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1-3ホストなんてした事ないおっさんがイケメンになって接客しなければならなくなった

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きらびやかなホストクラブに入ると涼介が店内をざっくりと案内してくれた。

「ここが接客フロアでこっちが控え室」

「へー凄いな」
崇が思ってた以上に豪勢な作りだ。

「おはようございます。店長。電話でお伝えした通り誠也が記憶を失っていて。ご迷惑をおかけしますが、直ぐに記憶も取り戻すと思うんで、みんなには内緒でお願いします」

「おう、おはよう」と店長は中身が崇になった誠也をマジマジと見た。

崇はニコニコしながら店長に愛想をふりまいた。店長はこの店で唯一イケメンではなく、元の崇と似たようなおっさんだったので親しみが湧いた。
「こんばんは」

「なんだコイツ。あいさつもまともに出来なくなったのかよ!おはようございますだろうが!ほんとに記憶がねえのかよ!」

と崇は怒鳴られて店長は怖い人なんだと認識した。

「お、おはようございます」と震えた声で言う。

「分かったからとりあえず今日はお前がついてなんとかしろよ。何しろ誠也はうちのナンバーワンなんだからな」

「はい!わかりました」と涼介が深く頭を下げるのを真似して崇も頭をさげた。

フロアに出ていくとホストが待機していた。
さすがにホストだけあってみんな爽やかでオシャレなイケメン揃いだ。

「今日の目標!」と店長が言うと、ホスト達が次々と目標を言い始めた。

ほかのホストが売上とか指名の数とか具体的な目標を掲げている。
すぐに崇の番が来た。

「安全第一で効率よく集中して作業を進めます」

普段は食品会社に務める崇からとっさに出た言葉だった。

ホスト達は全員苦笑した。

「最近調子が良いからってふざけたこと言ってんじゃねえぞ」
中でも特に目立ったオーラを放つ筋肉ムキムキのホストが絡んできた。

「そんなにムキにならなくても。仲良くしましょうよ」
と崇が言うと周りはまたしても苦笑した。

涼介が言うにはこのムキムキのホストは店のナンバー2で佳宏よしひろと言うらしい。誠也にはかなりのライバル心を持っているらしい。

崇はいつでも来やがれ負けねえぞと思った。
誠也の美貌があればムキムキのお前なんかには負けない。

そして、崇は女の人と酒を飲むのが仕事なんて楽しそうというなめた気持ちでいた。

「誠也さん、ご指名入りましたー」
マイクでそう呼ばれて涼介とテーブルに着くとそこには禿げたおじさんが待っていた。
「誠也くんお久しぶりー」とご機嫌だ。

「ち、ちょっと涼介くん、客は女の子じゃないの?」

「うちは客の9割が男だよ。男に好かれるホストがメインでやってんの。そんなことも忘れたの?」

「そ、そんなー」
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