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軽音楽部部室での殺人
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榊が足を止めた先は、軽音楽部の部室だった。
「軽音楽部の部室? ここで殺人が起きたの?」
「ええ。少し待っていてください」
と言い、榊は辺りを見回した。
「どうしたの?」
「ここにいると思うのですが……あっ、いました。隼人兄さん」
榊は殺害現場にいる一人の警官に呼びかけた。
「ん? せっちゃんじゃないか。それに式くんも」
「やはり、いましたか」
「どうも、隼人さん」
式は軽く挨拶をした。
この人物は園田隼人。榊の従兄弟で、かつて式が解決した殺人事件を担当していた。故に式のことも良く知っている。
「隼人兄さん、お願いがあるのですが、殺害現場を見せてくれないでしょうか」
「まあ、式くんは以前殺人事件を解決してもらったことがあるからね。現場を荒らさなければいいよ。とりあえず写真から見せよう」
そう言い終えた後、隼人は式たちにいくつかの写真を見せた。
「まず、これが被害者の遺体だ」
その写真には、頭部をドラムに押しつぶされた男子生徒の姿があった。
入り口のドアが開いていて、そのすぐ下にうつ伏せで倒れている。死体の周りには被害者の血液が飛び散っていた。
「名前は井田健二。学年は高校三年生で、軽音楽部に所属していてドラムを担当していたらしい」
「ドラムを? ということは、この人は自分の楽器で殺されたってことですか?」
「この写真のドラムは、彼のものではないけどね。このドラムは軽音楽部の部室にあるものらしい」
次に隼人は、二枚目の写真を式たちに見せた。
「これが、遺体周辺の写真だ。周りには、犯人が残したと思われるメッセージが書かれた紙が置いてあった」
「あっ、これですね。小さくてよく見えないな」
式は目を凝らして写真を確認するが、やはりよく見えない。
「その紙には、『思い出の場所で永遠に』と書かれていた」
「思い出の場所?」
「犯人の意図はよくわからないが、多分彼が軽音楽部に所属していたことに関係しているんだと思う」
隼人は、遺体周辺の写真を指差した。
「もうひとつ、遺体周辺には写真が残っていたんだ。ここに落ちているやつだね」
「この写真は何が写っていたんですか?」
「言葉で言うより、実物を見せた方が早いかな」
隼人は遺留品の中から写真を取り出し、式たちに見せた。
その写真には、高校の制服を着た七人の男女が写っていた。
「これって、この学校の生徒ですか?」
「ああ。調べた所、高校三年生の友達グループらしい。この写真には、被害者の井田健二も写っている。他の六人は、井田健二の友人たちで、高校に入ってからいつも一緒にいるほど仲が良いということが聞き込みで判明した」
「その写真が何故、この現場に?」
「それはまだわからない。これは僕の推測だけど、恐らく犯人はこのグループに何らかの恨みがあって、それで殺人を行ったのかもしれない」
「なるほど」
「後はこれだ」
隼人はいくつかの書物をとりだした。
種類はバラバラで、雑誌もあれば楽譜もあり、教科書やノートなども見られる。
「これは?」
「ドラムの下に挟まっていたんだ。まあさほど意味はないのかもしれないが、一応現場にあったからね」
その後も、式たちは警察が撮った写真を見続けた。しかし、これ以上は特に何も得るものはなかった。
「いくつか、聞いてもいいですか?」
これまで得た情報の中で、式は疑問に思った点を質問する。
「ああ。かまわないよ」
「まず、被害者である井田さんは何も持っていなかったんですか? 自分の鞄とか」
「現場にはそれらしきものはないな。犯人が処分してしまった可能性もあるけどね。彼が持っていたのはポケットに入っていた携帯電話と財布、後は家の鍵だけだ」
隼人が資料を見ながら答えた。
「携帯電話の通話記録は調べたんですか?」
「今調べている最中だ」
「次に、検死はもうしたんですか?」
「ああ。死亡時刻は昨夜十一時頃。死因は見ての通り、ドラムによる圧死だ」
「どう思いますか、式くん」
榊が尋ねた。式の推理を聞きたいように見える。
「この七人の高校生が写っている写真、そして現場に残されていたメッセージ……。これらを元に考えると、犯人は七人の高校生のうちの誰かの確率が高いね」
「その根拠は?」
「この『思い出の場所で永遠に』というメッセージだよ。このメッセージを犯人が書いたとするなら、犯人は井田さんが軽音楽部に思い入れがあることを知っている。つまり、この学校の生徒、教師か、あるいは彼の知り合いのどれかだ。次にこの写真だけど、これが犯人のものだとしたら、犯人はこの七人の中の誰かってことになるんだ。この七人しか写真に写っていないのに、他の友人や教師がこの写真を持っているのは不自然だろうから」
「しかし、この写真が犯人のものだとは限らないのでは? もしかしたら、被害者である井田さんのものかもしれませんよ。例えば、犯人は殺害した後、井田さんの鞄に入っていた写真を取り出し、現場に置く。その後に、意味ありげなメッセージを現場に残す。こうすることで、警察の目を自分から逸らせると考え、罪をこの写真の生徒たちになすりつけることができた。こうは考えられませんか?」
榊は自分の推理を式に聞かせた。その推理を聞いた式は、少し頭を悩ませた後、
「その可能性は低いと思うよ。井田さんの所持品は携帯と財布と鍵だけだった。男性がちょっと出かけるなら持っていくものはこれくらいで十分だろう。そう考えると鞄を持っていった可能性も低い。まあ、ここら辺については、井田さんの家族に聞けばわかるだろうしね。夜中に外出するなら、普通は家族に声をかけるはず。そのときに、鞄をもっていったかどうかはちらっと見たんじゃないかな。仮にその様子を見ていない、もしくは声をかけずに出て行ったとしても、井田さんの部屋の中を調べれば、鞄があるかないかは簡単にわかるはずだ。もし榊さんの推理どおりだとしたら、鞄が部屋から一つ減っているはずだ。流石に井田さんが持っている鞄は家族も把握しているだろうし、無くなっているならわかると思うよ」
と反論した。
式の意見を聞いた榊は、特に反論をすることもなく納得した。
「なるほどね。君の考えを参考にしてみるよ」
隼人も式の推理に感心している。
「園田警部補、少しよろしいでしょうか」
隼人は一人の警官に呼ばれた。
「どうした?」
「通話記録の調査結果が出ました。こちらです」
隼人は調査結果を受け取り、確認した。
「どうだったんですか?」
「……被害者が最後に通話したのが午後六時になっている。とすると、殺害現場には電話で呼び出された可能性は低いな」
「会話の内容を知ることはできないんですか?」
「送信者、もしくは受信者が通話を記録していたなら可能だが、それ以外だと無理だな」
「そうですか……」
では、犯人はどうやって被害者を殺害現場まで呼び出したのだろうか。
「ちなみに、受信者は誰になっているんですか?」
「名前は瀬尾高広とかかれているな。グループ分けされている場所からすると、どうやら被害者の友人のようだ。調査しておこう」
隼人は受け取った調査結果をまとめた後、
「さあ、君たちはもう教室に戻ったほうがいい。こんな状況じゃ、当分学校は休みになるだろうけどな」
「……わかりました。行きましょう、式くん」
「う、うん」
式と榊は隼人の言うとおり、おとなしく教室へ戻って行った。
「軽音楽部の部室? ここで殺人が起きたの?」
「ええ。少し待っていてください」
と言い、榊は辺りを見回した。
「どうしたの?」
「ここにいると思うのですが……あっ、いました。隼人兄さん」
榊は殺害現場にいる一人の警官に呼びかけた。
「ん? せっちゃんじゃないか。それに式くんも」
「やはり、いましたか」
「どうも、隼人さん」
式は軽く挨拶をした。
この人物は園田隼人。榊の従兄弟で、かつて式が解決した殺人事件を担当していた。故に式のことも良く知っている。
「隼人兄さん、お願いがあるのですが、殺害現場を見せてくれないでしょうか」
「まあ、式くんは以前殺人事件を解決してもらったことがあるからね。現場を荒らさなければいいよ。とりあえず写真から見せよう」
そう言い終えた後、隼人は式たちにいくつかの写真を見せた。
「まず、これが被害者の遺体だ」
その写真には、頭部をドラムに押しつぶされた男子生徒の姿があった。
入り口のドアが開いていて、そのすぐ下にうつ伏せで倒れている。死体の周りには被害者の血液が飛び散っていた。
「名前は井田健二。学年は高校三年生で、軽音楽部に所属していてドラムを担当していたらしい」
「ドラムを? ということは、この人は自分の楽器で殺されたってことですか?」
「この写真のドラムは、彼のものではないけどね。このドラムは軽音楽部の部室にあるものらしい」
次に隼人は、二枚目の写真を式たちに見せた。
「これが、遺体周辺の写真だ。周りには、犯人が残したと思われるメッセージが書かれた紙が置いてあった」
「あっ、これですね。小さくてよく見えないな」
式は目を凝らして写真を確認するが、やはりよく見えない。
「その紙には、『思い出の場所で永遠に』と書かれていた」
「思い出の場所?」
「犯人の意図はよくわからないが、多分彼が軽音楽部に所属していたことに関係しているんだと思う」
隼人は、遺体周辺の写真を指差した。
「もうひとつ、遺体周辺には写真が残っていたんだ。ここに落ちているやつだね」
「この写真は何が写っていたんですか?」
「言葉で言うより、実物を見せた方が早いかな」
隼人は遺留品の中から写真を取り出し、式たちに見せた。
その写真には、高校の制服を着た七人の男女が写っていた。
「これって、この学校の生徒ですか?」
「ああ。調べた所、高校三年生の友達グループらしい。この写真には、被害者の井田健二も写っている。他の六人は、井田健二の友人たちで、高校に入ってからいつも一緒にいるほど仲が良いということが聞き込みで判明した」
「その写真が何故、この現場に?」
「それはまだわからない。これは僕の推測だけど、恐らく犯人はこのグループに何らかの恨みがあって、それで殺人を行ったのかもしれない」
「なるほど」
「後はこれだ」
隼人はいくつかの書物をとりだした。
種類はバラバラで、雑誌もあれば楽譜もあり、教科書やノートなども見られる。
「これは?」
「ドラムの下に挟まっていたんだ。まあさほど意味はないのかもしれないが、一応現場にあったからね」
その後も、式たちは警察が撮った写真を見続けた。しかし、これ以上は特に何も得るものはなかった。
「いくつか、聞いてもいいですか?」
これまで得た情報の中で、式は疑問に思った点を質問する。
「ああ。かまわないよ」
「まず、被害者である井田さんは何も持っていなかったんですか? 自分の鞄とか」
「現場にはそれらしきものはないな。犯人が処分してしまった可能性もあるけどね。彼が持っていたのはポケットに入っていた携帯電話と財布、後は家の鍵だけだ」
隼人が資料を見ながら答えた。
「携帯電話の通話記録は調べたんですか?」
「今調べている最中だ」
「次に、検死はもうしたんですか?」
「ああ。死亡時刻は昨夜十一時頃。死因は見ての通り、ドラムによる圧死だ」
「どう思いますか、式くん」
榊が尋ねた。式の推理を聞きたいように見える。
「この七人の高校生が写っている写真、そして現場に残されていたメッセージ……。これらを元に考えると、犯人は七人の高校生のうちの誰かの確率が高いね」
「その根拠は?」
「この『思い出の場所で永遠に』というメッセージだよ。このメッセージを犯人が書いたとするなら、犯人は井田さんが軽音楽部に思い入れがあることを知っている。つまり、この学校の生徒、教師か、あるいは彼の知り合いのどれかだ。次にこの写真だけど、これが犯人のものだとしたら、犯人はこの七人の中の誰かってことになるんだ。この七人しか写真に写っていないのに、他の友人や教師がこの写真を持っているのは不自然だろうから」
「しかし、この写真が犯人のものだとは限らないのでは? もしかしたら、被害者である井田さんのものかもしれませんよ。例えば、犯人は殺害した後、井田さんの鞄に入っていた写真を取り出し、現場に置く。その後に、意味ありげなメッセージを現場に残す。こうすることで、警察の目を自分から逸らせると考え、罪をこの写真の生徒たちになすりつけることができた。こうは考えられませんか?」
榊は自分の推理を式に聞かせた。その推理を聞いた式は、少し頭を悩ませた後、
「その可能性は低いと思うよ。井田さんの所持品は携帯と財布と鍵だけだった。男性がちょっと出かけるなら持っていくものはこれくらいで十分だろう。そう考えると鞄を持っていった可能性も低い。まあ、ここら辺については、井田さんの家族に聞けばわかるだろうしね。夜中に外出するなら、普通は家族に声をかけるはず。そのときに、鞄をもっていったかどうかはちらっと見たんじゃないかな。仮にその様子を見ていない、もしくは声をかけずに出て行ったとしても、井田さんの部屋の中を調べれば、鞄があるかないかは簡単にわかるはずだ。もし榊さんの推理どおりだとしたら、鞄が部屋から一つ減っているはずだ。流石に井田さんが持っている鞄は家族も把握しているだろうし、無くなっているならわかると思うよ」
と反論した。
式の意見を聞いた榊は、特に反論をすることもなく納得した。
「なるほどね。君の考えを参考にしてみるよ」
隼人も式の推理に感心している。
「園田警部補、少しよろしいでしょうか」
隼人は一人の警官に呼ばれた。
「どうした?」
「通話記録の調査結果が出ました。こちらです」
隼人は調査結果を受け取り、確認した。
「どうだったんですか?」
「……被害者が最後に通話したのが午後六時になっている。とすると、殺害現場には電話で呼び出された可能性は低いな」
「会話の内容を知ることはできないんですか?」
「送信者、もしくは受信者が通話を記録していたなら可能だが、それ以外だと無理だな」
「そうですか……」
では、犯人はどうやって被害者を殺害現場まで呼び出したのだろうか。
「ちなみに、受信者は誰になっているんですか?」
「名前は瀬尾高広とかかれているな。グループ分けされている場所からすると、どうやら被害者の友人のようだ。調査しておこう」
隼人は受け取った調査結果をまとめた後、
「さあ、君たちはもう教室に戻ったほうがいい。こんな状況じゃ、当分学校は休みになるだろうけどな」
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