多分三、四回戦くらいで。特に苦労せず勝てました。琴商の清水さんとじゃ相手にならないと思います」
「でも左側の人、全然打ち負けてない。バックのフェイントはむしろ押している」
「アンタに言われなくても見りゃわかるわよ! だから自分の記憶を思い出そうとしてるんじゃない」
稔里ちゃんの言うように、留萌の根岸さんは絵東先輩に勝ったこともあるという琴似商業の清水さん相手に押していた。一年生であれほどの打ち合いができれば全道の決勝や準決勝で稔里ちゃんとも戦ったことがあるはずだ。
「絵東は留萌中央の情報入れてないの?」
「ん、静香がそう言うのは何かネタがあるん?」
「本当はわざわざライバルに教えたくはないけど、まぁ絵東とはもうシングルスで戦うことはないしね」
そう言うと、妙高さんが視線を左側、留萌中央高校のベンチの方へずらす。
「留萌中央のベンチ見て」
見知った青色のジャージ軍団。
つい先日、地区予選の団体戦で戦った聖マリヤ女学院の人達が客席を埋めていた。
優勝候補の強豪ということで私は気後れする部分もあるが、先輩はわずか数席空いている横の席へ躊躇なく進んでいく。
「やっほ明依ちゃん、横失礼するよー」
「絵東さん!? なんでここに」
「もち試合相手の偵察だよ」
マリ女一年の刈屋明依さんの横の椅子に先輩が着席する。
「一回戦で絵東さんがわざわざ観るような選手いないと思いますけど」
「明依ちゃん、それ目の前の試合見て言ってる?」
「ユキさん、刈屋さん試合前は集中するので人の試合は見ないです」
「こら! 有栖川アンタ急に出てきて知った風なこと言うな」
稔里ちゃんも先輩の後ろに座ったので、私も空いている席にお邪魔する。
「失礼します」
「あら、あなたこの前のカットマンの」
隣の席に座っていたのは、マリ女のキャプテンでシングルス第一シードの妙高静香さんだった。
「あなたも個人戦の偵察?」
「あ、いえ私は予選落ちです。先輩の付き添いで」
「あら、そうだったのね。で、絵東。真子ちゃん見に来たわけじゃないんでしょ?」
妙高さんが絵東先輩に問いかける。知らない名前が出てきたので私は思わず声に出す。
「真子ちゃん?」
「清水真子。一番手前のコートの右側。札幌琴似商業のエースだよ。私たちの学年で北川やマリ女相手でもシングルスで勝つこともある琴商の絶対エース。私も中学の時練習試合で負けたことがある」
いくら公式戦ではないといえ、中学時代の絵東先輩は全道王者だ。その先輩に勝ったことがあるというのは相当な実力者だろう。
「真子ちゃんの相手。パンフだと留萌中央高校の一年生の根岸さんってなってるけど。アリスは対戦記憶がないみたい」
先輩の言葉に稔里ちゃんが頷く。稔里ちゃんは対戦相手の名前を憶えていなくても、プレースタイルは完璧に覚えている。
「あ、アタシ多分やったことあります。でも……」
「でも?」
目の前の高速ラリーを険しい目付きで睨みながら刈屋さんがつぶやく。
「中学に全道でやったときは多分三、四回戦くらいで。特に苦労せず勝てました。琴商の清水さんとじゃ相手にならないと思います」
「でも左側の人、全然打ち負けてない。バックのフェイントはむしろ押している」
「アンタに言われなくても見りゃわかるわよ! だから自分の記憶を思い出そうとしてるんじゃない」
稔里ちゃんの言うように、留萌の根岸さんは絵東先輩に勝ったこともあるという琴似商業の清水さん相手に押していた。一年生であれほどの打ち合いができれば全道の決勝や準決勝で稔里ちゃんとも戦ったことがあるはずだ。
「絵東は留萌中央の情報入れてないの?」
「ん、静香がそう言うのは何かネタがあるん?」
「本当はわざわざライバルに教えたくはないけど、まぁ絵東とはもうシングルスで戦うことはないしね」
そう言うと、妙高さんが視線を左側、留萌中央高校のベンチの方へずらす。
「留萌中央のベンチ見て」
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