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第一章
第八話
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「悪いとは思いつつ、少しお前のことを調べさせてもらった」
そう言われ反射的に脈拍が早くなるが、そのことは正直どうでも良かった。それよりも何よりも、ポケットに紙を入れるのはどうにかならないのだろうか。先ほどの紙もそうだが、端々が折れ曲がっているだけじゃなく、ほんのり湿っており生温かい。あまり気持ちの良いものではないだろう。
あかりは紙に目を通しながら言う。
「挙げればきりがないほど過去にいろいろと問題を起こしていたようだな。顔が怖いのと少々腕っぷしがたつことも災いしたのか、警察の厄介になったこともしばしば……」
過去を調べたと言われた時からそれを言われることは薄々感づいていた。そして、それを責められるかもしれないということも。確かにやっていること自体は良くないことかもしれない。しかし、俺はその一切合切に後悔はしていなかった。
「でも、その全ては愚直なまでに一貫していた」
そこでひとつ間を置き、こちらに目をやる。
「人を助けるために動く。神田蒼月、お前、絶望した人の役に立ちたいんだろう? 具体的に挙げるとそれが亡き父親のためなんだろう」
驚きのあまり声が出せない。
どんな世の中でも、利害関係なく本気で人の役に立ちたいと思っている人はいる。数は少ないかもしれないが、それ自体はそんなに珍しいことではない。しかし、その裏には俺が俺でいるために必要なことが含まれており、それと同時にこの信念の元、やらなくてはいけないことがある。そのためには今のままでは物足りない。もっともっと人の役に、それも出来れば絶望のどん底に立たされているような人の役に立ち、感謝されなくてはいけない。それが一番の近道なのだ。
そんな俺の状況をあかりは把握している。そうでなくては〝絶望〟と〝父親〟という単語が一緒には出てこない。
再度、沈黙が支配する。
風がやけに大きな音を立てながら入り込んでくるが、不思議と冷たさは感じなかった。むしろ身体は嫌なくらい熱い血液で満たされていた。
「…………望みは何だ?」
「望み?」
「そうだ。俺には他の人にできない特技があるわけではないし、かといってお金があるわけでもない。主観的に見ても客観的に見ても俺を雇うメリットは何にもない。それでも俺を雇おうとする理由は一つ。脅迫して何か危ないことをやらせよう、って魂胆だろ?」
あかりが目を丸くして動きの一切を止めるが、それはほんの一瞬だった。
「お前、そんなこと考えてたのか」
再度、がっはっはっはっ、と笑い得意満面な笑みを浮かべる。
「一言言っておく。私はお前を誰よりも上手く使うことができるぞ」
「使うって……第一、なんでそんなことが言えるんだよ? 初対面なのに……」
「……初めてか……まあ、そうだろうな、お前にとっては……」
あかりが遠くを見つめる。何かを見ているようでその実、何も見ていない。それは俺や空を遥かに凌駕するほどの遠く深い世界に繋がっているような、そんな感覚を覚えた。その感覚が俺を不安にさせるが、同時に妙な懐かしさを感じたのも事実だった。
「それでも、分かる。少なくともお前自身よりはな」
その言葉の意味は全く分からなかった。
「……それはどういうことだ?」
「それを私の口から言うことは出来ない。……まあ、焦らなくてもいずれ知る時が来るだろう」
あかりはそう言い、虚空を見つめる。
小学生にしては異様に影が深い。過去にどんな経験をしてきたらこんな表情を作ることが出来るのだろうか。
そう言われ反射的に脈拍が早くなるが、そのことは正直どうでも良かった。それよりも何よりも、ポケットに紙を入れるのはどうにかならないのだろうか。先ほどの紙もそうだが、端々が折れ曲がっているだけじゃなく、ほんのり湿っており生温かい。あまり気持ちの良いものではないだろう。
あかりは紙に目を通しながら言う。
「挙げればきりがないほど過去にいろいろと問題を起こしていたようだな。顔が怖いのと少々腕っぷしがたつことも災いしたのか、警察の厄介になったこともしばしば……」
過去を調べたと言われた時からそれを言われることは薄々感づいていた。そして、それを責められるかもしれないということも。確かにやっていること自体は良くないことかもしれない。しかし、俺はその一切合切に後悔はしていなかった。
「でも、その全ては愚直なまでに一貫していた」
そこでひとつ間を置き、こちらに目をやる。
「人を助けるために動く。神田蒼月、お前、絶望した人の役に立ちたいんだろう? 具体的に挙げるとそれが亡き父親のためなんだろう」
驚きのあまり声が出せない。
どんな世の中でも、利害関係なく本気で人の役に立ちたいと思っている人はいる。数は少ないかもしれないが、それ自体はそんなに珍しいことではない。しかし、その裏には俺が俺でいるために必要なことが含まれており、それと同時にこの信念の元、やらなくてはいけないことがある。そのためには今のままでは物足りない。もっともっと人の役に、それも出来れば絶望のどん底に立たされているような人の役に立ち、感謝されなくてはいけない。それが一番の近道なのだ。
そんな俺の状況をあかりは把握している。そうでなくては〝絶望〟と〝父親〟という単語が一緒には出てこない。
再度、沈黙が支配する。
風がやけに大きな音を立てながら入り込んでくるが、不思議と冷たさは感じなかった。むしろ身体は嫌なくらい熱い血液で満たされていた。
「…………望みは何だ?」
「望み?」
「そうだ。俺には他の人にできない特技があるわけではないし、かといってお金があるわけでもない。主観的に見ても客観的に見ても俺を雇うメリットは何にもない。それでも俺を雇おうとする理由は一つ。脅迫して何か危ないことをやらせよう、って魂胆だろ?」
あかりが目を丸くして動きの一切を止めるが、それはほんの一瞬だった。
「お前、そんなこと考えてたのか」
再度、がっはっはっはっ、と笑い得意満面な笑みを浮かべる。
「一言言っておく。私はお前を誰よりも上手く使うことができるぞ」
「使うって……第一、なんでそんなことが言えるんだよ? 初対面なのに……」
「……初めてか……まあ、そうだろうな、お前にとっては……」
あかりが遠くを見つめる。何かを見ているようでその実、何も見ていない。それは俺や空を遥かに凌駕するほどの遠く深い世界に繋がっているような、そんな感覚を覚えた。その感覚が俺を不安にさせるが、同時に妙な懐かしさを感じたのも事実だった。
「それでも、分かる。少なくともお前自身よりはな」
その言葉の意味は全く分からなかった。
「……それはどういうことだ?」
「それを私の口から言うことは出来ない。……まあ、焦らなくてもいずれ知る時が来るだろう」
あかりはそう言い、虚空を見つめる。
小学生にしては異様に影が深い。過去にどんな経験をしてきたらこんな表情を作ることが出来るのだろうか。
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