誰かのヒーローになりたい俺の第一歩

よーじろー

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第一章

第十話

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 俺は何一つ冗談など言ってない。
 徹頭徹尾真剣である。
 しかし、大体この話を面接ですると呆れられ、鼻で笑われる。
 事情を事細かに説明しても取り合ってくれなかった。
 説教を始めた面接官もいた。
 こちらが真剣でも向こうはその瞬間真剣ではなくなる。
 当然と言えば当然なのだが、それが社会で生きていくことなのならば、そんな社会に俺の居場所なんてないのだろう。
 あかりは眉一つ動かさず、口を開く。

「それを何に使うんだ?」
「母親の移植手術費用だ」

 即答する。
 猶予は半年しかない。
 その間にドナーを見つけ移植手術をしないとお袋は助からない。
 ドナーが見つからなければその金もただの紙切れ同然になってしまうが、万が一ドナーが見つかって移植ができるとなった時の準備はしておいた方がいい。
 相当無茶な頼みであることは分かっている。
 しかし、この不思議な少女ならもしかしたら、という一縷の望みをかけての頼みだった。
 それを聞いたあかりは、三度、がっはっはっはっ、と口を大きく開けて笑う。

「違うか、と思ったが……やっぱり他の奴らと一緒で、お前も笑うんだな」

 この少女も他の奴らと同じだった。
 この少女だったらもしかしたら他の人と違うかもしれない、と思って少しでもそこに可能性を見た俺が馬鹿だった。
 いつどこであってもこの社会は俺が生きていくには息が詰まる。
 それは分かっていた。
 この社会に、苦しい、誰か助けてくれ、と大声で叫んでも助けてくれる人はもはやいないのだろう。
 落胆とともにこの世界の人と社会に失望する。

「いやー、すまんすまん」 

 俺の思いを歯牙にもかけないような軽い口調で言う。

「そのことならもう解決済みだ」

 あかりが腕時計に目をやる。

「そろそろだな」

 刹那、見計らったかのように携帯が着信を告げる。
 番号はお袋が入院している病院からだった。

「私、太田病院看護師の加藤と申します! 夜分遅くに申し訳ありません! 神田蒼月さんですか⁉」
「はい。そうですが……」

 電話口の声が高揚しており、聞き取りづらい。

「今、先方から連絡がありまして、急ではありますが、お母様のドナーが見つかりました!」

 正直、何を言われているのか、さっぱり分からなかった。しかし、言葉を何度も反芻し、ようやく理解することが出来た。

「えっ⁉ ほんとですか⁉」
「はい! なので、もし来れるようでしたら、明日、時間は何時でも構いませんので、病院にいらしてください!」
「わかりました! あと、費用の件ですが」
「あ、そのことなんですが、神田さんのお知り合いで医療関係の方はいらっしゃいますか?」
「いえ、私の知る限りいませんけど……どうしたんですか?」
「いや、ドナーが決まってからの手続きと費用の支払いが異様に早かったものですから、何かそういった関係の人がいるんじゃないかと思ったのですが」

 それを聞き、目の前の少女を見る。
 あかりはどうだと言わんばかりの表情を浮かべ、そして、やはり胸を張る。

「……心当たりは、あります」
「そうですか。それならよかったです。では、明日、お待ちしております」
「はい。よろしくお願いします」

 電話を切り、少女を一瞥する。
 あかりは毅然とした態度を崩さない。
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