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第五章
第五十五話
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〝はっはっはっ、俺が来たからにはもうお前らの好きにはさせないぞ〟
なぜか俺の持っている鞄から爆音で俺の声が流れる。
俺が意図して鳴らしたわけでは当然ないし、そもそもこんな音声があるのすら今知ったくらいなのだ。
しかし、これが真冬なりの合図なのだ、ということは考えなくても分かった。
――おい! 真冬さん、なんてタイミングだ! あんた、俺を殺したいのか!
心の中で泣きながら真冬に文句を言うが、今はそんなことを言っている場合ではない。
声が流れたと同時に、その場の全員の視線がこちらに向けられる。
隠れている意味はもはやなかった。
物陰から体を出し、ゆっくりと歩く。
動かす足は緊張で震えており、今までに感じたことないほど心臓がうるさい。
誰かに殴られるとか拳銃で撃たれるとか以前に爆発しそうである。
何度ジーパンで拭いても手汗が止まらない。
心なし呼吸も荒くなってきた気がする。
死地に向かう兵隊はこんな気持ちなのだろうか。
「神田、お前……」
あかりの元に着く。
心底驚いた様子で俺を見るあかりと対照的に表情を変えることなく様子を見守るリチャードと東。
あかりの目を見る。
見開かれた瞳から感じるのは俺が突き放された時、ひとり車の中で見せた苦痛そのものだった。
――俺はこんな顔をさせるために来たんじゃない。あかりさんを縛るしがらみと溜まった鬱憤を晴らすために来たのだ。
その顔を前に俺の高揚し零れるほど沸騰した血液が急激に冷めていくのが分かった。
「あかりさん、すみません。でも、俺には俺にしかできないことがあるような気がしたんです。だから……説教は後でいくらでも聞きますんで、少し俺に時間をくれませんか?」
「お前、何を」
「まあ、見ててください」
止められるかどうかは正直言って分からない。
しかし、この最悪の状況を打破することはできるかもしれない。
真冬に授かった作戦と万が一のためにと教えてもらったウルトラCが俺にはあるのだ。
俺は膝をつき絶望している譲二の隣に立つ。
「マフィア共、俺はお前らの知らないことを知っている! しかも、これを公表すればお前らはまるごと破滅する!」
拳銃は朱雀の頭に向けられたままであり、いつトリガーが引かれてもおかしくない状況である。
しかし、こうすればボスが撃たないことを知っていた。
……否、真冬に教えてもらった。
「…………!」
「心当たりがあるようだな! はっはっはっはっ」
そう言い、俺はさり気なく屈み譲二の耳元で言う。
「……譲二さん、そのまま聞いてください」
「……ん?」
「安心してください。聡子さんは無事です」
「……なっ!」
「しっ! そのままですよ」
譲二が驚きのあまり顔をあげそうになるが、それを制止する。
意外にも俺は冷静を保てていた。
「俺に策があります」
「…………分かった」
譲二が状況把握能力に長けていて助かった。
もし万が一、譲二が俺と同じくらいの器しかなかったら……そう考えただけで寒気が襲う。
同時に自己嫌悪に陥る。
譲二の前に立つと、目の前で起きている非現実が大きく見える。
テッテレー、実はモデルガンでした、ドッキリ大成功……っていうオチであれば、どんなにましだろうと考えてしまうほどの余裕はまだあった。
「誰だ? お前は」
ボスが眉間に皺を寄せ低声を轟かせる。
「俺か、俺はな」
顔を俯かせて溜める。
十分に溜めた後、空気をパンパンに入れた風船を破裂させるように叫ぶ。
「お前たちを成敗するために現れた正義のヒーローだ!」
そう言って思い切り胸を張る。
咄嗟に出た言葉だが、存外それは俺の核だった。
『人の役に立ちなさい』
お袋にそう言われたからだと勝手に思っていたが、それは大きな間違いだった。
――お袋に言われたことはきっかけに過ぎない。俺は最初から誰かの正義のヒーローになりたかったんだ。
風が横切る音も誰かが立てる些細な物音もその一切が無くなった。
どくどくと脈打つ心臓が俺の体を鼓舞している。
この場でおかしなことを言っている自覚はある。
馬鹿なことを言っていることも分かっている。
しかし、俺のなりたかったものに気づくことが出来た。
それだけが俺の原動力だった。
なぜか俺の持っている鞄から爆音で俺の声が流れる。
俺が意図して鳴らしたわけでは当然ないし、そもそもこんな音声があるのすら今知ったくらいなのだ。
しかし、これが真冬なりの合図なのだ、ということは考えなくても分かった。
――おい! 真冬さん、なんてタイミングだ! あんた、俺を殺したいのか!
心の中で泣きながら真冬に文句を言うが、今はそんなことを言っている場合ではない。
声が流れたと同時に、その場の全員の視線がこちらに向けられる。
隠れている意味はもはやなかった。
物陰から体を出し、ゆっくりと歩く。
動かす足は緊張で震えており、今までに感じたことないほど心臓がうるさい。
誰かに殴られるとか拳銃で撃たれるとか以前に爆発しそうである。
何度ジーパンで拭いても手汗が止まらない。
心なし呼吸も荒くなってきた気がする。
死地に向かう兵隊はこんな気持ちなのだろうか。
「神田、お前……」
あかりの元に着く。
心底驚いた様子で俺を見るあかりと対照的に表情を変えることなく様子を見守るリチャードと東。
あかりの目を見る。
見開かれた瞳から感じるのは俺が突き放された時、ひとり車の中で見せた苦痛そのものだった。
――俺はこんな顔をさせるために来たんじゃない。あかりさんを縛るしがらみと溜まった鬱憤を晴らすために来たのだ。
その顔を前に俺の高揚し零れるほど沸騰した血液が急激に冷めていくのが分かった。
「あかりさん、すみません。でも、俺には俺にしかできないことがあるような気がしたんです。だから……説教は後でいくらでも聞きますんで、少し俺に時間をくれませんか?」
「お前、何を」
「まあ、見ててください」
止められるかどうかは正直言って分からない。
しかし、この最悪の状況を打破することはできるかもしれない。
真冬に授かった作戦と万が一のためにと教えてもらったウルトラCが俺にはあるのだ。
俺は膝をつき絶望している譲二の隣に立つ。
「マフィア共、俺はお前らの知らないことを知っている! しかも、これを公表すればお前らはまるごと破滅する!」
拳銃は朱雀の頭に向けられたままであり、いつトリガーが引かれてもおかしくない状況である。
しかし、こうすればボスが撃たないことを知っていた。
……否、真冬に教えてもらった。
「…………!」
「心当たりがあるようだな! はっはっはっはっ」
そう言い、俺はさり気なく屈み譲二の耳元で言う。
「……譲二さん、そのまま聞いてください」
「……ん?」
「安心してください。聡子さんは無事です」
「……なっ!」
「しっ! そのままですよ」
譲二が驚きのあまり顔をあげそうになるが、それを制止する。
意外にも俺は冷静を保てていた。
「俺に策があります」
「…………分かった」
譲二が状況把握能力に長けていて助かった。
もし万が一、譲二が俺と同じくらいの器しかなかったら……そう考えただけで寒気が襲う。
同時に自己嫌悪に陥る。
譲二の前に立つと、目の前で起きている非現実が大きく見える。
テッテレー、実はモデルガンでした、ドッキリ大成功……っていうオチであれば、どんなにましだろうと考えてしまうほどの余裕はまだあった。
「誰だ? お前は」
ボスが眉間に皺を寄せ低声を轟かせる。
「俺か、俺はな」
顔を俯かせて溜める。
十分に溜めた後、空気をパンパンに入れた風船を破裂させるように叫ぶ。
「お前たちを成敗するために現れた正義のヒーローだ!」
そう言って思い切り胸を張る。
咄嗟に出た言葉だが、存外それは俺の核だった。
『人の役に立ちなさい』
お袋にそう言われたからだと勝手に思っていたが、それは大きな間違いだった。
――お袋に言われたことはきっかけに過ぎない。俺は最初から誰かの正義のヒーローになりたかったんだ。
風が横切る音も誰かが立てる些細な物音もその一切が無くなった。
どくどくと脈打つ心臓が俺の体を鼓舞している。
この場でおかしなことを言っている自覚はある。
馬鹿なことを言っていることも分かっている。
しかし、俺のなりたかったものに気づくことが出来た。
それだけが俺の原動力だった。
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