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1-14 理性が少し吹っ飛んでニャンニャン涼介になりました
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「クンクン」
涼介が誠也の髪の匂いを嗅ぐ。
相変わらず薄緑色の髪はサラサラでいい匂いがする。
いつもの誠也ならもっときつく涼介を抱きしめるのだが、中身はおじさんだ。
いつもと違ってぎこちなく、そしてソフトに抱きしめてくる。
涼介は不思議な感触を感じていた。
声も体も匂いも誠也なのに動きが違う。
瞳の奥の方を見つめると、そこには別人がいる。
挙動不審で自信がない。
だけど、純粋で素朴で真っ直ぐな瞳だ。
本当の誠也は自信に充ちていて、鋭い眼差しでもっとカッコイイ。
だけど涼介は、素朴な少年のようなおじさん誠也もいいかなと思った。
涼介はアグアグしたくてたまらなくなり、おじさん誠也の腰の辺りに抱きついた。
厳密に言うと誠也じゃないんだけど、肉体が誠也だから「ま、いっか」と思うと、少しだけ理性が吹っ飛んだ。
おじさん誠也の周りで足をバタつかせて
「にゃーにゃー」騒ぐ。
仰向けになってパジャマをわざとはだけてお腹を出す。
いつものニャンニャン涼介なのだがおじさん誠也にはお腹を撫でて欲しい気持ちが伝わらない。
「にゃー」
こんなにも撫でてほしそうにお腹を出しているのに撫でてくれない。
痒いところに手が届かない感覚だ。
涼介はもどかしくって両目をつむって仰向けで腰を少し浮かせて懇願ポーズを取った。
そっとお腹に手が伸びてくる。
ようやく痒いところに手が届いた
と思ったらおじさん誠也の手はパジャマを直してお腹を隠した。
「にゃー!」(そうじゃない!)
と猫語で訴えたが伝わらない。
こうなったらわがまま涼介を出してやる。
「おじさん、コンビニ行ってアイス買ってきて」
「いいよ。何がいい?」
「チョコ系」
「分かった」とおじさん誠也はすんなりと出かけた。
誠也だったら絶対に行かないと言い出して口論になる所だと涼介は思う。
涼介はテレビを観ながらのんびりアイスを待っていた。
しばらく経ってもおじさん誠也はなかなか帰ってこない。
もう、三十分も経つ。
すぐ近くにコンビニがあるから十分もかからないはずなのに。
心配になった涼介はダウンを羽織って探しに出た。
マンションの下には、道に迷っているおじさん誠也がいた。
「良かったー。帰り道が分からなくなっちゃって……」とおじさん誠也は目をウルウルさせている。
涼介は守ってあげたくなって手を取った。
「心配したよ」
「ごめん」
涼介はマンションのエレベーターにおじさん誠也を誘導した。
手は離さない。
おじさん誠也はコンビニの袋を開けて、
「アイス溶けちゃった」と悲しそうな顔をした。
涼介はその表情が愛おしくてそっと肩を抱きしめて、
「大丈夫。また固めればいいから」
とささやいた。
チーンと音が鳴ってドアが開いた。
エレベーターの外にはゴミを出そうとしている主婦が立っている。
涼介はサッと手を離した。
主婦は不審そうな目で二人を見つめながらすれ違いエレベーターに乗り込み降りていった。
涼介は再び手を取って部屋に戻った。
崇は根っからの優しさから、できるだけ誠也の役割を果たすのが務めだと思って涼介の相手をした。
涼介が誠也の髪の匂いを嗅ぐ。
相変わらず薄緑色の髪はサラサラでいい匂いがする。
いつもの誠也ならもっときつく涼介を抱きしめるのだが、中身はおじさんだ。
いつもと違ってぎこちなく、そしてソフトに抱きしめてくる。
涼介は不思議な感触を感じていた。
声も体も匂いも誠也なのに動きが違う。
瞳の奥の方を見つめると、そこには別人がいる。
挙動不審で自信がない。
だけど、純粋で素朴で真っ直ぐな瞳だ。
本当の誠也は自信に充ちていて、鋭い眼差しでもっとカッコイイ。
だけど涼介は、素朴な少年のようなおじさん誠也もいいかなと思った。
涼介はアグアグしたくてたまらなくなり、おじさん誠也の腰の辺りに抱きついた。
厳密に言うと誠也じゃないんだけど、肉体が誠也だから「ま、いっか」と思うと、少しだけ理性が吹っ飛んだ。
おじさん誠也の周りで足をバタつかせて
「にゃーにゃー」騒ぐ。
仰向けになってパジャマをわざとはだけてお腹を出す。
いつものニャンニャン涼介なのだがおじさん誠也にはお腹を撫でて欲しい気持ちが伝わらない。
「にゃー」
こんなにも撫でてほしそうにお腹を出しているのに撫でてくれない。
痒いところに手が届かない感覚だ。
涼介はもどかしくって両目をつむって仰向けで腰を少し浮かせて懇願ポーズを取った。
そっとお腹に手が伸びてくる。
ようやく痒いところに手が届いた
と思ったらおじさん誠也の手はパジャマを直してお腹を隠した。
「にゃー!」(そうじゃない!)
と猫語で訴えたが伝わらない。
こうなったらわがまま涼介を出してやる。
「おじさん、コンビニ行ってアイス買ってきて」
「いいよ。何がいい?」
「チョコ系」
「分かった」とおじさん誠也はすんなりと出かけた。
誠也だったら絶対に行かないと言い出して口論になる所だと涼介は思う。
涼介はテレビを観ながらのんびりアイスを待っていた。
しばらく経ってもおじさん誠也はなかなか帰ってこない。
もう、三十分も経つ。
すぐ近くにコンビニがあるから十分もかからないはずなのに。
心配になった涼介はダウンを羽織って探しに出た。
マンションの下には、道に迷っているおじさん誠也がいた。
「良かったー。帰り道が分からなくなっちゃって……」とおじさん誠也は目をウルウルさせている。
涼介は守ってあげたくなって手を取った。
「心配したよ」
「ごめん」
涼介はマンションのエレベーターにおじさん誠也を誘導した。
手は離さない。
おじさん誠也はコンビニの袋を開けて、
「アイス溶けちゃった」と悲しそうな顔をした。
涼介はその表情が愛おしくてそっと肩を抱きしめて、
「大丈夫。また固めればいいから」
とささやいた。
チーンと音が鳴ってドアが開いた。
エレベーターの外にはゴミを出そうとしている主婦が立っている。
涼介はサッと手を離した。
主婦は不審そうな目で二人を見つめながらすれ違いエレベーターに乗り込み降りていった。
涼介は再び手を取って部屋に戻った。
崇は根っからの優しさから、できるだけ誠也の役割を果たすのが務めだと思って涼介の相手をした。
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