誰かのヒーローになりたい俺の第一歩

よーじろー

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第三章

第二十三話

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 俺が入職してから一週間が経った。
 ホワイトボードを改めて確認する。

『明楽あかり:崇徳院朱雀と連絡を取り当日の流れを確認する』
『明楽真冬:取引相手の情報を得る』
『リチャード:崇徳院組の動向を監視する』
東心あづましん:作戦当日のボディーガード』
『神田蒼月〝研修中〟:明楽あかりのサポート』

 一人まだ見ぬ人がいるが、概ね役割分担が決まり今はそれに向け作業をしている最中である。
 真面目スイッチが入ってからの真冬はまるで別人であるかのように集中し、自分の席でパソコンに向かう。
 後ろからこっそり覗くが、視認できないほどの速さでキーボードを打つため、何をしているのかさっぱり分からない。
 人知を超越した特技を持つ点で言うとやはりあかりの弟なのだな、と感じられる。
 リチャードはスマホで電話をしては手帳にメモし、また電話をすることを繰り返している。
 どこにかけているのだろうかと疑問を感じるが、そんな口出しをする権利は俺に与えられてなかった。
 そういう俺はというと、具体的にやることを指示されていないどころかあかり曰く研修中らしいので、とりあえずはあかりのサポートという名目でその都度雑用をしている。
 お茶を汲んだり、掃除をしたり、昼ご飯を作ったり……。
 まだ入って一週間しか経っていないのだから仕方ないと言えばそれまでなのだが、目的に向け自分の仕事を淡々とこなしていく二人を見ているとどこか心苦しさを感じる。
 しかし、そんな二人を尻目に思うところがあるのも事実だった。
 あかりにはうやむやにされたが、どうしても引っかかる。
 
 ――やろうと思えば自分でどうにでもできそうな立場にある人がこんな大事な問題をよりによってこの会社に依頼するものなのか。
 
 その疑問が俺の中に巣食い離れない。
 仮にひとりひとりが優秀だったとしてもこの規模ではやれることに限界がある。
 警察がだめならば恥を忍んで同業者に協力を求め戦力を整えるか、もしくは依頼内容そのものを考え直す必要がある。
 お袋を助けてもらいかつ雇ってもらった身分で申し訳ないが、無事解決し大団円を迎える結末が想像できない。

「おーい、神田、何難しい顔してんだ? 行くぞ」

 思考の海に潜っていると、あかりが呼ぶ。
 初めて家に来た時も山を歩いて来た時も上下ともにジャージであり洒落っ気もくそもなかったが、今は全く違う装いをしている。
 下は薄い緑色のパンツ、上はグレーのニットにその上から黒のロングコートを羽織っており、手にはブランド物のバックを持っている。
 耳にさり気なく光るピアスと首元を彩る金のネックレス、さらに薄く施された化粧があかりの美しさをさらに際立たせている。
 ポテンシャルが高いだけに飾ると、一種の神々しささえ覚える。
 いつもがいつもなだけにその差は歴然である。
 初めてこんなあかりを見て驚きはしたが、不思議と違和感はなかった。
 むしろ服や装飾品、化粧までもが最初から全てが彼女のためにあるかのようであり、それくらい似合っていた。
 それだけに身長と胸だけが実に残念である。

「なんだ、私がこのような恰好をしてはいけないか?」

 あかりが訝しむように俺を見る。
 …………少し見すぎてしまったようだ。

「いえ、そんなことは……それよりあかりさん、やっぱり俺も行かなくちゃだめですか?」

 俺は最後の悪足掻きを敢行した。

「当たり前だろ。ん、なんだ、行きたくないのか?」
「……実は、その、色々ありまして」
「そうか、それなら仕方ないな。待ってていいぞ」

 ――おや? いつもだったらそんな事情知ったことか、と強引に連れ出されそうなものだが、今日はやけに物分かりが良いぞ? というか、怖いくらい良すぎるぞ?

「あー、そうそう。その場合、お前には真冬の手伝いをしてもらう。今は作業に没頭してるから害はないが、お前が手伝ってくれるとなったら……うむ、どうなるんだろうな、楽しみだ」
「……すいません。行きます」
「うむ、よろしい」
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